DIARY

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    2月29日 2008
    
20分の昼寝はいかが?
    たしかスペイン語だったっけか?
昼寝のことをシエスタといって、
この習慣は元々ポルトガルから始まって、
スペインとスペイン語圏の
南米やフィリピンに伝わったとされる。

    僕も午前の診療が終わって、
夕診が始めるまで時間があれば昼寝をする。
もともと、体が弱くて、
朝から晩まで働き続けられないからだけど・・・。

(誰だ!嘘つきと言ったのは?)

この昼寝の習慣は、暖かい地方では結構一般的に見られる。

   最近、昼寝の健康に対する具体的な利点が証明され始めている。
ギリシャとアメリカの研究者の共同研究では、
23,681人という多数の人を対象として
6年以上に及ぶ観察が行われた。
時々昼寝をする人は、しない人に比べて
心臓の冠動脈疾患による死亡が12%少なく、
毎日昼寝をしている人では、
その差が37%にも達する。と報告された。

(出来れば、
 心臓だけでなく脳梗塞に関しても調べて欲しいのだが、
 欧米は、心筋梗塞がそのターゲットになることが多い。)

    その機序について、
イギリスとイランの共同研究では
昼寝が血圧を下げ、
かつ血流を促進するという結果が報告されている。

この研究の対象となったのは
35歳前後の健康な男女9人で、
前の晩の睡眠時間を4時間に制限した上で、
午後の2時から1時間昼寝をとらせ、
その睡眠の状態を睡眠ポリグラフ計で調べている。
また、
睡眠中の皮下の血流量を測定して、
その結果、
明かりを消して眠り始めた9.7±13.8分間の間に
収縮期血圧が4.7±4.5mmHg、
拡張期血圧が3.6±2.8mmHg低下した。
一方、
皮下の血流量は9.5±4.3%上昇したと報告されている。
なお、
それ以上の睡眠をとっても
血圧や皮下血流量の変化はわずかで有意差はなく、
また、
実際に寝入ることが重要で、
目を覚まして横になっている状態を1時間続けても
血圧等に変動はなかったという結果であった。

   
    つまり、昼間に20分前後ぐっすり眠ると、
血圧が下がって、血液の循環がよくなる。
ということである。

そういえば、
地中海沿岸の人が健康で長生きなのは、
毎日、野菜や果物や魚介類を摂取して、
オリーブオイルを豊富に使った
イタメシを食べているだけでなく、
シエスタの習慣もその理由の一つなのかもしれない。






     2月25日 2008
     
救急車を呼んで命が助かることが本当にいいこと?
最近、特に、この大阪の南では、
救急患者の受け入れ先が無くて、
なにかと新聞に報道される。

少し前も、89歳の女性の搬送先が決まらないで
数時間後に亡くなられたという報道があった。

   僕は、この報道を新聞で読んで
「受け入れ先がすぐに見つかって
 搬送されて体中に管を突っ込まれて、長生きするよりも、
 むしろこの結末が、この方にとっては幸せだったのではないか?」
と思っている。
おそらく、この場合
かなり高い確率で僕のこの考えは正しいと思っている。

  「むやみに救急車を呼ぶな!」
と言うつもりはない。
しかし、
   呼ぶことでかえって不幸な結末になることが
かなり多くの場合あることも、知ってもらいたい。

   医者は、
来た患者を、正当な理由がない限り拒むことが出来ない。
「一時的には助かるかもしれないけど、
 助けても、寝たきりで本人も家族も大変・・・。」
と思っても、口には出せない。

   患者側にもあらかじめ覚悟がいるのである。
しかし、
どのくらいなら、どんな結果になるのかという判断は
医者でも難しいし、
さらに、個人の価値観は様々であるから
そこには、誰も立ち入らないまま
今の救急医療がなされている。

   少し前も、
80才台後半のおじいさんが、
朝、家を出るときに胸が痛くなって
救急病院に運ばれた。
そして、一時は心臓が止まったが、
名医がいて、無事に蘇生して、
詰まっていた冠動脈も再開通して
元気になって、その医者に感謝しながら通院している。
というドキュメント番組をやっていた。

