わかりやすい指導の手引き  『こんな時どうする?』      


                    『Q&A』の一覧 

 Q 1  教材・教具の「安全」ってどういうこと?
 ・Q 2  個々の子どもに合った「教材・教具」ってどんなもの?
 ・Q 3  子どもの実態の把握はどうするの?
 ・Q 4  課題に集中できない子の指導は、どうしたらいいの?
 ・Q 5  ダイナミックに運動させたい。でも、準備や片付けが大変?
 ・Q 6  「教材・教具」の材料はどこで買えば(見つければ)いいの?

 
Q 7  ペンキとアクリル絵の具の使い分けってどういうこと?
 ・Q 8  発語のない子や外国人の子とのコミュニケーションは難しい?
 ・Q 9  自作の学習ソフトを作るのは無理?
 ・Q10  「教材・教具」を使う側(子どもたち)に立って考えるってどういうこと?
 ・Q11  「教材・教具」の工夫で何が変わるの?
 ・Q12  子どもたちの「困った」を見逃さないってどういうこと?
 ・Q13  市販の「教材・教具」と自作の「教材・教具」の違いは?
 ・Q14  スモールステップって何?
 ・Q15  木工ができない・・・、でも、作りたい時は?
 ・Q16  なかなか制作のアイデアが浮かばない。どうすればいいの?
 ・Q17  教材室がいっぱいで困っているけど、どうすればいいの?
 ・Q18  「教材・教具」を無理に子ども達に押しつけないってどういうこと?
 ・Q19  障がいが重度の子ども達には、何を指導の手がかりとすればいいの?
 ・Q20  デジタル機器の活用と問題点って何?
 ・Q21  お金の学習の教材は、本物?偽物?・・どっちがいい?
 ・Q22  どうして「発達」の学習が必要なの?
 ・Q23  100円ショップの良いところとそうでないところって何?
 ・Q24  おもちゃって教材になるの?
 ・Q25  何から学べはいいの?
 ・Q26  教室の環境作りって何から始めればいいの?
 ・Q27  図工・美術の授業は難しい?(教材としての作品見本)
 ・Q28  自作の「教材・教具」の良い点と問題点ってどんなこと?
 ・Q29  宿題作りがたいへん。なにかいい方法はないの?
 ・Q30  「教材・教具」を作る時にあると便利な道具ってどんな道具?
 ・Q31  ひらがなの文字は、教科書体・ゴシック体・・どっちがいいの?
 ・Q32  カードはパウチしないといけないの?
 ・Q33  手元を見ない子の指導はどうすればいいの?
 ・Q34  iPadやタブレットで良いソフトを使っているだけでいいの?
 ・Q35  姿勢の悪い子変えるには?
 ・Q36  カルタ遊びの工夫って何?
 ・Q37  イラストが上手く描けない。もっときれいに描ける方法は?
 ・Q38  教材になる「絵本」ってどんなものなの?
 ・Q39  学校で行う「本の展示会」って何?
 ・Q40  教員集団の力を上げるには?
 ・Q41  子どもが課題を間違えた時が、いいチャンスってどういうことなの?
 ・Q42  子ども達がばらばらと動き出す。その時の先生の困った行動って何?
 ・Q43  肢体不自由の子にも、的当てや紙飛行機を飛ばす楽しみを体験させたいけれど・・・。
 ・Q44  いつも歩いている子が、一人でマラソンができるようにするにはどうしたらいいの?
 ・Q45  縄跳びができない子が跳べるようになる方法は?
 ・Q46  図工でお面作りをする時、風船が怖い子をどうすればいいの?
 ・Q47  新しい教材・教具は、どういう風にして作られるの?(制作のポイントとアイデア)
 ・Q48  絵カードの「イラスト」はどんなものがいいの?
 ・Q49  いい笑顔は、先生も子ども達も幸せにするってどういうことなの?
 ・Q50  教室の掃除で使うのはほうきがいい?
 ・Q51  研究授業(公開授業)は、いつもの通り・普段通りでいいんですか?
 ・Q52  「待つこと」は、どうして大事なの?
 ・Q53  面倒見のいい先生は、悪い先生?
 ・Q54  苦手な子こそ好きになるってどういうこと?
 ・Q55  その教材で本当にいいの?
 ・Q56  スプーンの指導はどうすればいいの?
 ・Q57   夏暑いいのに、プールに入れる日じゃない。こんな時に何かいい方法はあるの?
 ・Q58  図工・美術でランプシェードを作る時は、素材は和紙がいいの?
 ・Q59  「自作の教材・教具」の押さえておきたいポイントは?
 ・Q60  通常のコンパスでは描けない大きな円を描く方法は?
 ・Q61  ペンキを塗るときは、段ボール箱があるといいって何?
 ・Q62  安全な塗料ってどんなものなの?
 ・Q63  紙皿などの円の中心を簡単に調べる方法は?
 ・Q64  フリー(無料)のものがあるのに、「イラスト集(CD・DVD)」は買った方がいいの?
 ・Q65  教材・教具のデータベースって、実際のところ使えるものなの?
 ・Q66  感覚遊びで座っている子や寝ている子を自由に揺らす簡単な方法ってある?
 ・Q67  彫刻刀は危なくて使えないけれど、紙版画よりいいものはないの?
 ・Q68  障がいを知るってどういう意味?
 ・Q69  自作にこだわらないで、市販品を上手く使うってどういうこと?
 ・Q70  机やイスをがたがたさせて落ち着かない子がいる。どうしたらいいの?
 ・Q71  厚手のシナベニヤ板の作り方は?
 ・Q72  教材・教具の制作はシンプルに考える?
 ・Q73  「連絡帳」は難しい・・。
 ・Q74  簡単に作れる「的当て用の的」ってあるの?
 ・Q75  大学の先生は偉いの?
 ・Q76  歩行が不安定な子には、腕を持って支えない・・?
 ・Q77  教材・教具を簡単に作る方法は?
 ・Q78  捨てないでとっておくと教材作りに使えるものって何?
 ・
79  靴紐を結べないこの指導は?
 ・Q80  玉入れの缶が、いい音がしない時は?
 ・Q81  クリアファイルやビニール傘に色を塗りたい時は?
 ・Q82  今まで通りに疑問を持つ?
 ・Q83  他の学部・学年の先生と話しをするのはいいの?
 ・Q84  保健室との連携って何?
 ・Q85  遊具の点検は誰がするの?
 ・Q86  震災を考える?
 ・Q87  インフルエンザの予防接種
 ・Q88  初めからできる人はいない?
 ・Q89  何を言うかではなく、誰が言うかが大事
 ・Q90  講演会の聴き方は?
 ・Q91  保護者との面談を上手に行うには?
 ・Q92  最新の情報を知っている?
 ・Q93  「学級通信」で気を付けることは何?
 ・Q94  知ることで怖くなくなる?
 ・Q95  子ども達が言うことを聞く先生は,怖い先生? やさしい先生?
 ・Q96  体育のリーダーの先生の在り方は?
 ・Q97  担任間でフォローし合うって、たとえばどんな場面で?
 ・Q98  校外では、子どもから目を離さないのは当たり前?
 ・Q99  子ども達は見抜いている。何を?
 ・Q100 サンダル履きは非常識?
 ・Q101 給食の係活動を考える?
 ・Q102 トイレ指導は小学部で身につける?
 ・Q103 特別支援学校の常識は、一般社会の非常識?
 ・Q104 教え子の新しい担任には気を使う?
 ・Q105 視聴覚機器に強くなる?
 ・Q106 図工・美術は、ワンダーランド?
 ・Q107 指示するのは簡単だけれど・・・。
 ・Q108 女の先生は得している?
 ・Q109 カッターナイフは、大きい方が良いの? 小さい方がいいの?
 ・Q110 見込みがないと思われると声をかけてもらえなくなるの?
 ・Q111 基礎学習では、机から○○が落ちないようにする?
 ・Q112 車イスは、平らな所でもブレーキをかけるって面倒臭いだけでしょう?
 ・Q113 痛みは伝わらないってどういうこと?
 ・Q114 家族の笑顔・・。
 ・Q115 
研修会の参加費用が高い。参加しようかどうしようか?
 ・Q116 コミュニケーションカードを作ったが、子どもが使ってくれない。使わせるコツは?
 ・Q117 教材の大きさを考えている?
 ・Q118 教材には、どんな色を塗れば良い?
 ・Q119 事務室や給食室の職員と仲良くなる?
 ・Q120 ムードメーカーを大事にしている?
 ・Q121 卒業生に聞く。「働く」ってどんなこと?
 ・Q122 調理学習は、楽しいけれどちょっと怖い?
 ・Q123 買い物学習は、ねらいをしっかり考えないと意味がない?
 ・Q124 学級園で花を育てても子ども達が興味を示してくれない?
 ・Q125 記録が大事なのはわかっているけれど、なかなか続けられない。どうすればいいの?
 ・Q126 男だから、女だから・・・?
 ・Q127 勘違いしていない?
 ・Q128 教材は、作って使って終わりじゃない?
 ・Q129 親の立場で考えるってどういうこと?
 ・Q130 授業を記録するってノートに書くこと?
 ・Q131 手洗いの習慣は、石鹸が作るの?
 ・Q132 学級(クラス)文庫って何?
 ・Q133 亡くなって良かった?
 ・Q134 子ども達の好きなことを知っていますか?
 ・Q135 自転車の指導をしていますか?
 ・Q136 小学部の体育は、楽しくなければ子どもは伸びない?
 ・Q137 学校の中には人材が一杯?
 ・Q138 木工用のボンドは、木を接着するだけじゃない?
 ・Q139 幼児教育の本は役に立つ?
 ・Q140 ひとつの教材・教具で色々な子に対応できるものって何?
 ・Q141 担当学年をよく変える先生ってどうなの?
 ・Q142 数の学習で使う「魚釣り」の竿の糸が絡まって困る。からまらない方法は?
 ・Q143 教室で「玉入れ」がしたい。準備が簡単なものってある?
 ・Q144 絵本の世界を体験する?
 ・Q145 図工の作品作り。障がいの重い子でもいい作品を作れる?
 ・Q146 火を使わない簡単な調理は?
 ・Q147 足の筋力を高める簡単な方法は?
 ・Q148 意外と気づかない靴のことって何?
 ・Q149 本物を意識した教材・教具とは?
 
Q150 学校で最も大事なことって何?
 ・Q151 「生きる力」ってなんだろう?  
 ・Q152 初心忘るべからず
 ・Q153 最も優れた「教材・教具」って何?

