DIARY

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    12月29日 2004
    
おかげさまで
    おかげさまで、今年も一年、無事に過ごすことが出来ました。
皆様、ありがとうございます。

    毎年行われる診療報酬制度は、
我々医師にも、
診療を受ける患者にも、
決していい方向には改定されないで、
診療報酬は厳しく、
一部負担金(医療を受けたときに支払うお金)の負担率は上昇し、
厳しい年になりました。
その上、「風邪では病院に行かなくてもいい。」とか、
「インフルエンザのワクチンはしない方がいい。」とか、
「薬は飲まない方がいい。」とか、言っているものだから、
医院の売り上げは、どんどん下がっていくばかりで、
最近は、将来に不安を覚えることがあります。

     せめて、
「良質の医療を提供しようとすることで、医院の経営が悪くなる」
ようなことがないような医療制度にならないものかと、
ぼやくこのごろです。

    さて、今年も終わりになりましたから、
何かお役に立つ話題で締めくくりたいと思います。

     魚を食べることの効用について。
魚を食べることで心筋梗塞、心停止による突然死を予防出来ます。
また、魚を定期的に食べている人たちは、
食べない人たちに比べて
最高・最低血圧がともに低く、
その上善玉コレステロールといわれて
いるHDLコレステロールの血中の値も高い傾向があります。
さらに、魚の摂取が大腸がんの発症を減らします。

    最近、魚を食べると痴呆の予防になることもわかってきました。
特に青背魚といわれるマグロ、カツオ、イワシ、サンマ、サバ等には
オメガ3−不飽和脂肪酸の一種である
ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid:DHA)が豊富に含まれています。
DHAは脳の神経細胞の中で、
その情報の伝達に直接関与しているシナプシスといわれる部分に
多く含まれていること、
したがって学習や記憶といった脳の重要な機能の発現に際して
重要な働きをしていることが、動物実験で明らかにされています。
さらに、DHAを多く含む食事を取っている人は
アルツハイマー病になりにくいことを示す臨床疫学的な研究が
相次いで報告されるようになり、
魚のようなDHAを多く含む食事の摂取が
アルツハイマー病の発症に予防的に働くことが
世界中で広く認められるようになってきています。

痴呆には、大きく、アルツハイマー型痴呆と血管性痴呆の2つがあります。
もちろん、DHAは、動脈硬化によって起こる血管性痴呆にも、
前述のように効果があるので、
「魚を食べると、痴呆の予防になる。」
(どちらの型の痴呆にも予防的効果がある。)
ということになります。

    というようなわけで、皆さん、

なるべく魚は食べるように心がけましょう!

では、良いお年を!






    12月27日 2004
   
 津波警報
   今年は、異常気候で、自然災害が多くて、
クリスマスも、社会全体が妙に沈んだ気持ちで迎えた様に感じる。
「もう、これで新しい年を迎える。」というときに、また地震のニュース。
朝刊を読んだきり情報がないが、
おそらく甚大な被害が出ているのだろう。
津波の被害が大きかったようだが、
タイやインドではあまり津波の知識がなかったし、
情報が入ってなかったようだ。

    かくいう僕も、何年か前に、
与那国で潜っているときに地震にあった。
と言っても、潜っている最中は地震があったことなど気付かなかった。
ボートから緊急浮上の合図(ラダーをガンガン打ち鳴らす。)が出されて、
緊急浮上して港に戻った。
津波警報も出ていたが、みんな港でボーっとしていた。
本当は山の上に避難すべきなのに、
ダイビングサービスのスタッフも、
特に何をするでもなく港で待機していた。
天気は良く、とてものどかで海も静かだった。
確かに港は入り江になっていて、
直接波が来る構造ではなかったが、
「何か間違ってるぞ!」と思った。
結果は、数cmの津波で何もなかったけど・・・。

    しかし、その時に、「僕だけ、ウェットスーツを着たまま、
だいぶ離れた山の上に走って逃げる」というのも、
とても違和感があって出来なかった。
ダイビングサービスのスタッフに、
「ちゃんと避難させろ!」と
くってかかるような雰囲気でもなかった。
日本人ってこんな感じで逃げ遅れて津波にあったんじゃないだろうか?って
今更ながら心配してしまう。
やっぱり、津波警報が出たら、
高いところに速やかに逃げるべきだったと思う。








    12月22日 2004
   
カレンダー追加
   職員の人から「カレンダーに、色がもっとあった方がいい。」
という指摘を受けて、もう一部追加することになった。

3.