   確かに名医なんだろうけど、
その患者が僕なら、そのまま死なして欲しかったす。
というか、救急車を呼ばないっす。

これが価値観の違いなのだと思う。
これだけは、一概にはかることが出来ない。

今の医学界は、欧米の医学が声高に叫ばれるので、
「心筋梗塞」になって死なないための医療
が幅をきかせている。

しかし、
欧米人ほど日本人は心筋梗塞は多くない。
どちらかというと脳梗塞の方が多いし、
脳梗塞は、すぐには死なないで、
数年してから
他の肺炎や心不全で死ぬから統計上も表に出てこない。

だが、実際に多くのお年寄りと話をしてみると、
皆さんは、
「ピンピン、コロ!」を願っておられる。
一番避けたいのが、脳梗塞である。

   つまり、
この方々にとっては、
「心筋梗塞」はウェルカム!
なのである。

   しかし、
現実の医療は、
「心筋梗塞」にならないようにする治療が
一番幅をきかせている。
何故だろうか?

あっちでもこっちでも、
名を売って偉くなりたい先生達が
いろんな病気に対して「ガイドライン」を作って、
まるで法律のように遵守させようとしている。

そして、
循環器の(心筋梗塞を起こさない)ガイドラインがどれだけ多いか!
これから外れた医療を行って、
患者に訴えられると、きわめて不利になるが
遵守したからといって、守られるモノではない。

「やたらに親切ごかしに作るな!」と言いたい。
(言ってるか。)
あほらしくってやってられない。

まぁ、とにかく
「自分の死に方」をよく考えてから
救急車を呼んだ方がいい。

本当は、
救急に携わる医療スタッフと
救急を受診した患者およびその家族から
十分な聞き取り調査を行って、
「本当に必要な救急」を探って
それを公表する必要があるのだが、
今のところ、誰も、そんな議論はしていない。
誰かやらないかなぁ!

「病気を診るのではなく、患者を診るのだ。」
って
みんな一応に教育は受けるんだけど・・・。





     2月22日 2008
     
正常がいいの?
     またしても、ずいぶん空いてしまった。
3月にエクステラ、4月に石垣のトライアスロンをひかえて、
運動の時間が増えてしまった・・・というのは言い訳で、
何となくモチベーションが下がっているせいだと思う。
昨日、BCGの接種に行ったときに、
看護師さんに「ホームページ見てますよ。」
と声をかけてもらって、
嬉しくなって、また「がんばって日記を書かないと!」
なんて思っている。

     さて、本題であるが、
今月の6日に、
米国国立心肺血液研究所(NHLBI)は、
2型糖尿病患者を対象にした大規模臨床試験ACCORDにおいて、
血糖値管理の目標値を
ヘモグロビンA1c値6.0%未満に設定したグループで
有意な死亡率上昇が見られたため、
厳格な血糖値管理を中止したと発表した。

ACCORD試験の目的は、
心血管イベントリスクが特に高い2型糖尿病患者において、
厳格な血糖値管理戦略が、
心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中または心血管死)減少を
もたらすかどうか調べることにあった。

ACCORD試験の内容は
平均10年の2型糖尿病歴があり、
心血管疾患の危険因子(高血圧、高コレステロール値、肥満、喫煙など)
を2つ以上持つ、
または、
心疾患の既往がある40〜82歳(平均年齢62歳)の2型糖尿病患者
を登録した。
A1c値の平均は8.2%だった。

患者は標準治療(5123人)と厳格管理(5128人)に
無作為に割り付けられた。
それぞれ目標とするA1c値は、
厳格管理群が6%未満、
標準治療群は7.0〜7.9%に設定された。

 主要アウトカム評価指標は、
非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死亡
に焦点が当てられていた。

 糖尿病を放置すると、
網膜症が発生して目が見えなくなったり、
腎症が発生して、透析をしなければいけなくなったりする。
治療をすることで糖尿病の自然経過に介入して、
そのようなイベントの発生が減少することは
言わずもがなのことであった。
それならば、
厳格な介入をして、
糖尿病がない人と同等の検査値が得られたならば
糖尿病に伴って発生する心筋梗塞や脳梗塞も
健常人のレベルまで減るのではないか?
というもくろみで行われた試験であるが、
残念ながら、目標の年数まで試験を行うことなく
途中で介入レベルを変更することを
余儀なくさせられてしまったという次第である。
その理由は、
厳格な介入をしたグループで
有意な死亡率上昇が見られたためである。
(このまま続けたら、人道上も許されないことである。)

 厳格管理が中止された時点の追跡期間の平均は約4年だった。
厳格管理群の全死因死亡は257人(1000人当たり年間14人)、
標準治療群は203人(1000人当たり年間11人)。
差は、被験者1000人当たり年間3人だった。