 



Q1 教材・教具の「安全」ってどういうこと?



 木工作品では、板や箱等の角を落として丸みをつけます。サンドペーパー(紙やすり、布やすり)や電動サンダーを繰り返しかけることで木材の表面を磨き、ペンキやニスやワックス等を塗ることで、木材のささくれを防ぐようにします。こうすることに手スリットボックスを抜かないことで、安全で美しく耐久性のある教材・教具を作ることができます。

 口の中に入る危険性があるものは、排除するか子どもたちの手の届かない所に保管するようにします。何でも口の中に入れてしまうお子さんがいますから、飲み込んで事故がおきないように、飲み込めない大きさのものにするか指導中に充分注意します。私はそういった教材は職員室に置くか、教室に置く場合は鍵をかけて保管していました。子どもたちは興味がある物やお菓子などの食べ物は、少しくらい高い棚に入れても隠すように保管してもすぐに見つけてしまうからです。


Q2 個々の子どもに合った「教材・教具」ってどんなもの?


 子どもたち一人ひとりが性格や障がいの程度が違っています。例えば「ボール蹴り」を行う時、用意したサッカーボールが硬いと思うと、足が痛くなるからと余り蹴りたがらない子もいるでしょうし、教員や友達が蹴ったボールが足下にいかないと転がって行くボールを追わない子どももいるでしょう。
転がりづらいボール ボールはサッカーボールだけではありません。ビーチボールでもいいし、新聞紙をガムテープで丸めたボールでもいいのです。柔らかボールであれば蹴っても足は痛くなりません。また、新聞紙を丸めてガムテープを巻いて作ったボールのように余り転がらないボールであれば、ころころと転がっていかないので、ボールを追いかけなければならなくなることも減るでしょう。

 一人ひとりの特性を考えて数種類のボールを用意すること、それが個々の子どもに合った教材を用意するということです。硬いボールを嫌がる子も軟らかいボールから徐々に硬めのボールに変えていけば、普通のボールが蹴られるようになっていきます。


Q3 子どもの実態の把握はどうするの?


 実態把握というと色々な検査法が浮かびますが、乱暴ないい方をすれば諸検査よりも「発達」の学習をしたり、複数の先生方でそのお子さんのことを徹底的に話し合った方が、いい実態把握ができます。(ただ、複数の先生方といっても、特別支援教育の経験が浅かったり、学習不足の先生方がいくら集まっても実態把握は深まりません。)

 諸検査のいいところは、どの地域に行っても共通の見方ができる点にあります。諸検査についてはその方法や検査結果の活かし方を知らなくては困りますが、問題は検査をやるには時間がかかりすぎることです。経験から言うと学年のお子さん達の検査が終わるまでにおよそ3ヶ月近くかかり、結果的に学習活動に支障が出ました。検査のいい点は認めますが、先生方が日々話し合って、子どもたちの実態と問題点の改善方法を検討した方が、使える実態把握になると思います。「あれ?」と思ったり指導に困ったら、後に回さずにその日のうちにクラスや学年の先生と話し合うことです。


Q4 課題に集中できない子の指導はどうしたらいいの?


 基礎学習は障がいの重い子ども達が行う学習です。障がいが重いと言うことは、集中力や持続力の欠如・手の操作性の未熟さ・ものをしっかり見ることが苦手などの特性を抱えています。障がいがさほど重度でない子ども達にも、課題に集中できない子ども達がいます。何故集中できないのかというと、既にできることを課題としていたり、課題が難しすぎるなど、課題自体がその子に合っていない場合が多く見られます。また、理解できないのではなく、教材の使い方(操作)がわからなくてできないということもあります。

 子どもの実態と課題とスモールステップの設定がうまく組み合わさっているか、教材の提示の仕方が子ども達にわかりやすいものになっているのか考えましょう。また、弁別などの学習では、子ども達に正解してもらいたくて、先生が正解の方を知らず知らずに見ていることがあります。そうすると子ども達は課題を考えないで先生の視線の先がいい結果(正解)だと、先生の見ている先を伺うようになります。これでは学習にはなりません。
 教材自体に魅力がない時(カードであれば小さすぎたり薄すぎたりして持ちづらい・イラストがわかりづらい・色がはっきりしていない等々)にも集中できないことの一因となります。

 教材が手を伸ばしたくなるようなものになっているのか、課題設定が合っているのか・提示の仕方がわかりやすいかなど検討しなければならないでしょう。集中できないのは子どものせいだなどと思っていたら、特別支援学校の教員としては恥ずかしいかぎりです。


Q5 ダイナミックに運動させたい。でも、準備や片付けが大変?


 
肢体不自由の子ども達でも知的の子ども達でも、「体育」や「あそび」では何とか体を大きく動かす活動や感覚運動を組めないかと先生方は苦心されていることでしょう。ダイナミックな活動を行いたいと考新・忍者ボードボール遊びえると、エアートランポリンや台車や大型滑り台や幾台ものキャスターボードなど教具も大きなものが必要になったり数が必要になったりして準備や片付けが大変になります。

 ひとつの例ですが、肢体不自由の障がいの重いグループでボール遊びを行った時は、ひもを引いて吊してある箱からボールを太鼓に落とした後、ボールを教室中に敷きつめてシーツブランコで感覚遊びを行いましたが、後片付けが毎回大変でした。そこでブルーシートの穴にロープを通すことで、きゅっとひもを引けばブルーシートの上のたくさんのボールを先生が一人でも簡単に集められるようにしました。
 ちょっとした工夫があれば、短時間で片付けもできるようになります。準備や片付けが大変だなあと思ったら、ちょっと考えてみましょう。解決の方法は、みんなの知恵で出てくるものです。


Q6 「教材・教具」の材料はどこで買えばいいの?


 私は、自分の住んでいる太田市内にあるジョイフルホンダとダイソーでほとんどの材料を購入しています。ジョイフルホンダと市内に数店舗あるダイソーにはよく出掛けるので、どこの店のどこ辺りに何があるかは殆どわかっています。現役の頃もほぼ毎週末行っていました。
 どこに何があるということが大体分かっていると、教材・教具を作ろうとするときに、「あれとあれとあれがあれば作れるだろう」という目安がすぐに立ちます。何か作ろうと考えていないときでも、ホームセンターやダイソーなどを見て歩くことで教材作のアイデアが浮かんでくるようになります。


Q7 ペンキとアクリル絵の具の使い分け?


 教材・教具に色を塗る際は、シンナーを使わないですむ「水性ペンキ」を使います。厚画用紙等で木の板で教材を作る時は、アクリル絵の具を使うようにしています。学校ではポスターカラーをよく授業で使いましたが、教材に色を塗る際には発色がポスターカラーよりも各段に良く、木材にも塗ることができるアクリル絵の具の方がお勧めです。ダイソーでも売っているので助かります。
 「ペグ抜き」や「色の弁別」・「形の弁別」などの教材でもペンキではなくアクリル絵の具を使います。仕上がりの美しさが違うからです。子ども達は障がいが重くてもきれいなものの方に手を伸ばします。用途に合わせて使いわけるといいでしょう。


Q8 発語のない子や外国人の子とのコミュニケーションは難しい?


学習の予定と場所のカード 教え子の中には、知的に重度で話せなかったり、場面緘黙や全面緘黙のお子さんや外国人のお子さんで日本語が不自由なお子さんもいました。そういった子ども達とのコミュニケーションをどうするかということとと、日本語を全く話せない外国人の保護者への対応をどうするかが大変でした。

 埼玉県では、県の義務教育課に帰国児童生徒等支援アドバイザーがいて、そちらに通訳の方の支援をお願いすることができるようになっています。家庭訪問や書類関係・通知表の翻訳など、私がブラジル籍のお子さんの担任になったときは随分助けてもらいました。ことばが通じないと言うことよりも何よりも、学校から配られる多量のプリントをポルトガル語に翻訳して渡すのは殆ど自分でやらなければならなかったので、毎日深夜まで悪戦苦闘しました。 

 ・・・さて、子どもたちとのコミュニケーションですが、教室の掲示では「1日の学習の流れ」のカード(国語・体育等の教科名)にイラストとその授業を行う「場所の写真カード」を貼ることで、障がいが重い子も外国人の子も移動は問題がなくなりました。子ども達が最も関心の写真で見る献立表ある給食は、牛乳・パン・ご飯・果物・肉料理・麺類など全て写真にして献立表を作ることで、今日の給食は何・明日は何かなあと楽しみにしている子ども達が見てわかるようにしました。
 献立表は前月の終わり頃には給食室からプリントが届きますが、保護者にはいい情報でも、文字が読めない子には意味がないのです。給食の献立を毎回写真に撮っても準備に1年以上かかって間に合わないので、インターネットで例えば「竜田揚げ」等で検索して献立の写真に使いました。一ヶ月分のカラーの写真の献立表は、クラスだけでなく学年の子ども達全員や外国人の保護者にも大好評でした。

コミュニケーションブック 会話に関しては、コミュニケーションブックやカードを1日中使うようにすることで、大体何をしたいかがわかるようになりました。簡単な意思の疎通がはかれるようになると、信頼関係もできてことばの理解も進んでいきました。外国人の保護者も緘黙児の保護者も障がいの重い子の保護者も、子どもが学校での生活を楽しんでいることがわかると担任に好感を持って接してくれるようになります。掲示のプリント類やコミュニケーションブックやカードなどの教材を工夫することで、子ども達とのコミュニケーションはうまくできるようになっていきます。それらを作ることに多少なりとも時間はかかりますが、あるとないとでは天と地ほどの差が出てくるでしょう。コミュニケーションは、子ども達にとって一番大切なものです。


Q9 自作の学習ソフトを作るのは無理?

お金と電卓の学習のソフト
 私たち教員はプログラマーではありませんから、スマホのアプリやパソコンや電子黒板用のソフトは作ることはできません。でも、「ホームページビルダー」やWindowsパソコンに入っている「Windows Live ムービーメーカー」や「PowerPoint」などを使えば、授業で使える簡単なソフトは作ることができます。(※「Windows Live ムービーメーカー」は、Windows8以降には入っていません。)

 私は、「時間の学習」で10秒や1分などを子ども達が目で見て体感できるように見える「タイマー」をムービーメーカーで作りました。このタイマーは作業学習等でも使えるものです。ホームページビルダーを使って作ったものには、「お金の学習」・「電卓の学習」・「ことば図鑑=語彙を増やすことばの学習」・「何の音? 動物編」・「何の音? 日常生活編」・「年賀状の学習」なども作りました。
 子どもたちのことをよく知っている教員が作る簡単なソフトは、電子黒板や大型モニターとパソコンをつなげることで使える自作ソフトになります。プログラマーが作るような難しいソフトでなくてもいいのです。むしろ簡単だからこそ、子ども達にも理解しやすいものになりえるのです。


Q10 教材・教具を使う側(子どもたち)に立って考えるってどういうこと?