以上のようなわけで、3.を追加します。
受付の人達には、伝えてありますから、
「カレンダー頂戴!」と言えば伝わります。








    12月21日 2004
   
蔑視表現
   「痴呆」は、今度から「認知症」と言わねばならないそうだ。
足を引きずったり、片足をかばって歩く状態を
「ちんばをひく」とか「びっこをひく」とか言ってはいけなくて、
「跛行」と言わないといけないそうだ。
「めくら」は、「全盲」
「つんぼ」は「難聴」
「いざり」は「這って進む?」。
全部、蔑視表現だからだそうだ。
僕には、「言葉狩り」としか思えない。
きっと何年か経つと、
また新しい表現が、蔑視表現として
狩られることになるのだろう。

    言葉の中に蔑視の意味が無くても、
その言葉を使う人の心に蔑視があれば、
やがてその言葉は蔑視表現になってゆく。
このことは、いつまでも
言葉の宿命として存在し続けるのかもしれない。

    「表向きの追いかけっこをするより、
我々一人一人が、
心の中で、蔑視を厳に戒めることが必要だ。」
という意見が出てこないことが、一番気がかりだ。
 

     来年のカレンダーを作ってみました。
「12月だというのに、流行らない医院の医者はヒマなんやなぁ!」
などと、思ったりしないで!

ということで、アクセスカウンターの
右から5桁目が「1」を獲得した人限定で
プレゼントします。
(早い話が、当分、誰でも該当者なんだけど・・・。)


1.


2.


   欲しい人は、
上の「1」か「2」のどちらかを選んで申し込んでください。
メールで申し込んでもらうと、返事を書くのが大変なので、
医院に直接電話してください。
お渡しできるのは、数日後になると思います。




     12月17日 2004
    
ネコにアワビを与えると、耳が腐って落ちる
    これは、東北地方の言い伝えである。
そんなバカな!と思ったが、
実は、この話には、次のような根拠があった。

    実際に、アワビの内臓を食べるとネコに限らず、
光過敏症にかかる可能性がある。
この原因、pyropheophorbide αは
アワビやトコブシ、サザエなどの中腸腺に局在する。
特に産卵期にあたる2-5月の中腸腺の色は濃緑黒色を呈する。

ネコの場合、耳の部分が毛が薄いために光を浴びやすく、
そのうえ突出しているので、
炎症を起こすと壊疽を起こしやすくなる。
そのために、実際にそのようなことが起こりうるわけだ。

    ヒトの場合も
この物質を摂取した後で、光に当たると同様の症状がみられ、
顔面や四肢に火傷のような浮腫ができ、治癒に約1カ月かかる。


    実際に、そんなにいっぱいアワビを食べることは少ないと思うが、
これからの季節(特に2−5月)、
もしアワビを食べる機会があれば、
その後は、日焼けには要注意である。