 これまでに行われた他の臨床試験では、
このレベルの心血管ハイリスク患者の死亡率は
今回よりさらに高かった。
また、
一般に特にハイリスクの患者の死亡リスクは
1000人当たり年間50人といわれる。
つまり、
ほっとくよりは遙かにいい成績ではあったわけではある。

 厳格管理群のA1cレベルの平均値は、
約半数が6.4%未満を達成していた。
一方、標準治療群では、約半数が7.5%未満になっていた。

  このニュースは、
世界中の糖尿病専門医に大きな衝撃を与え、
米国糖尿病協会(ADA)や
同様の大規模臨床試験を行っている研究グループからの
緊急声明も相次いでいる。

  考えてみたら、確かにHbA1cが7前後の人は
それなりに元気で、
重大な合併症もなく長く生きている人が多い。
それを無理矢理に、
さらに厳格な食事制限や強い薬で正常にすることには
無理があったのかもしれない。

  数年前から、
僕は年配の人には厳しい管理を求めるのはやめている。
70歳以上で、HbA1cが6台の人には、
「糖尿病やその合併症で死ぬことは、
 まず無いから心配しないでええですよ。」
とさえ言っている。

  やっぱりそうだったかと、いう思いである。
ことは糖尿病だけではない。
高脂血症も高血圧症も「それなり」でいいのである。
人には持って生まれた体質があるのだ。

少し太り気味の人を「メタボ」と言って
無理矢理に病人に仕立ててやせるように教育したり、
高脂血症の人に薬を飲ませたりして
果たして、どれだけ幸せな人が増えるのだろうか?
(医者が儲かって、薬屋が儲かるだけである。)

・・・・、あっ、僕にとっては、いいのか????

少しくらいは正常から外れていても
(あくまで、「すこしくらい」)
基本的なライフスタイルだけ押さえておけば、
それでいいのではないかと思う。
基本的なライフスタイルとは、
1.おなかいっぱい食べない。
2.適当な運動を日常的にする。
3.塩分の摂取は出来れば4g/日以下にする。
4.肉食は週の半分以下にする。
 (特に、年配者は「あまり食べない」くらいでちょうどいい)
5.野菜や果物を多く摂取して、蛋白は魚や大豆などで補う。

といったことだと思う。
参考にダッシュダイエットを紹介しておく。
1980年代に看護師さんの間で行われたダイエットで、
(当然のことながら、男性のデーターではないが・・・。)
最近この結果が報告されて、
このダイエットを実践した場合としない場合には、
有意に差が出ていた。

■ 日本の減塩
塩分の摂取を少なくすれば、必ず血圧は下がります。
最近、食塩感受性のために減塩は不要とする説や、
塩分を増やしても血圧は上昇しなかった
という実験までがテレビで紹介されたりしますが、
けっしてそんなことはありません。
十分に食塩を減らせば(4g/日以下)血圧は必ず下がります。
下がりやすい人と下がりにくい人がいるだけです。

塩分を減らせば血圧が下がるのに、
それをしないで
わけのわからん「血液さらさら効果」などといったお題目に惑わされて
玉ねぎ、にんにく、納豆、昆布、黒豆などを食べて
安易なことをして無理矢理に安心を得ているだけです。

■減塩のコツは簡単です。
スーパーで買い物をするときに、
塩分が入った食品を一切買わなければ良いのです。
ハム、ソーセージ、練り物(ちくわ・かまぼこ・さつまあげなど)、
缶詰、漬けもの、レトルト食品、調理済み食品、スナック菓子など
あらゆる加工食品に多量の食塩が使われています。
これらを止めると、確実に塩分の摂取量が下がります。

■なぜ果物が良いか
里芋、納豆、たけのこ、かぼちゃ、ほうれん草、
これらはカリウムの豊富な食品で、
果物の2〜3倍も多く含まれています。
日本の食材はカリウムが多いので
わざわざ果物を食べなくても良いのではないか
と思われるかもしれませんが、それでも果物の方が良いのです。
それは、
野菜の調理には塩分が必要ですが、果物は必要でないからです。
果物はそれ自体で味が完結していて満足感があり、
減塩が苦になりません。
DASHダイエットのように
デザートや間食にフルーツを食べるのが減塩のコツなのです。
目標が4gなら簡単に実現できます。

