有働式生活療法

世界に類をみないわが国の高齢化と老人医療制度

 さらにわが国においては、世界に類をみない深刻な高齢化問題が浮上している。65歳以上の
人口比が国民全体の7%であった1970年に対し、わずか24年間で1994年には14%の大台に
達している。この高齢化に至るスピードはフランスなどの西欧先進諸国に比し、5倍近い急
峻な角度である。(図5参照)。

 しかしながら、従来の〈出来高払い制〉の老人医療制度は医療経済の破綻により大きく変化
し、老人医療費の一部負担、定額制医療の導入など、1997年頃を境に高齢者およびその家族
にも厳しすぎると思われるような医療法が次々に打ちだされてきているのが現状である。

 さらに、寝たきり状態に陥った患者に対する具体策が呈示されないまま、2000年4月には介
護保険が導入され、従来の〈出来高払い制〉を返上して〈定額制〉を採用することを余儀なく
された老人病院も数多い。医療に携わる者として、ある日を境に、それまで行っていた医療行
為を、国家政策の〈方針変更〉という言葉のみで、中断することが可能であろうか?

 〈ヒトの命〉の重さを、今真剣に考えさせられる状況に、わが国の医療は直面しているのであ
る。
 このような〈寝たきり状態〉に陥った介護量の多い患者に関する問題は、今日では〈高齢者〉
にとどまらず、かろうじて命だけは救命し得た70歳以下の低ADL患者にも当てはまることであ
る。脳幹部出血や梗塞などの重篤な急性期病態を幸運にも乗り切った比較的若い患者におい
ては、家族も年齢が若く、急性期同様の最良の医療を受け続けさせたいと願うのが当然であろ
う。しかしながら、これもまた長期化に伴い〈介護保険〉の適応となり、従来のように高額な医療
行為を漫然と繰り返すのみの〈後手に回った〉医療では対応できないのが現実である。

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