     12月14日 2004
   
 飲み過ぎてません?
    お酒が美味しい季節になった。
って、年中そうかもしれないけど・・・。

一度、アルコール依存度をチェックして見てはいかが?
                                 はい    いいえ

酒が原因で、大切な人(家族や友人)と
の関係にひびが入ったことがある。            3.7     -1.1

せめて今日だけは、酒を飲むまいと思っても、
つい飲んでしまうことが多い。               3.2     -1.1

周囲の人(家族、友人、上司など)から
「大酒飲み!」と非難されたことがある。         2.3     -0.8


適量で止めようと思っても、つい、
酔いつぶれるまで飲んでしまう。              2.2     -0.7

酒を飲んだ翌朝に、前夜のことを、
ところどころ思い出せない事がしばしばある。      2.1     -0.7

休日には、ほとんどいつも、朝から酒を飲む。      1.7     -0.4

二日酔いで仕事を休んだり、
大事な約束を守らなかったりしたことが時々ある。   1.5     -0.5

糖尿病、肝臓病、または心臓病と診断されたり、
その治療を受けたことがある。               1.2     -0.2

酒が切れたときに、汗が出たり、、手が震えたり、
イライラや不眠など苦しいことがある。           0.8     -0.2

                           よくある   時々ある  滅多にない
商売や仕事上の必要で飲む。           0.7       0      -0.2 

酒を飲まないと寝付けない事が多い。            0.7     -0.1

ほとんど毎日3合以上の晩酌をしている。
(ウィスキーなら1/4本、ビールなら大瓶3本)       0.6     -0.1

酒の上の失敗で警察に
やっかいになったことがある。                0.5       0

酔うといつも怒りっぽくなる。                 0.1       0

出典:斉藤学、アルコール依存症とは何か 1988; ヘルスワーク協会より
    「久里浜式アルコール依存度スクリーニングテスト(KAST)」

    いかがでしたか?
各項目の点数の合計が2点以上だった場合、
「アルコール依存症」の疑いがあります。
点数の合計が0〜2点だった人も、
普段のお酒の飲み方に問題がありそう。
だそうだけど、
普通は、-6だと思うけど・・・。(すべて”いいえ”だと-6.1)
-2や−3でも問題がありそう。
(この人達は、そうなる可能性が高い予備軍といえる。
 酒の飲み方を、今一度見直す必要がある。)

    今年も、忘年会の季節がやってきた。
僕は、数年前から、極力出席しない様にしている。
今年も、すべて出ない予定だし、この先も出ないつもりだ。
さて、どれだけ、しがらみから逃れられるか?

追加:
    昨日光明池ダイエーで練り歯磨きチェックをしたが、
ほとんどの製品にフッ素が入っていた。
入っていなかったのは、
エチケットライオンとザクトだけだった。
今度から我が家ではエチケットライオンを採用する事にした。
僕って、”ライオン歯磨き”の回し者 ?





     12月10日 2004
   
赤ちゃんは火曜日の昼生まれ
   今朝、新聞を見ると、
慢性C型肝炎の原因になったフィブリノーゲンを
使用した施設が発表されていた。
知っている病院や診療所の名前がいっぱいあった。
産科領域でよく使われているのが印象的だったが、
長男や長女を出産した医院の名もあった。
運良く、二人とも出血など無く生まれてくれたから、良かったものの、
一つ間違えば、同じ目に遭っていたということである。
運が良かった意外なにものでもない。

    その頃は、まだ医者になりたてで、
そのことに、苦情を言って良いことなのかどうか
よくわからなかったのだが、
あとで、考えてみると、やはり納得がいかないことがあった。
つまり、
「分娩時間が医者の都合で操作されている。」
ということである。
具体的には、オキシトシンあるいはプロスタグランディン
という陣痛誘発・促進剤を使って
出産時間を操作しているということである。
さも当たり前のようにされていたので、
こちらが医者だけに、
かえって苦情を言ってはいけないのかと思っていたが、
さすがに3人目の時は、
絶対そこでは出産は頼まないでおこうと思った。

    当然、自然分娩に比べれば
無理矢理に子宮を収縮させるのだから事故が多い。
それに何より、どうして医者の都合に合わせて
大切な子供の出産時間が操作されて
愛する妻を危険にさらさなければいけないのか!
そもそも、医者たるもの、
患者のリスクを避けることがあっても、
患者のリスクが多くなる医療行為をするなんて事は、
絶対にあってはいけないことである。

    この医院は、出産後に
子供の血液型を臍帯血から検査して教えてくれた。
さも親切そうだが、大きな迷惑、余計なお世話である。
臍帯血は母親の血液の影響もあり、
必ずしも子供の血液型を正確には反映しない。
教えるなら、あくまで、
「その血液型は参考であって、違うかもしれない。」と
一言添えるべきであるし、
誤解が生じるのなら(というか、きっと、生じる。)
あえて、調べないのが親切ってぇもんだ。
どうせ、その検査代金も料金に入っているのだから。

   そんなわけで、多くの産科(個人も病院も)では、
日曜や祝日を避けて、火曜日の昼に出産ということが多くなる。
2002年12月の統計しかないが、
日曜の出産数は平均して、2386人
火曜の出産数は平均して、3636人であった。
時間では夜の7時から朝の7時までは、4000人以下/時間なのに、
昼の12時から夕方4時までは、6000人以上/時間であり、
13時、14時はともに8000人を超えている。

    つまり、曜日も時間も操作されて生まれてくるのである。
こんな不自然なことが当たり前の日本て?

