気体



<マックスウェル・ボルツマン分布>

 熱平衡状態において,ある温度で粒子がどのようなエネルギー分布を示すかをマックスウェル・ボルツマン分布といいます。
 この分布式は,粒子がとりうる最大の確率を求めたもので,高校の物理で習う気体分子運動論(18世紀のベルヌーイのもの)とは異なります。気体分子運動論では,気体分子の平均二乗速度が求まります。これでもよい近似になります。



<気体分子の運動速度>

 高校の物理では気体分子運動論を取り扱うが,ボルツマン分布は考慮されていない。
 ところが,化学の教科書には,いきなりマックスウェル・ボルツマン分布のグラフが掲載されている。

 マックスウェル・ボルツマン分布をしている理想気体の平均速度(平均二乗速度ではない)は,

 v=√(8000RT/πM)

 したがって,298Kでの窒素分子の平均速度は,

 v=√〔(8000×8.31×298)/(3.14×28.0)〕=4.75×10m/s  … @

 時速約1,700kmで運動していることになる。



<平均自由行程>

 平均自由行程λは,同一分子の衝突の場合,

 λ=1/(√2nπσ

 ここで,n:単位体積あたりの個数
     σ:衝突半径(同一分子なら分子の大きさに等しい)

 298K,1気圧の窒素分子では,
 n=P/kT=2.43×1025−3 〔kはボルツマン定数,理想気体〕
 σ=0.316×10−9m 〔ファンデルワールス直径〕
 λ=1/〔1.41×2.43×1025×3.14×(0.316×10−9
  =9.31×10−8m … A



<窒素分子の衝突回数>

 @とAより,
 298K,1気圧で,1秒間に,
 4.75×10/9.31×10−8=51.0×10

 なんと,51億回衝突していることになる。

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