電気分解



<標準電極電位>

 標準水素電極(H→2H+2e)に対して,還元反応として表現された電極を組み合わせて作った電池の標準状態における起電力。
 標準水素電極の反応速度は速く,電位差を一定に保ちやすい。しかしながら,実測できる場合は少なく,大半は熱力学データから計算されている。



<食塩(NaCl)水の電気分解>

 食塩は水中で電離してナトリウムイオンと塩化物イオンとに分かれている。

 電圧を加えると,ナトリウムイオンと塩化物イオンは,電解槽の中を「泳いで」電極に向かうわけではなく,電極付近のイオンが「さっと」動いて,反対の電荷の層を形成する。従って,電解槽中のイオンの殆どは「電圧を感じない」。

 気体発生に関して,最低でも10−4mol/L程度の濃度が必要である。水はわずかしか電離しないので,水中の水素イオンと水酸化物イオンは反応に関係ない。
 従って,ナトリウムイオン,水,塩化物イオンを考えればよい。

 標準電極電位(平衡状態)は,

  Na/Na     −2.714V … @
  HO/H     −0.828V … A
  O/HO     +1.229V … B
  Cl(aq)/2Cl +1.396V …C

 陰極では@とAの電位差が1.89V程度であるので,「ナトリウム」が生成するためには,1.89V程度余分な電圧を必要とする。従って,陰極 で「水素」が発生することは明らかである。しかし,陽極ではBとCの電位差が0.17V程度であるので,「どちらも」発生しうる。
 しかし,気体が発生する「速度」は塩素のほうが大きいので,「電極」に適切なものを選べば,「塩素のみ」が発生するとしてよい。



<過電圧>

 標準電極電位の差は,平衡状態であるので,

 (溶液中の物質の電子が電極に到達する速度)=(電極から溶液中の物質に電子が到達する速度)

 すなわち,流れる電流が0となる電位差を表す。

 「電流が流れない」というと,いまひとつピンとこないかもしれないが,標準電極電位を測定する際には,逆電圧をかけて電流が止まった点を測定する。

 「実際に」電流が流れている時の電位差とこの標準電極電位の差との隔たりを「過電圧」という。過電圧が大きければ,電流がたくさん流れるのは分かるであろう。以下の経験式がある。

  過電圧=a+bln(電流)

 過電圧を大きくすると,流れる電流は指数関数的に大きくなる。

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