   昔は、自宅で、産婆さんが来て、
桶にお湯を入れて準備して、命の誕生の瞬間を待ったものだ。
兄弟はその場に立ち会えなくても、
命の誕生という生命の営みに、
驚きと畏敬の念を持って、間近に触れることが出来た。

    産婆さん(助産婦)が、
出産に立ち会う習慣はいつの間にか無くなってしまった。
基本的には、事故さえなければ、問題ないし、
自然分娩の事故は少ないと思われる。
助産婦が出産に立ち会って、事故が起こることが予測されるときは、
産科の医者が、バックアップ出来るシステムがあるのが
理想のように思う。

    ちなみに3人目の子供はPL病院で出産させてもらった。
ここは、自然分娩で、血液型も調べたりしない。
夫の立ち会いも希望者には許可してくれる。



      12月 8日 2004
    
精神科の薬
    ふと気付けば、もう師走の8日、あっという間に一年が過ぎてしまう。
年をとったせいか、毎日あれやこれやと忙しくしているせいか・・・・。
今年は、ずいぶんと精神科と関わった年だった。
今日も一人、うつ病で治療されている人が来た。
「この1ヶ月、吐き気がして、胃がもたれる。」という訴えだった。
よく聞いてみると、うつ病の薬を飲んでいる。

   そして、他の大きな病院に、同じ訴えで受診して、
胃の内視鏡を受けて「異常なし」と言われている。
にもかかわらず、その病院で、
強力なPPIという胃の酸を抑える薬やら、
胃粘膜保護剤やらいっぱいもらっている。
(「異常なし」なんだから、そんな薬を出すのは
診断と治療で矛盾がある。と思うのだが・・・。)
その挙げ句に、良くならないくて僕のところに来られたようだ。
(いったい僕のところの位置付けって、なんなの?
 って思ってしまうが、
 とてもよくあるパターンなので、
 もう気を悪くするのは止めることにした。)

薬の内容を見ると、抗うつ剤が3種類だった。
そのうちの一つは、抗コリン作用のある薬だった。
抗コリン作用とは、コリン作用を抑える作用(あたりまえだが・・・)である。
コリン作用とは、簡単に言えば、おなかの中の臓器を運動させる作用である。
だから、抗コリン作用のある薬は、消化管の動きを抑える働きがあるわけである。
つまり、食道や胃や腸がちゃんと動かなくなるのだ。
原因は、90%ここにあると思われた。
「もう、1年以上前から飲んでいるのだが・・・?」
と聞かれたが、
1年でも2年でも10年でも、
飲み始めて、間をおいてから薬の副作用が出ることは、
しばしば経験することである。

ところで、この人のうつ病はどうなんだろう?
話をしていて、まったくそんな気配がない。
聞いてみると、「もう大丈夫」とのことだった。
だけど、「薬を飲んでいる方が調子が良い」から飲んでいるそうだ。

ここに精神科の薬の問題点がある。
確かに、抗うつ剤を飲んでいると、
些細なことが気にならなくなって、気が楽になる。
だから、つい飲んでしまうし、医者も止めろと言わない。

この前の、ビジランスセミナーでも、
イギリスから来た講師の人が同じ問題点を指摘していた。

    患者が医者に尋ねる。
「先生、私は、この薬を止めると調子が悪くなるけど、
 この状態は”薬の中毒”なんでしょうか?」
すると医者は、
「いやいや、この薬は中毒は起こしません。
 薬を止めると調子が悪いのは、あなたの病気がまだ良くなってないからです。
 まだ、薬は止めないで(減らさないで)飲んでいてください。」
こうして、薬という名前の麻薬で患者は医者に縛られてしまう。
製薬会社は、決してその状態を薬の副作用として認めない。
国もあえて問題としない。

という内容であった。
(ちゃんと、同時通訳がいたので、
僕が訳し間違いしているわけではないはず。)

  この問題は、まさに世界共通の問題でもあるのだ。

精神科の薬は、なかなか止められない。

このことが問題なのだ。
今年、何人の患者で、このことで、内科の僕が心を悩ましたことか!
(本音を言えば、
こんなことはちゃんと精神科の医者の間で議論して、
そちらで解決してもらいたい。と思っている。
しかし、何故か、精神科の先生は、・・・・・。
い、言えない!やっぱり!)

   もちろん、先ほどの患者に処方したのは、
飲み薬ではなく、
「その抗コリン作用のある薬を減らすことと、
いつまでも、薬に頼らないで、
うつが治ったら、薬を徐々に止める。」という指示である。

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