 自作の教材・教具は、市販品のように美しく丈夫ではありません。価格(材料費等)や技術や製造機器が違うのですから当然です。では、自作だからちょっとくらい雑な作りでもイラストが下手でもいいのかというと、そんなことはありません。自分がもし使う側だったら、雑な作りだったりイラストが下手だったり、板にささくれがあって危なかったりしたら嫌でしょう。
 がんばって作ったからいいのではないのです。使う子ども達が手を伸ばしたくなるようなものにしなければなりません。それは難しいことではなく、手描きで上手なイラストが描けないのであれば、フリーのイラスト集を使ったり写真を使ったりすればいいのです。
 木材で作ったものは角を落として丸みをつけたりサンダーで何回も磨いて塗装することで、仕上がりも美しくささくれで子ども達がケガをするようなこともなくなります。どんな教材・教具でも水性ペンキやアクリル絵の具等を使ってきれいな色を塗ることもできます。

 使うのは子ども達ですから、できるだけ安全できれいな仕上がりになるように、できる範囲でいいのでちょっとがんばってみましょう。


Q11 教材の工夫で何が変わるの?


うちわの骨 
学習でも遊びでも、「できない」ことをずっと繰り返してきた子どもたちは、やる気がなかったり理解しようとしなかったりします。これは当然のことでしょう。でも、教材を工夫することで、「できない」が「できた!」に変えられることがあります。

 例えば、クラスや学年でシャボン玉遊びをしようとしても、吹くことが苦手な子はシャボン玉を作れません。また、針金で大きな輪っかを作り毛糸を巻いたもの使わせても、シャボン液から輪っかを引き出すときにパチンと割れてしまうことが多いでしょう。障がいが重い子ほどうまくできませんが、うちわの骨を使えば障がいの重いお子さんでも簡単にたくさんの大きなシャボン玉を空に飛ばすことができます。肢体不自由のお子さんでもうちわを持っているだけで風が大きなシャボン玉を大量に作ってくれます。

誰でも跳べる縄跳び また「誰でも跳べる縄跳び」は、プラスティック製(樹脂製)の縄跳びで、空中のどこでも縄を止めることができるので、縄跳びができない子でも跳べるようになるものです。「できない」が「できた!」に変わるときの子どもたちの楽しそうな笑顔は最高です。そんな笑顔を教材の工夫で引き出してあげましょう。


Q12 子どもたちの「困った」を見逃さないってどういうこと?


 スプーンや箸を正しい持ち方で持てない・自分から意思表示を余りしない・運動を嫌がる・偏食が多い・ものをすぐに壊す・視線が教材に向いていかない・万引きしてしまう等々、私たち教員の立場から見える「子どもたちの困った」ことはたくさんあるでしょう。
 それとは反対に「車イスに座っていたり寝た状態でいると、戸外では太陽が顔に当たってとてもつらそうだ」・「外国の子なので日本語がま車イス用の日傘だ上手に話せないから、気持ちを伝えられなくてもどかしそうだ」などの「子ども達の困った」を感じたことはありませんか? そんな時に「子ども達の困った」を感じても何もしないのであれば、困ったは何も改善されません。

 最近やっと車イス用の日よけが売り出されるようになってきましたが、20年ほど前にはありませんでした。そこで、ないのであればなんとかしようと考えて作ることにしました。車イス用の日よけは、使わないときにははずして畳めるようにしたものです。眩しい・暑いというのであれば、傘をさしてあげればいいのではと思われるかもしれませんが、肢体不自由の学校では、大体先生1人で車イス2台を押すので、傘を持つということはできないのです。
 また、発語がない子や緘黙の子や外国人の子にはコミュニケーションブックを作り使うようにしてきました。なにか「困っている」子ども達の様子が見られたら、考えてみましょう。自分で解決策が思いつかなくても、先生方と話したり教材・教具のホームページから答が見つかるかもしれません。


Q13 市販の教材・教具と自作の教材・教具の違いは?


数の学習ペグ 市販の教材・教具は、素材や形などに安全性が配慮されたものになっています。また、製品としての仕上がりも美しく、使いやすさも備えています。一方、自作の教材・教具は手に入る材料で作りますから、成形や美しさではどうしても市販品には劣ります。ただ、市販品は価格が高いのと自分の教えている子どもに合っていない部分があるということがネックです。
 学校では予算が限られていますから、優先順位の低いものはどうしても購入してもらえなくなります。また、購入してもらえても希望の数をそろえることは難しいのが現状でしょう。成形の美しさでは劣っても、工夫さえすれば1万円以上する市販品と同じ機能の教材・教具も数100円で作れます。


Q14 スモールステップって何?


リング抜きリング抜き どんな学習でも一足飛びに子どもたちが課題(目標)をクリアすることなどありません。もう少しがんばればできることを積み上げていくことが大事になります。子どもたちは幼い頃から、「できない」・「わからない」という負の繰り返しを経験し、自信もなければ達成感を味わうことも少なかったでしょう。
 この学習でこの子にはここまでいってほしいという目標を考えるとき、最終的な課題達成までの段階を数段階にして、「できた」「わかった」という経験をつませてあげることが一番の早道です。
 その子のがんばりをよくほめ、生活全般に自信が持てるようにすることが、成長を促すもっとも大切なことです。教材・教具もスモールステップを考えて、ひとつの学習で数種類のものを考えて用意すべきです。これができたら次はこれというように。


Q15 木工ができない。でも、教材・教具を作りたいときは?


厚が笑止で作る形の弁別 木工ができないから作れないと思わないことです。板を切ったり穴を開けたりなど、木工のできる先生に「板をこうしてください。」とお願いすれば、いやとは言わずやってくれるでしょう。また、厚紙やカラーボードや箱などの材料とハサミ・両面テープ・ボンドでも色々な教材が作れます。
 右の写真は、普通ですと板に穴をあけたり、板を電動糸のこ等で○・△・□に切って作る形の弁別盤ですが、 厚紙とはさみとアクリル絵の具で作ったものです。紙の箱を使ったカードの問題の答の出る「Q&Aボックス」は市販品は1万円以上しますが、自作すれば300円程度で作れます。工夫次第で可能性は広がりますよ。


Q16 なかなか教材制作のアイデアが浮かばない。どうしたらいいの?


 
全国の先生が色々な教材・教具を作っています。インターネットでは、個人や色々な学校で「教材・教具の紹介」をしています。また、特別支援教育の教材・教具を販売している内田洋行の教材カタログ(事務室に置いてある教材カタログと同じです。)も見ることができます。(「内田洋行教材カタログ」で検索)
 ただ、殆どの情報はそれらの教材・教具の作り方までは載っていません。これを作ってみようと思っても作り方がわからなくては作れませんが、私のホームページ「特別支援学校の授業に役立つ教材・教具」では、作り方も載っています。
 Internetで調べたり本を買って、いいものを真似ることから始めるとよいでしょう。ダイソーなどの100円ショップを覗くのもアイデア作りの役に立ちます。ただ、対象となるお子さんは当然違いますから、自分の担当するお子さんに合うようにちょっとした改良も必要になるでしょう。


Q17 教材室が一杯で困っているけれど、どうしたらいいの?


折りたたみ式台車折りたためる台車折りたためる台車黒板に貼れる画用紙乾燥棚 学校では、学期の終わりごとに教材室の片付けを行って、もう使わないようなものは処分したりしていると思いますが、それでもいつの間にか一杯になっているのが教材室かもしれません。
 自作の教材・教具を作る時には、収納スペースをとらないという点も重要になります。私が作った絵を描いた画用紙を乾燥させる棚は、黒板に貼れスペースをとりません。使わないときには折りたためるので、更にスペースをとらなくなります。誰でも跳べる縄跳びも組み立て式なので3本の棒になります。折りたためる台車は、使わないときには畳んで廊下の隅に置いておけます。
 教材・教具の工夫でスペースをとらない教材・教具を作るようにすれば、教材室はすぐには一杯にはならなくなるでしょう。


Q18 教材・教具を無理に子ども達に押しつけないってどういうこと?


 教材・教具を無理に子どもたちに押しつけない。でも、すぐに諦めない。・・・一見矛盾するようですが、折角苦労して作ったものだからといって固執したりしないというのは、お子さん達一人ひとりが個性があるので、その教材・教具がAさんに合っていてもBさんには合わないということはよくあることです。また、数回やったくらいでは、その操作法がわからないなどの理由で一見関心がないように見えることもあります。使い方をわかりやすく見せる等、指導の仕方をよく考えてあきらめないで使っていきましょう。


Q19 障がいの重いお子さんには、何を指導の手がかりとすればいいの?


 障がいが重度のお子さんには、その子の好きなもの(音や感触や色やテレビの番組や絵本や好きな食べ物等)を学習や教材・教具作りのヒントにするといいでしょう。お子さん達の好きなことを手がかりとしていけば、その中に学習課題を設定することができます。これをやらせたいではなく、これから入っていこうと思えば悩むことも少なくなるでしょう。子どもたちは、自分の好きなことは嫌がりませんし、興味を持ってくれますから。


Q20 デジタル機器の活用と問題点って何?


 iPadや電子黒板・スマホ・パソコンやデジカメなどデジタル機器が学校でも身近なものになってきましたが、それらは高価なものなので各学校に必要と思われる数の導入には至っていないのが現状ではないでしょうか。肢体不自由や盲・聾学校などの学校では、教材・教具として積極的に活用するようにしていきたいものですが、知的の学校ではものを壊すお子さんも多いので、現状では難しい面もあるでしょう。

 デジタル機器の活用については、長野で夏に行われている「信州特別支援教育カンファレンス」や金森先生(国立特別支援教育総合研究所)が事務局長をしている「マジカルトイボックス」の主催する研修会(各種のスイッチ等の実技講習会等)に参加されると、デジタル機器の活用の最新情報やスイッチの制作を学ぶことができるでしょう。
 最近は東京大学の先端科学研究センターの巖渕先生の開発したMicrosoftのゲーム機のキネクトを応用した空間スイッチ(どこでもスイッチ)などもあります。首を傾ける・視線を動かす・指ををほんの少し動かす等、空間にスイッチが設定できる素晴らしいもので、上肢に重度の障がいのある子どもたちでもスイッチ操作や描画がスムーズにもできるものが開発されました。ただ、感覚遊びに終始している認識面の障がいが重いお子さんには、操作は難しいようです。


Q21 お金の学習の教材は本物?偽物どっちがいい?

