DIARY

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     高騰する医療費問題   12月17日 2012    

「医療費が高騰して国の予算を圧迫している。」とか、
「高齢者が増えて、その医療費の負担を
若い人達が支えていく事には問題がある。」
という記事を見るたびに胸が痛みます。
私なりに、患者さんの負担が増えないように、
そして医療費が高騰しないように、
余計な検査や治療は極力ひかえていますが、
それでも、どうしてもしないといけない検査や治療があります。
実は私たち医者にとって、一番ストレスな事は、
自分が納得できて、かつ患者さんに満足してもらえる検査や治療が
保険制度という縛りの中で限られてしまって、十分に出来ないことです。
それでも制度と限りのある財政とその思いとのはざまの中で、
できる限りのことをしながら診療をしています。
 しかし、私たちが、いくらそうして努力しても、
高齢者の数は増えていきますし、
新しい検査法や治療手段が開発されて
(これら新しい検査法や治療手段は高額になることが多いです。)、
医療費はさらに高騰していくことも肌身に感じて、心を痛めています。

 以前施行された後期高齢者医療保険制度は、
不評のまま終わってしまいました。
しかし、この制度の根幹にある考え方は、
このまま否定されて捨て去られてしまってはもったいないと感じています。
すなわち、
「高齢者の医療保険費は、この先どうしても高額になってしまうが、
その負担をそのまま一律に若い世代に押しつけてしまっては、
若い世代の負担や不平等感が大きくなってしまうから、
何とかしないといけない。」ということです。
このことは、
「高齢者の増大する医療費を誰がどうやって負担すればいいか」
という社会全体で考えてゆくべき課題です。
当然のことながら、
高齢者世代も自分たちの医療費をできる限り自分たちで負担していくべきです。
しかし、同時に高齢者は年金生活者が多く、
高齢者に過大な負担をしてもらうことにも問題があります。
 そこで、思いついたことがあります。
私は経済学者でもなく、この方法がいいのかどうか、よくわかりません。

 まず、 高齢者の医療費の一部負担金(診察したときに払うお金)は、
一般と同じ3割負担にしてもらいます。
そして、収入の少ない高齢者に対しては、
その一部負担金の一部(あるいはすべて)を
役所で金券に換えることが出来るようにするのです。
(収入の多い高齢者の方々は、そのまま3割負担を受け入れていただきます。)  
金券は、日本中で使えるが金券ショップで現金には交換できないようにします。
同時におつりももらえない様に決めておきます。
そうして金券を受け取った業者は、
後日正規のルートで国から現金に換えてもらえるシステムです。
こうすることで、高齢者も負担の割合は同じになりますし、
同時に市場にお金が回ると思うのです。
生活保護の人達にも、現金給付ではなく、
一部は金券で給付することも考えてもいいかもしれません。
さらに、介護保険にも適応できるのではないでしょうか?

 それから、風邪薬や湿布は、
本来病気の治癒に必要なモノではありません。
このような薬は保険給付の対象から外して、
前述のように先に現金で支払って、
後日役所から金券で補うようにしてもいいと思います。
ただ、ビタミン剤などは、
病態によっては、治療に必要な場合もありますし、
必要も無いのに処方されるものもあり、
線引きが難しいと思いますが、検討する価値はあると思います。
 
 こんな考えは荒唐無稽なものなんでしょうか?







     小選挙区制度   12月14日 2012 

     選挙を前に誰に投票しようかと、
つらつら考えてふと思いがいたった。
そもそも、この立候補している人達にまったく面識がないし、
どんな人なのか僕はまったく知らない。
選挙公報に書かれていることなんか上っ面な事だけである。
こんな事で、小選挙区ではただ一人だけ当選してしまって、
他の人に投票した票は「死に票」になってしまう。
投票率が60%としても、
さらにその30-50%の得票で当選してしまう。
多めに見積もってもたかだか人口の3割位の人の信任で、
残りの民意は消えてしまうことになる。
しかも、多くの人は、結局は人物ではなくて
政党名で投票している。
だけども、その選挙区に
投票したいと思う政党から立候補者が立っているとは限らないし、
マイナーな政党では、
多くの小選挙区にそれぞれ立候補者を立てることが出来る訳ではない。
さらに落選のリスクがあるから、
いっそう立候補には慎重になってしまうだろうと想像する。
国民側から見たコスト面からも、
立候補者それぞれに、
多額の選挙資金を税金から拠出して助成するわけだから
多くの税金が無駄に使われてしまう。
どう考えてもおかしな制度だと思う。
昔、自民党が数の力で自分たちに有利な制度を作った
弊害のある選挙制度なのではなかろうか。
今は、中央から地方への時代である。
地方のことは地方で決めるようになっていくのである。
昔はその地方に有利なように、
地方交付税交付金や補助金をたくさん獲得して、
道路を作ったり公共事業を誘致してくれる議員を選ぶということが
議員を選ぶ基準だったのだろう。
もうそんな時代は卒業しないといけない。
国の政を決めるのが国会議員であって、
自分の地盤に公共事業を誘致することに熱心な議員は
国会議員になる必要は無い。
それは、地方議員がすればいいことである。
国の政は、ほとんどは政党の方針で決まるのだから、
もう小選挙区制はやめて、(中選挙区制も無しで)
比例代表制に一本化すればいい。
その中で、個人記名と政党記名の2本立てをすればいいと思う。
そうすれば一票の格差もなくなる。



