有働式生活療法

今、なぜ〈有働式生活療法〉なのか

 わが国においては1973年に老人医療費の無料化に伴い、いわゆる〈老人病院〉と称される病
院が数多く設立された。これらの病院施設内のベッド数増加に伴い、急性期病態で入院を余儀
なくされた高齢患者が、臓器中心の治療によって原疾患が治癒した時には、ADLのレベル
では寝たきり状態に陥っているという現象が繰り返されてきた。

 また、核家族化・共稼ぎの家庭が多くなってきたことなどの社会現象により、この〈老人病院〉
での在院日数は増加の一途をたどり、〈寝たきり老人〉という新語とともに、〈社会的入院〉という
言葉も登場してきた。つまり、〈患者の病気を治療して、元気な姿で患者さんを自宅へ軽快退院
させる〉病院本来の機能から、急性期病態の治療後も院内で元気になった患者の生活領域
を、そのベッド周囲に漫然と限定することにより、次第にADLの低下を招き、〈寝たきり患者〉の
数を増加させてきたのである。

 冷暖房完備、食事はベッド脇で、昼間も自分のベッドしか居場所のない高齢者は、ADL自立
の健康体に戻ったにもかかわらず、従順にベッド臥床を終日強いられてきたのである。このよう
な環境においては、畑仕事が可能であった高齢者も、容易に〈廃用症候群〉に陥り、次第に自
宅へ戻るという希望もついには諦めの気持ちへと変わっていった過程が考えられる。

 患者の家族においても、さまざまな事情により入院中に介護量の増えた高齢者を自宅に受
け入れる余裕のないケースが多く、国の方針としての〈出来高払い制〉の老人医療と、家族
環境の利害関係が両輪のごとく絡まりあいながら、〈寝たきり老人〉の増加に拍車をかけ
ていったのである。

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