本物のお金を教材に・「買い物学習」などの授業を行う時には、紙で作ったお金やおもちゃのお金ではなく、本物の1円・5円・10円・50円・100円・500円・1000円の硬貨やお札を人数分の財布と一緒に教材として使います。何故本物を使うかというと、お金の持つ色合い・質感・重さが、紙やおもちゃのお金とは全く違うからです。
 おもちゃのお金や本物と大きさを同じにした紙で作ったお金を使ったこともありますが、子どもたちの集中力や学習に対する真剣さが、本物を使った方が各段に良かったからです。尚、プリント学習でお金の画像を使う場合は、できるだけ本物のお金(10円・100円等)と同じサイズにするといいでしょう。何種類かのサイズで印刷して本物と合わせてみて、同じ大きさのものを選べばいいだけですから、手間は惜しまないことですね。先生が、黒板にお金の写真を貼ってお金の説明をするようなときは、子ども達が見えやすいように大きいものを使うといいでしょう。


Q22 どうして「発達」の学習が必要なの?

・肢体不自由の子ども達は、手や体を動かそうとすると過緊張が入ったり、首が座っていなかったりと通常の発達過程とは違った傾向を見せます。障がいが重くなると寝たきりで知的にも重く目も見えない喋れないという子どもたちが多数います。脳に大きなダメージを負っていることでスムーズな発達が妨げられてしまっているからでしょう。
 知的の障害を持った子どもたちも肢体不自由の子どもほどではありませんが、姿勢が悪かったりボディーイメージが希薄な感じがします。ものを投げる際の肩の動かし方や股関節や手指や手首の使い方がぎこちないというか、経験不足とは違う体の問題が見受けられます。
大月書店「子どもの発達と診断」 ・・とはいえ、普段先生方が気になるのは自閉症児の指導法(太田ステージ)や文字や数を獲得させるための指導法、感覚学習や図工・美術や体育の授業内容をどうするかなどのことが多いのではないでしょうか。「発達」の学習なんてこの忙しいのに無理。今やろうとしていることに役に立つの?・・と思われることでしょう。
 ただ、基礎学習や体育や感覚学習・国語算数・給食指導(正しいスプーンの持ち方など手や手首の使い方)等を進める上で、障がいが重い子どもほど「発達」の学習は重要な意味を持ってきます。空間概念の発達・数の概念の発達・手の使い方の発達、ことばの発達などを知らないと、「どうしてできないの?」とその理由が分からなかったり、その改善策が見えてこないからです。
 普段は忙しいでしょうから、夏休みなどの時間があるときに乳児や幼児の発達を学べるといいですね。最近は、本屋さんで特別支援教育の本棚(コーナー)よりも幼児保育などの本棚に「発達」の本が置いてあるのを目にします。私は、大月書店の「乳児の発達と診断1・2」・「幼児の発達と診断」という本やミネルヴァ書房やかもがわ出版・全障研・ぶどう社の本で勉強しましたが、まずはわかりやすい本から手にしてみるといいでしょう。「発達の学習」は、特別支援教育という建物の最も重要な土台です。


Q23  100円ショップの良いところとそうでないところ・・?

・100円ショップは教材作りの最大の味方といってもいいところです。教材作りや図工の作品見本作りに必要なカラーボード・色紙・画用紙・筆・箱・アクリル板・蝶番・釘・木ねじ・棒・ロープやゴム・絵の具・紙粘土・鈴・工具等々と何でも売っています。極端に言えば、買ってきた物を並べるだけでも教材として成り立ってしまいます。
縄跳び ただ気を付けなければいけないのは、ダイソーで売っている板(MDF材)は加工はしやすいのですが、耐荷重は低いので、重いものは乗せられません。色塗りも表面のコーティングをサンダーや紙(布)やすりではがさないときれいに塗ることはできません。
 時々先生方が使う段ボールカッターも、ホームセンターで売っているものの方が値段は少々高いですが、スムーズに段ボールを切ることができます。縄跳びの縄も樹脂製のものは縄を丸めて袋に入れてあるものは使いづらいです。縄がねじれてしまっているので、そのねじれがなかなかとれないからです。
 また、「仲間分け」等の学習で仕切りの入っているプラスティックの箱を活用するのはお勧めできません。狭い箱に仕切りがあって3分割や4分割されたものは、左右や前と後ろといった空間が狭すぎて、障がいの重い子どもたちにはわかりずらいからです。障がいがそれほど重くない子どもの場合は、仕切りのついた箱はいい教材になると思います。障がいの重い子どもたちの場合は、1個の箱の仕切りを使って仲間分けをするのではなく、複数の箱を間隔をあけて並べるほうがいいでしょう。
 商品をどう組み合わせるかどう使うか考える時に、子どもたちの実態を思いながら考える必要があります。100円ショップは、月に何回か見て歩くようにすると、教材作りのヒントも見つかるでしょう。


Q24 おもちゃって教材になるの?

カラー積み木で遊ぶ・0〜3・4歳児の教育では、保育者の作るおもちゃが教材として力を発揮しています。子どもたちが目を輝かせて遊ぶ中で、空間認知・ボディーイメージ・手の操作性・ことば・集団での協調性などの力を高めていきます。
 では、特別支援学校の小学部ではどうでしょう。市販のおもちゃは、一人で遊ぶものが多いので教材にはなりづらいです。
 教材になるおもちゃというのは、友達と一緒に遊べるものがいいです。的当てやボウリング・シャボン玉・ボール入れ・缶蹴り・積み木遊びなどは、一人でやってもさほど楽しくはありませんが、友達や先生と一緒にやると楽しいものです。学校にある古くなってしまった積み木は、色を塗ることで子ども達の見立て遊びがより広がります。的当てやボール入れやシャボン玉作りなどは、腕のコントロールの教材になります。うまくできない子もいるでしょうが、そういう時こそ自作の教材が力を発揮します。シャボン玉が作れない子も、うちわの骨で誰でもたくさんの大きなシャボン玉が作れるなど、「できない・遊べない」を「できた・楽しい」に変えられるのです。
 友達と一緒になって遊べると楽しいし、おもしろいから一生懸命になります。おもちゃはいい教材のひとつと言えるでしょう。


Q25 何から学べはいいの?

・特別支援教育は、学習しなければならないことが膨大です。どんな本を読めばいいのか本屋さんでたくさんの本を前にして悩むことでしょう。指導例が自分の担当しているお子さん達と違うから参考にならない(?)などなど、本を選ぶのも一苦労です。

 私はミネルヴァ書房・ジアース教育新社・いかだ社・かもがわ出版(クリエイツかもがわ)・大月書店・全障研出版部・岩崎学術出版・ぶどう社・学研・明治図書などの出版社の本から選ぶようにしてきました。これらの出版社の本なら選んで間違いがないからです。
 また、基礎学習の教材制作に関しては、水口先生の「基礎教育研究会」に所属している先生の本を選びます。
 ただ一番勉強になったと感じたのは、先輩や同僚との会話でした。きっと身近なところに良い先生がいるはずです。仕事で忙しく同僚や先輩の先生と話しをする時間もなかなか持てないでしょうが、大学の先生の話し(講演)を聞くよりも、同じ現場にいて子どもたちのことをよく知っている身近な先生のほうが学べることが多いのです。

Q26 教室の環境作りって何から始めればいいの?

学習ノン予定表と場所のカード・ユニバーサルデザインやバリアフリーを意識した環境作りが言われていますが、予算や意識の問題もあって学校の教室の環境作りはなかなか進んでいないのではないでしょうか。お金がないとできないのでは困りますが、難しく考えないで震災も想定した整理整頓をまず行う必要があります。棚の上にものを置かない・廊下にものを置いて通路の幅を狭めないなど以前から言われてきたことですが、それが徹底されているのかチェックが必要です。

 また、使いやすい教室・わかりやすい掲示物という観点から考えると、「1日の学習の予定」のカード(1時間目 朝マラソン・体育、2時間目国語等々)を黒板の隅に貼っている教室が多いと思いますが、枠の中に「こくご」(国語)としか書いてない教室もあるでしょう。これでは文字が読めないお子さんには意味がありません。各教科等の名称を文字だけでなくイラストを使うことで理解を助けるようにしている教室が多いと思いますが、これだけだとちょっと残念。障がいの重いお子さんの場合は、イラストがあっても何の授業があるかわからないことが多いのです。できれば、文字とイラストの入ったカードの横に授業を行う場所の写真カードも貼ってあるといいでしょう。「次はここへ行くよ。」と写真を見せながら話すといいでしょう。場所がわかるとそこで何をするかは障がいの重いお子さんでも結構わかるものです。

場所のカード この授業名を表した文字・イラストカードは、小学部・中学部辺りではあっても高等部になると途端になくなります。知的な面で高いお子さん達が中学校の特別支援学級から入ってくることで、板書を字が書ける子に係活動として任せるようになるからかもしれません。
 ・・でもよく考えてください。小学部・中学部で字が読めないお子さんは高等部に行っても字はわからないのです。障がいの重い子を知らず知らずに置き去りにしていないかよく考えていきたいものです。子どもたちにとって良い環境とは、知的に高い子もそうでない子にもわかりやすく安全な空間を意味するのですから。


Q27 図工・美術の授業は難しい?

ケーキ作り・美術系の大学出で図工や美術を専門にしている先生は別にして、私たち美術が専門でない普通の教員には、何を教えるか考えると頭の痛くなるのが図工・美術の授業です。大体が毎年行ってきたような学習内容をこなして何とかしているというのが現状ではないでしょうか。学年が上がっても同じような授業でいいのでしょうか? 大人が「おもしろい」・「楽しい」と思わないような授業は子どもたちにもワクワク感はおこらないでしょう。

 そうは言っても図工・美術の担当(係)になれば、「教材の引き出し」がないことを嘆くようになるでしょう。手前味噌ではありますが、私のホームページには様々な作品見本と作り方が載っていますので、他のホームページや本などと合わせて参考にしていただければと思います。まずは真似て「引き出し」をたくさん作っていきましょう。教材についての「引き出し」が増えれば、図工・美術は楽しい授業になっていきます。 いいものは真似て、担当する子どもたちに内容を合わせていき、自分のもの(「引き出し」)にしていくことです。


Q28 自作の教材・教具の良い点と問題点ってどんなこと?