     原発とTPP     12月10日 2012

     基本的には、政治に関する発言をひかえていますが、
選挙前の知識として知っておいてもらいたいことがあって、
この日記を更新することにしました。

原発問題
朝日新聞の今年3月8日の記事(以下に転記)
を気に留めて覚えておられる人もいると思いますが、
目立たない記事だったし、マスコミも問題視しないままでした。
忘れ去られてしまいそうですから改めて転記します。

 「東京電力福島第一原発の事故で日米両政府が最悪の事態の引き金になると心配
 した4号機の使用済み核燃料の過熱・崩壊は、震災直前の工事の不手際と、意
 図しない仕切り壁のずれという二つの偶然もあって救われていたことが分かった。
 工事は、原子炉真上の原子炉ウェルと呼ばれる部分と、放射能をおびた機器を
 水中に仮置きするDSピットに計1440立方メートルの水を張り、進められた。
 ふだんは水がない部分だ。
 シュラウドを切断する工具を炉内に入れようとしたところ、工具を炉内に導く
 補助器具の寸法違いが判明。この器具の改造で工事が遅れ、震災のあった3月
 11日時点で水を張ったままにしていた。
 4号機の使用済み核燃料プールは津波で電源が失われ、冷やせない事態に陥った。
 プールの水は燃料の崩壊熱で蒸発していた。
 水が減って核燃料が露出し過熱すると、大量の放射線と放射性物質を放出。
 人は近づけなくなり、福島第一原発だけでなく、福島第二など近くの原発も
 次々と放棄。首都圏の住民も避難対象となる最悪の事態につながると恐れられ
 ていた。
 しかし、実際には、燃料プールと隣の原子炉ウェルとの仕切り壁がずれて隙間
 ができ、ウェル側からプールに約1千トンの水が流れ込んだとみられることが
 後に分かった。さらに、3月20日からは外部からの放水でプールに水が入り、
 燃料はほぼ無事だった。」  

多くの人が読み飛ばしたり忘れ去った事実ですが、
3つの偶然が重なって起こらなかったら
本当におそろしい事態になるところだったのです。
奇跡のような偶然が起こらなければ、
関東以北には人が住めなくなっていたはずだったのです。

しかし、今回は、奇跡が起きました。
下請け工事をしていた作業員が器具を取り違え、
工事が延滞してしまったために、
本来、無いはずだった膨大な量の水を抜けないままに放置してあったからです。
この水は、5階のシュラウドとDSピットにあり、
その水が核燃料プールに流れ込んで、
燃料棒が空気露出するまでの時間を稼いでくれた訳です。

4号炉が大工事による運転停止をしていて、
工事ミスがあり、
地震でウェルとプールの仕切り版がずれた
という3つの奇跡的偶然が重なって、
今、関東以北で人が生活していられる訳です。
この工事のミスをした作業員に
感謝状を贈って表彰してあげる位のことがあってもいいです。
この人のミスで、
「日本の国土の半分が守られた」
と言っても過言ではないのですから・・・。

僕は、節電をして少々不自由な生活をしても、
電気代が高くなっても、経済が少々悪くなっても
人類がコントロール出来ない
(核廃棄物などを廃棄する最終的な処分方法さえない)原発は
速やかに廃止すべきだと思っています。
しかし、原発を廃止するには、
たくさんのしがらみを断ち切る必要があり、
生半可なことでは出来ないということも、判ってきました。
というのも、
今まで、いくつかの政党の原発廃止の方針が
徐々に弱くなってきたことを
何度か見てきたからです。
本気で、ぶれないで原発廃止を行うことが出来る
しがらみを断ち切ることが出来る政党はどこなんでしょう?