■減塩味噌や減塩醤油に走らないで!
里芋、そら豆、枝豆、さつま芋、トマトなどは
味付けしなくても美味しく食べられ、
カリウムは果物よりも豊富です。
安くてカロリーが低いのでダイエットにも好都合です。
他にも味付けなしで食べられる食品があるかもしれません。
減塩味噌、減塩しょうゆで僅かな節約をするよりも、
調味料を使わないで食べられる食品を探した方が効果的です。
減塩を薄味にすることや、
濃い味と薄味を組み合わせることと捉えると苦しくなります。
そうではなく、
調味料を使わないで食べられる料理のレパートリーを広げること
と捉えると楽になります。
塩分摂取量をかぎりなくゼロに近づけると、
味覚が驚くほど鋭くなり、
薄い味付けの中に無限の広がりを感じて感動することになります。
濃い味が好みでなくなり、
それまで好物だった和菓子でさえ塩辛く感じられるようになります。
海の天然塩にはカリウムが含まれているので良いとか、
具たくさんの味噌汁は
野菜のカリウムが中和してくれるので高血圧の人に良い
などの説明を聞くことがありますが、
世の中そんなに甘くありません。(からいはなしですが・・・)
いったん体に入ったモノが、
何かを摂取することでチャラになるなんて、
今のところは無いと思ってください。
血圧が下がるまでは、天然塩も具だくさんの味噌汁も止めてください。
その上で、さらに果物やカリウムの多い野菜を食べます。
味噌や漬物など発酵食品の代わりにヨーグルトを食べればいいです。
塩分を使わないで食べられる美味しい食品を自分で見つけ、
レパートリーを増やしていくと血圧が確実に下がります。
自分の努力で毎日少しずつ血圧が下がるのを見るのは嬉しいものです。

■カリウム比
カリウムは筋肉や内臓の細胞内に存在し、
ナトリウムは血液やリンパ液中に存在します。
カリウムとナトリウムの割合は常に一定になるように調節されています。
もしも、
血液中のナトリウム濃度が高くなると、
ちょうど野菜に塩をかけたときのように
筋肉や内臓壁の細胞から水分が沁みだして血管内に入ってくるため、
血管内の圧力が高まります。
血圧を下げるにはナトリウム摂取を少なくするだけでなく、
カリウムの摂取を多くすることが必要です。

注:食塩の換算
アメリカやヨーロッパからの輸入食品には
ナトリウムの量が必ず記載されています。
ナトリウムを食塩に換算するには次式を用います。
食塩 =  ナトリウム(mg)x  2.54 / 1000 (g)

例:ナトリウム600mgなら塩に換算すると 600x2.54/1000=1.52g です。
ナトリウム = 食塩(g) / 2.54  x 1000 (mg)

■減塩のコツ
・加工食品、調理済み食品をなるべく食べない。
・ドレッシングはノンオイルを使う。
・盛り付けを少なくする。
・低脂肪と書かれていてもラベルで脂肪の量を確認する。
 低脂肪製品にも脂肪が多いものがあるので要注意。
・味付けヨーグルト、アイスクリーム、ソフトドリンク、フルーツドリンクには
 砂糖が入っているので止める。
・ヨーグルトに果物をきざんで入れる。
・おやつはフルーツ、塩を使っていない野菜スティック。
・野菜は新鮮なもの、塩が使用されていないものを買う。
・肉、魚の缶詰を止める。生のものを買う。
・ハム、ベーコン、ピクルス、キムチは買わない。
・減塩しょうゆや減塩味噌を買わない。
・ハーブ、スパイス、レモンを使って塩を半分にする。
・パスタ、オートミールは塩なしで茹でる。焼きめし、パエリアは塩を使うのでやめる。
・コンビニでは塩分の少ない食品を選ぶ。
・レトルト食品、冷凍ピザ、缶詰スープ、サラダドレッシングを買わない。
・ツナの缶は水で洗って食べる。
・水を飲む。

■血圧を下げすぎない
血圧を下げすぎると、血行が悪くなるためカラダが血圧を上げようとします。
そうすると今度は平常時の血圧が上がるので、
血圧は極端に下げないようにしてください。
降圧剤などを飲んでいて、
立ちくらみなどがあるときは
そのときの血圧を測定して主治医に伝えた方がいいです。
アルコールを飲むと血圧が極端に下がるので、
晩酌をする人はしばらく止めましょう。




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