文字・数字入りのマグネット・教室には様々な子ども達がいます。体が大きい子や小さい子、肥満で動くことが苦手な子、発語が全くない子・視覚障害のある子・文字の読み書きができない子・パニックを起こすと周囲の子を危険状態にしてしまう子・手足に障がいのある子・外国人の子で日本語がよくわからない子、知的には高いものを持っているのに問題を頻繁に起こす子など様々です。教材・教具は、そんなお子さん達の個々の実態(状態)に合ったものでなくてはなりません。

 市販のものよりも自作の方が良い点は、誰よりも子どもたちを近くで見ていて、その子らの実態や課題を知っている先生方が作るからです。また、学校の予算が少なくて欲しくても買えない教材・教具も工夫次第で1万円するような市販の教材・教具も300円位で作ることができるというのが自作のいいところでしょう。学校で買って欲しいけれど予算の関係で無理な教材・教具や学校にはあるけれど数が少ないので、学習グループの子どもたちの人数分欲しいという問題も解決できます。

 ひるがえって問題点を考えると、自作の教材・教具は大型滑り台などの大きいものは複数の先生方が力を合わせて作らなければできませんが、殆どの教材・教具は、個人で開発・制作しています。個人が作るものですから、それを使うのもその先生に限られがちです。いいものであれば、クラスや学習グループや学部全体で共有できるようにしないと宝のもちぐされになります。自分が作った教材だから自分だけで使うのではなく、複数の先生方が、各人が作った教材・教具をもっといいものにするように話し合い、みんなのものにするようにしなければなりません。それが子ども達にとっても宝物になるでしょう。


Q29 宿題作りがたいへん。なにかいい方法はないの?

・毎日の宿題や夏休みの宿題など、保護者からの要望で宿題作りを行っている先生方の困ったという話しを耳にすることがあります。「毎日とても忙しいのに・・」・「基礎学習のレベルなのににひらがなの練習プリントを出して欲しいと言ってくる」等、ちょっと困った要望をあるでしょう。理不尽な要望は困りますが、忙しいからと言う理由で市販のプリントをコピーして使ったり、イン学部共有プリント集ターネットで文字や数の計算のプリントをダウンロードして使ってはいないでしょうか。
 宿題は出せばいいというものではありません。一人ひとりのお子さんの学習課題は違うのですから、当然一人ひとりの宿題の内容も変わってくるはずです。そういった子ども達のことを配慮していない市販のプリントやインターネットで見つけたプリントに宿題としての意味があるのかよく考えなければならないでしょう。

 プリント作りは、作った分だけ教材として自分の「引き出し」を増やしてくれるものになります。初めはたいへんでも作ったデータは積もり積もって財産になるわけです。・・とはいえ、もう少し負担が減らないものかという思いは残ります。
 私は、中学部にいた時に国語・数学グループの先生方と話し合って学習グループの子達を「基礎学習・数と文字の獲得・単語と簡単な計算」の3段階に分け、共同でプリント作りを行い、そのデータを学部全体で共有するようにしました。プリントの内容を話し合ってあるので、あの段階の子にはこのプリントが使えるということがわかっています。これで日々の宿題や夏休みの宿題など、一人でがんばることが減り宿題を余り負担に感じることはなくなりました。


Q30 教材・教具を作る時に、あると便利な道具ってどんな道具?

かどまる○かどまる(サンスター文具)
・紙や画用紙やそれらをパウチしたものの角を丸くカットしてくれる道具でホームセンターや文房具店に売っているものです。私にとってカード作りに欠かせないものになっています。はさみでカードの角を切り落として丸みをつけるのは結構手間がかかります。紙だから角があっても大丈夫と思っていると、カードの四隅の角で痛い思いをするお子さんもいます。そうならないように角を丸くしておきましょう。

オルファのカッターマット○オルファのカッターマット
 厚紙やカラーボードなどをカッターで切るときに、下に敷いて使うマットです。100円ショップ(ダイソー)でも小さいカッターマットを売っていますが、ちいさすぎて使えません。サイズは色々ありますが、A3サイズ以上あると画用紙を切る際にも使いやすいです。文房具店やホームセンターの文房具コーナーで売っています。新聞紙や雑誌等をマット替わりに使っている人がこれを使うようになると良さがわかります。

○フォスナービット
フォースナービットフォスナービット・電動ドリルやボール盤に挿して使う板に穴を開ける道具です。ダイソーにも売っていることがあります。色々なサイズがあり、ドリルでは開けられないような大きな穴をきれいにあけることができます。学校にも木工室にあると思いますが、色々なサイズが揃ってはいないので、個人で購入するしかないかもしれません。この道具は基礎学習の教材作りでは頻繁に使いますので、持っているととても便利なものです。

○ノギス
ノギス・ノギスは、穴の大きさを測ったり丸棒やステンレスの管や樹脂の管のの太さを測ったりする時に使う道具です。100円ショップ(ダイソー)でもプラスチック製のものが売っています。ペグ抜き作りでは、ペグにする丸棒の太さを測ったり、そのペグを入れる穴の大きさを決めるのに使います。写真ののぎすは、ホームセンターで買った物ですが、ダイソーのものでも大丈夫です。。

○万能ハサミ
万能ハサミ・万能ハサミは通常のはさみのように紙を切るのは勿論のこと、竹ひごや細い金属(針金等)も切ることができます。教材・教具の制作をしているときに、通常のハサミでは切れないものや無理に切ってしまうとハサミの刃こぼれをおこしそうなものを切る際に重宝します。ホームセンターで売っていて600円〜700円位です。そんなに高いものではありませんから、1本持っていると案外使い道のある道具です。

○革の手袋
スワニーノ手袋・革の手袋はホームセンターの工具類の所で売っているものです。値段が高いものの方が、革が滑らかで手にフィットします。自分の財布と相談して手頃なものを求めれば良いでしょう。革手袋は、カッターナイフや工具を使う際に利き手でない方にはめると安全性が増します。利き手でカッターナイフを持つとすると、利き手でない方で定規やカラーボードや厚画用紙を押さえることになるので、万が一カッターナイフやのこぎり等が滑っても革手袋をしているとケガすることが減ります。素手だと刃が直接当たり切ったりするからです。今まで使ったもので一番良かったのは外国製のスワニーの革手袋ですが、これは数年前に買え変えたときに7000円近くしたので、今では2000円位のものを使っています。結構消耗が激しいので、余り高いものは財布が厳しいですから。・。

○ラミネーター
ラミネーター・各種のカードをパウチするときに使うラミネーターですが、学校では1〜2台くらいしか置いていないのではないでしょうか。自分が使いたいときに誰かが使っていると、なかなか仕事がはかどりません。事務的な仕事も増えてきた学校では、カードにパウチをしている暇もないかもしれません。・・それならば、いっそ自分用に買ってしまったほうがいいでしょう。高いものではありませんから、家にあればいつでも色々なカードを作ることができます。

○電動ジグソー
・のこぎりで板を何回も切るのはしんどいです。丸鋸は、ベテランの木工の先生でもケガをすることがあります。電動ジグソーは丸鋸ほど危険ではありませんし、電動ジグソーがあれば、板の切断から曲線の切断、プラスチックや金属類の切断もできますので、自作する方にはお勧めです。私は何社か使いましたが、レーザーガイドのついているボッシュのジグソーが一番使いやすかったです。

○クラフトのこ
飛び出した部分を切る・のこぎりには、あさりといって刃が交互に向きを変えて並んでいます。この工作用ののこぎりは、クラフトのこというような名称でホームセンターに売っていますが、このクラフトのこはあさりがないので、写真のように飛び出した部分を切るときに下の板を傷つけることなく飛び出した部分を切断することができます。ここでは棒を下の板に埋め込む時の使い方を例としてあげましたが、木の箱を作っているときに上手にできないで板がはみ出してしまった時にも使えます。刃はとてもしなやかで写真のように押し曲げるようにして使うことができます。1000円位で高いものではないので、教材・教具の制作で役立つ思います。


Q31 ひらがなの文字は、「教科書体」?・「ゴシック体」?

書体・ひらがな練習を行う時やひらがなプリントを作る時に、いつも「うーん困った。」・・と思うことに書体があります。特別支援学校で先生方がよく使っているのは「ゴシック体」のようですが、小学校などでは「教科書体」を使っているようです。「教科書体」にも色々種類があるので、さてどれがいいのかしらと悩みます。「教科書体」は、文字に「とめ・はね・はらい・むすび」などがあり、特別支援学校のお子さん達には文字獲得のハードルを上げる壁になるようなので、とめ・はね等を簡略化したような形の「ゴシック体」の方がよく使われるようです。ここで困るのは、ゴシック体の「き」・「さ」ののような文字です。教科書体であれば離れている部分が連続していてくっついています。そこでゴシック体を使う場合は、「き」「さ」などの文字は、連続していない形に変えて使うよきさうにしてきました。こうすることで、教科書体との違いを少なくするようにしたわけです。お子さん達がゴシック体と教科書体の違いに戸惑うことを減らそうと考えたからです。この点に関しては未だに答は見つからないのですが、私は文字獲得を目指している子ども達にわかりやすいという理由で、プリントでの文字練習はゴシック体を使うように、知的に高い学習グループの場合は、教科書体で指導しました。


Q32 カードはパウチしないといけないの?

・文字カード・数字のカード・絵カードと授業でカードを教材として使う場面は多いでしょう。そのカードですが、使うお子さんの性格(穏やかな性格か気性が激しいか等)や障がいの程度を考えて作らなければならないでしょう。穏やかな性格のお子さんの場合いは、特にカードにパウチしなくてもいいと思います。反面、気性が激しいお子さんや障がいの重いお子さんの場合は、カードを噛んだり破ろうとするので、カードはパウチして四隅を丸める必要があります。パウチしてあると破くことができませんので、何度か破こうとしても破けないとわかると、もう破こうとはしなくなります。カードをパウチした方がいいかどうかは、お子さんの状態を見て考えるということですね。

 それから、手指の使い方がぎこちないお子さんの場合は、カードに厚みがないと取りづらいでしょうし、カードの大きさも考える必要があります。これは、個々のお子さんに合った教材という観点から考えるということです。


Q33手元を見ない子の指導はどうすればいいの?