TPP 
各政党が参加するかしないか論じ合っていますが、
まったく不毛な意見を交わしていると思います。
論点は2つです。
1.今TPPに参加しないで出遅れてしまったら、
  将来参加しないといけなくなったときに、
  不利な条件を受け入れないといけないかもしれない。
2.いったんTPPに参加したら、思うように抜けられないかも知れないし
  例外条項を思うように作れない可能性があるから、
  うかつに参加したら、守るべきものが守れなくなる。

どちらの意見も、最終的な目標は、
国内の農業などは守りたいし
輸出産業は伸ばしたいということです。
そして農業などが守れるかどうかということが、
判らないから、参加か不参加かを争っているのです。
これを国民に問うのなら、
実際に今までの他国でのTPP交渉において
どのくらい例外条項が認められているのかを
まず示すべきです。
参加するかどうかは、その事実に基づいて判断すべきで
今なされている議論は、
見当外れとしか言いようが無いと思います。        
それとも、その事実を出すことを避けるために、
わざと見当外れの議論をしているのでしょうか?
ちなみに、医療に関しては、国民皆保険は維持すべきですが、
混合診療も認めるべき時代が来ていると思っています。
TPP交渉に参加することで混合診療が解禁になるかどうかは、
僕にはわかりませんが・・・
そして株式会社の参入解禁や混合診療解禁などになったら、
僕の所のようなちっぽけな診療所は
ぶっ飛んでしまうかも知れませんが・・・。
今の保険制度では、
医者にとっても患者にとっても
十分に満足のいく検査や治療が
出来なくなってきているのも事実ですから・・・。


     
甘いものはやっぱり良くない!(でもつい手が出てしまう・・・)   12月1日 2012

スーパーのレジの手前には、パンとかお菓子売り場があります。
多くの人は、買い物のついでに、
何気なくパンやお菓子をかごにいれてしまいます。
そして、日常的にこれらのものを食べています。
大丈夫なんでしょうか?
これがどうやら、大丈夫ではなさそうです。
人はものを食べて満足すると、中枢からドーパミンが分泌されます。
おいしいものを食べると「幸福感」が出ますよね♪
あれがそうです。
ドーパミンが分泌されると、さらに食欲が増強します。
食事中毒になると、
このドーパミンの受容体が過剰に刺激された状態になって
食欲が止まらなくなります。
これはコカイン中毒でも同じ状態になります。

皆さん、甘いものを食べると、
毎日甘いものが欲しくなるのですが、大丈夫ですか?
甘いものは中毒になるのです。
多くの場合、
「自分が甘いものの中毒になっている」
と気がついてないだけに、問題があります。

さてここで甘いものですが、
現代社会では甘いものがあふれてますね。
例えば清涼飲料水一つとっても
そこに入っている甘みの成分で分類したら
1.砂糖の入ったジュース(缶コーヒーなど)
2.果物のジュース
3.果物や他の甘み物質が混じったジュース
4.カロリーオフと称される人工甘味料で甘さを作ったジュース
  例:カロリーオフと称されるコーラなどの甘い飲み物
しかも,その中には
「脂肪の吸収を抑える」と言って、
特保まで獲得したものがあります。
どうも、うさんくさいですね。
確かにある成分は脂肪の吸収を抑えるのでしょうが、
だからといって、
「他の成分では体に害があるもの」を特保に指定する厚労省や、
いくら営利目的の企業だからと言っても、
平気でそれを申請する企業の体質は、
その企業の本質的なアイデンティティーを疑ってしまいます。

ここで、この先の話をより深く理解してほしいので、
天然の甘味料について説明しておきます。
まず知っておいて欲しいのは、
糖の最小単位であるブドウ糖(グルコース)と
果糖(フルクトース)についてです。

ブドウ糖は、脳の唯一のエネルギー源であり、
また筋肉活動など全身の細胞を活性化するエネルギー源です。
ブドウ糖は、ごはんやパン、麺類、イモ類などに多く含まれています。
果糖は、果物や蜂蜜に含まれていて、甘みが強いです。
さて、ここで知って置いて欲しいことがあります。
ブドウ糖と果糖は、代謝経路が全く違います。
ブドウ糖は、小腸から吸収されて血液中に入り、
脳細胞以外ではインシュリンの助けを借りて、
エネルギーとして利用されます。
(脳細胞ではインシュリンの作用無しで糖はエネルギーとして利用されます。)
ここで、余ったブドウ糖が中性脂肪となって貯蓄されます。
ところが、果糖は100%肝臓で代謝され、肝臓で中性脂肪などに転換され、
脂肪として貯蓄されます。
以上が天然甘味料の話です。

では各論に入ります。

まず、砂糖入りジュースです。
これらの砂糖にはグラニュー糖が使われることが多いですが、
グラニュー糖は、ブドウ糖と果糖が結合した糖(ショ糖)で、
サトウキビやサトウダイコンから抽出結晶化されます。
グラニュー糖は、糖類の中で一番カロリーが高く、21gあたり80kcalです。
吸収も良く、血糖値の上昇も急激に起こります。
糖尿病になりやすく、糖尿病の人はコントロールが悪化しやすいです。

次は、果糖入りジュースです。
ジュースと表示するには、その果物が100%使われないといけません。
考えてみてください。
ミカンジュースをコップ1パイ作るのに、
どのくらいのミカンをつぶすのでしょうか?
そこそこの量のミカンが入りますよね。
この大量のみかんをジュースにして果糖ばかり摂取しているわけです。
しかも、果物に本来含まれている果肉や繊維は捨てて摂取するのです。

果糖とその他の甘味料が入ったジュースはどうでしょう?
例えば、コップ一杯のオレンジ味の飲料は、
濃縮還元で84 kcalで、コーラに匹敵します。
さらにオレンジ味の飲料に含まれる糖の種類は
ブドウ糖:果糖:ショ糖=1:2:2 でカロリーも高いし血糖も上昇しやすいです。

では、カロリーのない人工甘味料なら大丈夫なんでしょうか?
最近の研究で、
カロリーがなくても、
アスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料が、
肥満や糖尿病の原因になるということが判ってきました。
アスパルテームはダイエットシュガーの代表です。
これらカロリーのない甘いものを摂取すると、
血糖上昇はないにもかかわらず、脳は甘さを感じて、
インシュリンが分泌されます。
インシュリンが分泌されると血糖値が下がるので、
空腹感が強くなり食意欲が増進されます。
そして、肥満や糖尿病引き起こすことが判ってきました。

コーラやスポーツ飲料などの一般的な甘い飲み物はどうでしょう?
コーラなどの炭酸飲料水やスポーツドリンクには異性化糖が含まれています。
異性化糖って聞き慣れないことばですね。
ところが、
一般的な甘い飲料水の材料表示には、
ほとんどこの異性化糖が記載されてます。
何となく判ったような判らないような単語なので、
我々はスルーしていただけなのです。

話は少し飛びますが、
高フルクトース・コーンシロップ(high-fructose corn syrup;HFCS)
というものをご存じですか?
HFCSは、トウモロコシなどのでん粉を酵素処理し生産されます。
この技術は日本で開発されましたが、安く大量生産ができるため、
1970年代にアメリカに導入され、アメリカでの食文化を大きく変化させました。
そのHFCSが、最近の研究で、
肥満、高血圧や糖尿病などの原因とわかってきました。
日本ではこのHFCSのことを
異性化糖:(以下の2種類の表記があります。)
ブドウ糖果糖液糖(果糖含有率50%未満)
あるいは、
果糖ブドウ糖液糖(果糖含有率50-90%)と表記しています。
そうです、結びつきましたね。
HFCSが甘い飲み物には入っているのです。

このHFCSは、現在砂糖類の約1/4の需要になっています。
果糖を果物や野菜から摂取(リンゴ一個果糖約16g程度)しても、
食物繊維、ビタミンやミネラルなど重要な栄養素も含んでいますし、
全体のボリュームが多くて一度に大量の果糖をとることはありません。
ですから、果糖のネガティブな効果は緩和されます。
しかし、これら清涼飲料水には異性化糖が12%程度、
すなわち500ML中60gも含まれており、
一気に大量の果糖を摂取することになります。

やっぱり、甘い飲み物は、日常的に摂取してはいけないように思います。
今の若い人達(我々オヤジ達も)は、
簡単に甘い飲み物が手には入って、
日常的に甘い飲み物を飲む機会が増えたように思います。
気をつけないと、一億総肥満・一億総糖尿病の日本になってしまいそうです。
海外では、甘い飲み物に税金をかけて規制する動きがあるのも
頷ける話ですが、
一見、飲料水に無理やり税金をかけて、
税収を増やしたいかのような政策にも思えますが
どうしてそのようなことをする必要があるのかを
まずきちんと説明してもらえたら納得の出来る話だと思います。


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