メロディ玉入れメロディー玉入れ・障がいが重くなると、視線がふらついて手先(手元)を見ようとしないお子さんがいます。歩いているときもしっかり前を見据えて歩くのではなく、どこを見ているのかわからないような感じで、壁やものにぶつかるのではないかと心配になるお子さん達です。

 基礎学習で玉入れや形の弁別を行おうとしても、そんな状態ですから学習になりません。左の写真のお子さんの場合は、「玉入れ」で入れた玉がおもちゃの鉄琴の上を転がって音が鳴るようにしたところ、音が出ることによってはっと我に返ったように手先を見るようになりました。これが楽しかったのか、休み時間にもやりたがるようにマグネット式色弁別マグネット式の大小弁別なり、私を引っ張ってこの玉入れの所まで行くようになりました。この写真の右側が手元を全く見ていないときのもので、左側は穴の位置を見て行うようになった時のものになります。

 右側の写真は大小弁別ですが、この大小弁別はマグネット式になっているので、小さいマグネットを大きい方の穴に入れようとするとポンと弾かれてしまうようになっています。この教材は、同僚の先生(他学年)から「手先を見ない子がいて困っているのですが、いい教材はありますか?」と頼まれて「色の弁別」と合わせて作ったものです。 指導が始まると、今まで手元を余り見ないで適当に大小弁別や色弁別をやっていた生徒さんが、「あれ?」という表情に変わり手先をしっかり見るようになったということです。このことが契機になって、日常生活全般で視線が目的物をしっかり見るようになり、保護者もとても喜んだそうです。手元を見ないお子さんには、手元を見ようとする教材からの反応が必要ということかもしれません。


Q34 iPadやタブレットで良いソフトを使っているだけでいいの?

・特別支援学校では、パソコンだけでなくiPadのように使いやすいデジタル機器が少しずつ導入されてきています。iPadやWindowsのタブレットやNintendoの3DSやスマホで使えるひらがな・カタカナの書き方練習やコミュニケーションに使えるアプリやタイマーなど、優れたアプリが年々登場してきて現場でも重宝していることと思います。
iPad アプリに関してはそれを紹介するサイト(例えば、TOKYO itc 東京都障害者IT地域支援センター)も見つけることができます。ただ、そういったアプリを使っていて、「ここがもうちょっとこうなればいいのになあ」と使っているお子さん達を見ていて感じたことがないでしょうか・・。
 有料のアプリからフリーのアプリと色々ありますが、制作段階で使い手の要望を集め、より良いものをと考えて作っていても、お子さん達は千差万別ですから全てのお子さんが満足いくようにはならないのは当然のことです。作り手側は、色々な要望を聞いて更に良いものを作っていきたいと考えているはずですから、先生方が日々感じている要望を制作する側に伝えていくすべを考える時期になってきているのではないでしょうか。
 ひとつの学校でそれを考えて集約してもどこへつなげれば良いのか難しいところです。全国の校長会や全肢連などが動くことで、使い手側と作り手側(富士通などの企業やフリーソフトを作っている個人)をつなぐ仕組みができないものかと思います。より良い教材やアプリは、多くの人の意見や評価から生まれていく筈です。


Q35 姿勢の悪い子変えるには?

感覚統合椅子・ここでは知的障がいのお子さんの姿勢が悪い場合を考えます。肢体不自由のお子さんの場合は、クッションや車イスの形状等色々な手立てを行っていますが、背骨が曲がった状態が激しい等、教材・教具や自助具のレベルで考えるには難しい問題だからです。
 家庭訪問に行くとよく見かけるのは、担当するお子さんがお尻がずり落ちるようにしてソファに座っている姿です。お母さん・お父さんもわかっていて「ちゃんと座りなさい。」と言いますが、日常的にそういった悪い姿勢でいることがわかる場面です。また、教室のイスに座ると、お尻がずり下がった状態で足を前にどーんと投げ出していたり、足を机に乗せていたりということを小学部の低学年辺りでは特に目にします。いい姿勢というのは、立位で言えばお腹をへこましつつ頭のてっぺんから上に全身がピンと引っ張られるような状態だそうです。座っている場合は、両足底が床面にしっかりつき、背もたれに背中と腰ががピタッとついて腰から上がピンと上に引っ張られる姿勢だそうです。
 教材・教具のできることという観点から考えると、足をどーんと前に投げ出すような子や足を机等に足を上げてしまう子には、感覚統合椅子がいいでしょう。イスの脚が1本しかないので、足を上げたり投げ出していると転んでしまいます。バランスを取って座るようにしないと座っていられないからです。また、子ども達の体型に合わない椅子や机については、学校の椅子ではネジの場所を変えてイスや机の高さを変えますが、それには限度があるので、小さい子や特に体の大きい子には合わない椅子や机が出てしまいます。体が大きい子の場合は、上の学部から大きいサイズの机とイスを調達するしかありません。小さいお子さんの場合は、イスに座って足がつかない場合や配膳で机が高すぎて背の低い子に足台姿勢がよくなる背当て使いづらい時には、足の下に台になるもを置くようにしてあげます。雑誌や漫画本など大きさや高さが調整できるものがいいでしょう。よく木の箱を使っている場面も見ますが、高さの増減ができないので本を使う方がいいです。また、座面が広すぎて背中・腰を背もたれにピタッとつけられない場合は、雑誌等で作ったものを置いて隙間をなくすようにすると、背中がピット伸びていきます。
 子ども達が日常的にいい姿勢を意識できるように指導しながら、子ども達ではどうすることもできない部分は先生方がカバーしていってあげましょう。


Q36 「カルタ遊び」の工夫ってなに?

カルタ遊びカルタのカード・ことばの学習(語彙を増やす。)やお正月の遊びとして「カルタ」はよく行われるものですが、必ずと言うくらいに問題が起こります。それは、カルタの札をたくさん取れる子と余り取れない子が出てきてしまうということです。
 それを解決するには、仮に6人のお子さん達でカルタを行う場合は、カルタの札は同じものを6枚ずつ用意します。(絵札が20種類あるのではあれば、20種類×人数分ということになります。)そして、一度に取れる札は1人が1枚とするようにします。こうすることでゆっくり札を見ないとわからない子も、余裕を持って札を取れるようになります。勿論延々と待つわけにはいけいませんから、ある程度待って次の札にいくようにします。結果として取れる札の枚数は、たくさん取れる子とその半分とか1/3くらいの子が出てきますが、取れなかった子にとっては、それが次に頑張る課題になるわけです。たくさん取れる子には、先生がしている読み手になってもらってもいいでしょう。個々のお子さんの課題を考えて、どう進めていけばいいか配慮すればいいのです。
文字入りカード カルタという教材の制作では、小学部では子ども達が好きなラーメンやカレーライス・みかん等の「食べ物」や冷蔵庫や電話・電子レンジといった「身の回りの身近な道具」と「友達や先生の顔のカード」を作ります。子ども達が興味のないようなものや語彙として増やしていきたくなるようなものではないものは除きます。友達や先生のカードを入れるのは、クラスや学年の違う子達が集まる学習グループでは、担任やクラスメイト以外はよくわかっていないからです。カルタを通じて、先生や友達にも興味を持ってもらいたいからです。
 小学部の高学年や中学部で使うカルタ作りでは、カルタにイラストや写真だけでなく文字が入るようにします。文字をうまく書けないでいる子には文字入りカードを使うようにし、文字が書けるようになりつつある子には文字の欄が書いかの文字カード色々文字なしカルタていないカードに自分で文字を書き込むことで自分だけのカードを作ることができます。
 また、50音の各カード(札)の作り方では、例えば「か」という文字のカードは「かに」などと先生が一方的に決めるのではなく、個々のお子さんが選択出来るように「かに」・「かき」・「からす」「かめ」「カレンダー」など「か」で始まることば(イラスト)を選べるようにするといいでしょう。その子が、○○の「か」とイメージしやすいように配慮してあげたいものです。
 また、各カードは見つけやすく取りやすいように大きめにするといいでしょう。乱暴に扱っても破れたり折り曲がったりしないようにパウチして、四隅の角は痛い思いをしないように丸くします。


Q38  イラストが上手く描けない。もっときれいに描ける方法はないの?

ペンキで色塗りします薄い線をマジックで濃く描くイラストの転写音の出る的当て・教材・教具には、ドラえもんやノンタンなどのキャラクターを描いて子ども達の興味関心を引くようにしたものがあります。(ここでは著作権については触れません。)
 絵が得意な先生は少ないでしょうから、イラストを見て描こうとしても上手くいかないのが悩みの種になってしまいます。一番簡単なのは、キャラクターのカレンダー等の絵をハサミで切って貼り付けてしまうことです。左のドラゴンボールはそうやって作った「音の出る的当て」です。しかし、毎回そうするわけにはいきませんから、もっと簡単にお金がかからない方法が必要です。右のノンタンは、「キャスターボード」用に描いたものですが、方法はダイソーでも売っている「カーボンペーパー」を使うことです。元の絵が小さい場合はデジカメで撮って一太郎やWordに拡大して貼り付けます。その絵を印刷したら、カーボンペーパーの上に絵を置いてボールペンでなぞれば板に絵を転写出来ます。後は水性ペンキで色付けを行えば完成になります。


Q39  教材になる「絵本」ってどんなものなの?

絵本・「絵本」は、幼いお子さん達が読むもの・若いお父さんやお母さんが幼い子どもに読んで聞かせるもの、というふうに思っていませんか。みなさんはもうご存じだと思いますが、優れた絵本はお子さん達は勿論のこと大人が読んでもいいものです。
 特別支援学校では、障がいや年齢にに応じて絵本を選んでいると思います。短くわかりやすいお話しやリズミカルなことばの使い方などの面白さは勿論のこと、色使いの美しさも絵本は工夫されています。小学部の高学年くらいになると「体」や「健康」をわかりやすく教えてくれる絵本もいいでしょう。ケガをしても親が何でもやってくれると、傷口を水で洗い流し・消毒液で消毒するということさえわからない子ができてしまいますが、そういったことも教えてくれる絵本があります。うんちの絵本の話しも、うんちを通して自分で健康に気づく一歩になるでしょう。
はらぺこあおむし 学年が上がって行くに従い「かわいそうなぞう」・「おこりじぞう」などの戦争を考えさせられる絵本や「長谷川君きらいや」など障がいを考える絵本に触れるのもいいでしょう。知的障がいのお子さん達は、肢体不自由のお子さん達のことをどれだけ知っているのでしょう。高等部くらいになったら、自分たちの障がいを知るだけでなく、他の障がいについても理解度を上げることが大切なことだと考えます。
 お話しだけでなく、虫の絵本やお米の絵本・歴史の絵本や色々なお店の絵本・信号や国旗の絵本など科学的・社会的な目を育てる良質な絵本もたくさんあります。障がいの重いお子さんから障がいの軽いお子さんまで読める良質な絵本は、ちょっとかなわないなあと思わされるほど、素晴らしい教材と言えるでしょう。いい教材は活用しないと損です。


Q40 学校で行う「本の展示会」って何?

・若い先生方は、教材・教具に関わらず特別支援教育の本選びには苦労されていることでしょう。大きな本屋さんに行けば特別支援教育のコーナーには数100冊の本が並んでいますが、手にとって内容を少し読んだくらいでは、その本が本当に自分の役に立つのか(勉強になるのか)ちょっとわかりずらいでしょう。

 私が研究部長をやっていた学校では、夏休みに研究部主催で「特別支援教育の図書の展示会」を毎年行うようにしていました。職員室の隣に休憩室があり、普段はそこで会議等が行われていましたが、夏休みの期間中は特別支援教育に関する本を200冊ほど展示して先生方が手にとって読めるようにしました。
 本は、研究部員や全校の先生方に声掛けしてわかりやすい良い本を集めるようにしました。若い先生からベテランまで、自分が読んで内容が良かったという色々な本が紹介されるので、本屋さんのコーナーでどれを選べば良いのか思案することが減ります。この取り組みは、研究部が提案して実施するようにしないと難しいのですが、先生方の役に立つことなのであなたの学校でも始めてはいかがでしょうか・・。研究部の仕事は研修がメインですから、研修会・講演会を企画するだけでなく、こういった取り組みも必要でしょう。


Q41 教員集団の力を上げるには?

・教材・教具の制作と活用という観点から考えると、特別な技量を持った先生がいても、それは教員集団の力にも学部や学校全体の力にもなりません。そんな優れた先生がいても、その影響(恩恵)を受けるのは担当するクラスや学習グループくらいでしかないからです。
 また、その先生が転勤してしまえば、教材・教具を好意で学校に残してくれても、正しい使い方がわからなかったり修理ができなくなるからです。一人ができることなどたかがしれているということです。「教員集団の力」を上げるには、誰かが作って授業で使った教材・教具をみんなで話し合って、更に良いものにすることと、そういった教材・教具を他の先生方にも活用できるようにしていく(共有する)ことで教員集団としての力を上げていくことです。ただ、自分は全くと言ってよいほど教材作りを行わず、人が作ったものを利用するだけというのでは、特別支援学校の教員というか人間的に問題ですが・・。
 教材・教具以外の面でも、みんなで話し合っていい仕事をするようにするわけですから、教材・教具をみんなでいい形で活用するようにするということは、同じことが言えると思います。


Q42 子どもが課題を間違えた時が、いいチャンスってどういうこと?

・ある学校の公開授業を見ていたら、小低のお子さんが2分割のパズルをやっていました。マジックテープのついた台紙に上下に分かれた絵(例えばリンゴ)を貼って完成させるという課題でしたが、そのお子さんが下側の絵を上に貼ってしまったら、先生がすぐにその絵のカードを下側に移してしまったのです。当然、お子さんは次に上側の絵を上に貼り付けて正解になりましたが、それを見ていて「あーもったいない。」と思いました。
 何故もったいないかというと、失敗することで正解を考えることになるからです。先生は子どもさんのちょっとしたつまずきを支援したつもりかもしれませんが、そのお子さんがどこが間違いなのか・正解はどういう形なのかを考えるチャンスを奪ってしまったことになるのです。
 お子さん達が失敗するのは悪いことではないのです。できることばかりしていれば失敗はないでしょうが、その先に進む力は育ちません。失敗したら、立ち止まって考えることが先に進む力を育てるのではないでしょうか。私たち大人だってそうですもの。


Q43 子ども達がばらばらと動き出す。その時の先生の困った行動って何?

・これは教材・教具の話しではありませんが、大切なことなので載せることにしました。体育等で小学部の子ども達が集団活動をしていると、移動の際に子ども達がばらばらに動き出すことがあります。先生方の人数が少ないこともあって、飛び出しそうなお子さんやぐずってすぐに動かないお子さんを先生が両手でつかまえて次の活動に動こうとするのですが、時々困った場面を目にします。子どもの手を握るのではなく、子どもの手首をぎゅっとつかんでいるのです。
 校外学習等で交通量の激しい場所を歩く際には、飛び出していかないように、場合によっては手首を握ることがあってもいいでしょう。手を握っていると急にふりほどいてしまうことが多々あるからです。ただ、校内では手を握ることが大事です。大人であっても手首を握られたら嫌でしょう。私は、総合教育センターの新任研で講師を行う時には、必ずそれを先生方に体験してもらいました。「手首を握られるのと手を握られるのではどう違いますか?」・・と。何気なくやってしまっていることに気づかないと、子ども達に好かれるやさしい先生にはなれません。


Q44 肢体不自由の子にも、的当てや紙飛行機を飛ばす楽しみを体験させたいけれど・・・。

・上肢(腕)が動かないお子さんは、当然ものを投げることはできません。それでも教材の工夫で的当てや紙飛行機を飛ばすことはできるようになります。的当ては、ボール(ダイソーで売っているテニスボールや少し小ぶりのボールがいいです。)にひもを通し、そのひもの端を天井にある扇風機や照明カバーの枠などに結びつけるだけです。天井にひもを結びつけるものがない場合は、ヒートン(フック)を天井にねじこめば簡単です。ひものついたボールを手から離せば、振り子のようにボールは的に向かっていきます。右に離せば右回りに向かっていき、左に離せば左回りにむかっていくので、カーブやシュートのような球筋も投げられます。的の前に障害物を置いても当てることができるようになるわけです。ボールを握っている指を開くだけでボールを投げる必要発射台紙飛行機の発射台はありません。
 また、紙飛行機は、紙飛行機を発射する台を作ればいいのです。普通の紙飛行機の発射台は、両手で台の左右を持って台を拡げないと紙飛行機は発射されませんが、私が作った発射台は、手前の黒い板状の部分を手前側にちょっと倒すだけで、紙飛行機をビューンと発射することとができるようになっています。教材の工夫で今までできないと思っていたこともできるようになります。お子さん達の笑顔が生まれるようにがんばりましょう。


Q45 いつも歩いている子が、一人でマラソンができるようにするにはどうしたらいいの?

朝のマラソンでいつもてくてくと歩いているY君。先生がついて伴走すれば走り出しますが、1周位走ったり教員が離れるとまたてくてく。そこで3ヶ月を目標にして指導を始めました。初めは伴走するスピードを歩くくらいの速さでゆっくり行い、時間いっぱい走りきるようにしました。その次は、伴走しながら前を走っている友達を目標にして「○○君の所まで走る・○○さんの所まで走る」とし、追いついたらしばらくはゆっくり歩くを繰り返すようにしました。「疲れたらいつでも歩いていいよ。」と言うと「大丈夫」と言ってきましたが、無理はさせずにゆっくりペースを守るようにしました。1ヶ月ほどで慣れてきたようなので一人で走らせると1周くらいしか走りません。また、伴走して前を走っている友達の所まで走ってはゆっくり歩くことを繰り返しします。伴走したり少しだけ離れたりを繰り返すと一人でも走れる時間が延びていきました。2ヶ月くらい経つと伴走しなくてもゆっくりペースではありましたが、なんとか一人で完走。離れて見ているだけにすると時々失速したら歩き出すので、「前にいる○○さんまでがんばる」と声掛けするとスピードアップ。スモールステップと数m先を走っている友達を目標にしたことが効果的だったようです。Y君は、高等部に進んで長い距離を走るようになっても、先生が伴走しなくても大丈夫になりました。


Q46 縄跳びができない子が跳べるようになる方法は?

誰でも跳べる縄跳び劇の中での縄跳びの様子・障がいのあるお子さん達は、運動面でも一般のお子さん達に劣る面は確かにあります。経験不足だったり恐怖感が強かったりすることも原因のひとつなのかもしれませんね。縄跳びは、回転する縄が怖いという面とどのタイミングで跳び上がれば良いのかわからないということから難しい活動になっています。・・ということは、回転が凄くゆっくりで跳ぶタイミングがわかりやすければなんとかなるということになります。
 「誰でも跳べる縄跳び」は、3本の樹脂製の管に細い樹脂製の管が入っているものです。組み立て式なので使わないときにははずして3本の管になります。写真の蛍光の管はもう売っていませんが、他の管でも同じように作れます。また、3本の管の組み立て式にしないのであれば、ホームセンターの農園芸コーナーで売っている4〜5mある樹脂の棒でもいいでしょう。樹脂の棒は軟らかくてしなるものにします。硬すぎてしならないものは使いずらいです。
足の位置マット 指導法は、@まず、同じ場所でジャンプするようにします。子ども達は同じ場所でジャンプするように言っても、ジャンプした後に前に数歩出てしまうことが多いので、足の位置のマット(裏側には滑り止めマットを貼ってあります。)の上でジャンプするように指導します。A樹脂製の縄跳びはどんな位置でも止めることができることを見せます。ぐるぐる早く回転しないということがわかると子ども達も安心します。B子どもがマットの上にいる状態で、樹脂製の縄跳びを前方向から足下まで持っていき、「跳んで!」と言います。子どもが跳び上がったらなわを回転させます。この時、子どもがマットの上から前に出て行くようでしたら、「マットの上で跳びます」と話します。CBのジャンプを繰り返します。Dジャンプがマットの上でできるようになったら、徐々に樹脂製の縄の回転を速めていきます。・・・この方法で大体のお子さんは怖がることなく普通に縄跳びができるようになります。ただ、体重がありすぎてジャンプ自体ができないお子さんは、縄跳びはできません。


Q47 図工でお面作りをする時、風船が怖い子はどうすればいいの?

児童が作ったお面・お面作りではよく風船が使われますが、風船が怖い子や障がいが重くて活動が遅いお子さんの場合、風船が使えないことがあります。風船を見るだけで怯えてしまう子は当然難しいのですが、障がいの重いお子さんの場合は、風船を怖がらない子でも風船ではお面作りは難しくなります。それは、図工の時間は週に2時間くらいしかありませんから、1〜2週間経つと風船がしぼんでしまい形を維持出来なくなるからです。 私が図工の時間にお面作りを行う場合は、ダイソーの園芸品コーナーでで売っている「パームマット」を使うようにしました。パームマットは椰子の実の繊維でできている容器のようなものです。このパームマットのパームマットを使う良い点は、風船のように割れる心配がないので風船が怖い子でも安心して使えるということと、風船のように時間が経つとしぼんでしまうことがないからです。時間を掛けてお面作りをしていても大丈夫と言うことです。貼った和紙(障子紙)や新聞紙が乾くと、簡単に引きはがすことができます。
 風船という従来の方法では困ったことも、素材を変えるだけで問題が解決できるのです。100円ショップ(ダイソー)を歩いて商品をよく見ていると、いいアイデアが浮かんできますよ。


Q48 新しい教材・教具は、どういう風にして作られるの?(制作のポイントとアイデア)

室内の様子パネル式暗幕パネル式暗幕・右の写真は、私が考えた「折りたたみ式暗幕」の最初のものです。小低で光遊びやブラックシアターやプロジェクターを使う授業を行う時に、教室には暗幕がないので暗幕のあるプレイルームから暗幕をはずして、授業の前日に複数の先生と教室に暗幕を取り付けていました。授業が終わったら、放課後に教室につけた暗幕をみんなではずして再びプレイルームに暗幕をとりつけなければならないので、これでは大変だからなんとかできないかなと考えました。ホームセンターを歩いていたら、プラスチックカラー段ボールという商品があったので、これを何枚かつなげて板状にして窓に貼ればいいだろうと考えました。板が大きいままだと収納時にがさばるので、板を縦半分にカットして板と板の間を折り畳んだ状態折ることができるように間を開けて、布ガムテープを貼るようにしました。初めは吸盤で窓ガラスに貼る形にしましたが、もっと楽にできないかと思い、厚さが1pほどで長さが180pの角材(実際には180.5p位あります。)の上下を半丸状にして、パネルに押し当てるようにして回転させるとピタッとはまることを発見しました。これで「パネル式暗幕2」が完成。この暗幕は、先生が2人いれば2分とかからないで教室に暗幕を設置することができます。暗幕をプレイルームから持ってくるのは大変だから、暗幕を使うような授業はできないと言っていた他学年の先生方も、この暗幕があることでそんな思いをしなくてもすむようになりました。何か困った時が、新しい教材・教具が生まれるときになります。自分一人ではいいアイデアが出ないときは、幾人かの先生方が集まって話せばいいアイデアが生まれてくるでしょう。


Q49 絵カードのイラストはどんなものがいいの?

犬の写真犬のイラスト・絵カードは、基礎学習や国語や算数でもよく使われるものです。絵カードのイラストについては、色々な意見があると思いますが、これが正解というものは聞いたことがありません。私の場合は、若いときには自分が好きなものをイラスト集(CD)から選んで使っていました。どういうイラストがいいのかなど考えたこともありませんでした。個人的な好みが優先ということですね。
 40代の頃からは、イラストは好みではなくより本物に近いもの・リアルなものか写真を選ぶようになりました。右の写真とイラストを見るとわかるように、イラストの犬もかわいいかもしれませんが、これは犬だとわかっているから絵に省略があっても犬と理解できるわけです。ことばの学習を始めた子ども達の場合はどうなんうどんのイラストキリンのイラストバスのイラストでしょう・・。漫画化されたような絵の犬と写真の犬(または、とてもリアルに描かれたイラストの犬)では受け取る情報が違うのではないでしょうか。
 右の「うどん」や「バス」や「キリン」のイラストは公文式のカードのものです。非常にリアルで写真のように見えます。私は写真がないときには公文の絵カードをデジカメで撮ってデータ化し、絵カードやカルタや算数・数学の授業やプリント作りで使ってきました。公文式のカードは、「食べ物」「動物」「身近な道具」「乗り物」「国旗」「記号・標識」など色々な種類があってなかなか優れた教材になっていると思います。トイレの写真ただ、コミュニケーションカードのように校内のものや施設は自分で写真を撮って使うようにしました。例えばトイレのイラストや写真と言っても、普段使っているものと違うとカードを使う子ども達が戸惑うかなと考えたからです。子ども達は、その辺は余り影響はないようでしたが、子ども達が身近なもので理解しやすくするように心掛けました。どんなイラストがいいのか私にも正解はわかりませんが、少なくとも自分の好みで選ぶのとは違う気がします。あなたならどうします?


Q50 いい笑顔は、先生も子ども達も幸せにするってどういうこと?

・先生が子ども達を叱る時(注意するとき)、そこには必ず叱る理由があります。ただ、叱りながらイライラしている自分がそこにいませんか? 私が教員生活最後の年の中3の担任だったとき、年度初めの学級の時間に「年間の目標」や「1学期の目標」を生徒に考えさせました。色々話し合っていると、女生徒のIさんから「先生の目標はなんですか?」と聞かれました。こんなことは教員生活で初めてのことでしたが、「そうだね。先生も目標を考えるか」と応え、少し考えてから『いつも笑顔でいる』を自分の目標にしました。子ども達がそれぞれの目標を画用紙に書いて黒板の上の壁に貼ったときに、私の目標も並べて貼りました。
 元々、子ども達といるときは笑顔でいることが多かったので、特に意識することもなかったのですが、いつも笑顔でいようとするとさすがに色々な場面で意識するようになります。生徒が問題をおこしたり、友達が嫌がることを何気なくやってしまった時に注意したり叱る時も、「いつも笑顔でいる」と意識していると冷静にものごとを判断でき、それほどきつく叱らなくても指導の仕方はあるなあと余裕を持って考え行動できるようになりました。
 自分のストレスを知らず知らずに子ども達にぶつけていたら、あるときにそれにはっと気づいて恥ずかしく子ども達に申し訳ない思いになるでしょう。それさえ気づかない先生は、クラスや学年にいて欲しい先生ではなく、いないほうがいい先生になってしまいます。先生も人間ですから、人間関係や仕事や家庭でストレスも溜まります。でも、笑顔でいようとすると子ども達にも自分自身にもとってもいい心の状態を作ります。いい笑顔でちょっと力みをとって、毎日コツコツとがんばりましょう。子ども達にとって先生も教材・教具ですから・・。


Q51 教室の掃除で使うのはほうきがいい?

・教室を掃除する際に使われるのは、ほうきやちりとりです。教室の隅に掃除の道具を入れる掃除用具入れがありますが、入っているのはバケツ・ほうき・ちりとり・モップくらいでしょう。一方、家庭での掃除を考えると、ほうきを使うのは玄関先の掃除や庭の掃除くらいではないでしょうか。家庭で室内の掃除の際に使う頻度が高いのは、「掃除機」です。
 掃除機のいいところはほうき、学校で覚えたことが家庭で使えることです。ほうきとは違いごみを吸い取るところがわかりやすくおもしろいことが子ども達をやる気にさせます。教室を見ると大きなごみはわかりやすいのですが、ちりやほこりはなかなか見つけずらいので、必ず掃除機をかけ忘れるスペースができます。その場合は、ティッシュ1〜2枚を細かくちぎって教室全体の床と隅にまけばいいのです。これでどこをしっかり掃除するかがわかります。障がいの重いお子さんやほうき・ちりとりを使うのが下手な子でも教室の掃除ができるようになります。
 ・・とは言え、教室に掃除機がないのが普通の状態でしょう。木工室などには置いてありまが、学校全体では数が少ないのでどの教室でも使うという訳にはいかないでしょう。私は家で使わなくなった古い掃除機を学校で使うようにしました。他のクラスでも使いたいと要望があったので、掃除機は毎日フル回転状態でしたね。学部会で「使わない掃除機があったら貸してください。」と声を掛ければ、2〜3台位は結構貸してくれるという同僚が出てきます。子ども達の実際の生活を考えて、覚えたことが家庭生活でも活かせるようにしていくことが大事ではないでしょうか。勿論、ほうきの使い方も覚えていて損はないでしょう。作業所などでは、まだほうきはよく使っているでしょうから・・。


Q52 研究授業(公開授業)は、いつもの通りでいいんですか?

・新任研などで研究授業をおこないますが、若い先生の中には「普段通りでいいんですよ。」という先輩達のアドバイスを勘違いしている人もいます。「普段通り・いつもと同じ」ということで、棚の中が乱雑なままだったり、子ども達の視線の先に色々なものが整理整頓されないまま置かれていたり等、教室環境が悪いままだったり、教材研究をしっかりおこなった様子が見られないなど、こんな普段通りでは教員としての資質を疑われても仕方がありません。こういう先生は、同僚や先輩達のアドバイスも耳に入らないでしょう。こんなことを平気でやっていると、誰も親身になってアドバイスをしてくれなくなります。周囲の先生方は、表面的には付き合ってくれても、本音は「早く別の学校に行ってくれないかな・・。」と思ってしまうでしょう。
 普段と同じということは、普段から教室環境を整え、教材研究もがんばっているというのが前提です。新任や若い先生ならば、できないことが多くて当たり前ですが、頑張っている人はみんなが知っています。頑張っている若い先生には、同世代の同僚や先輩の先生が何かの際には手を差し伸べてくれるでしょう。研究授業の時だけ力を入れて教材・教具を作っているようでは、いつもはどうなの?・・と思われるでしょうね。若い先生にとっては、毎日が研究授業のようなものです。「普段どおり・いつもどおり」の質を上げていきましょう。


Q53 「待つこと」は、どうして大事なの?

・「待つこと」って何を待つのかおわかりですか? 多分先生方はわかっていると思いますが、子ども達の活動(これからやろうとすること)をちょっと待つことです。先生方は子どもさんと1対1でついてやれるほど人数は多くありませんから、複数のお子さんの様子や学習を一人で見なければなりません。クラスやグループや学年で何か行おうとすると、当然のごとく「速く!速く!」と思ってしまいがちです。
 若い先生方の行う公開授業や研究授業などを見ていると、今動きが止まっている子に対してもう少し待ってあげれば、あの子はあの子なりに頑張れたのにと思うことが多々あります。その子なりの答や動きが間違っていたとしても、「だめ!」ではなくて「こうしたらどう?」・「今がんばっているんだね。」という声掛けや待つ姿勢があったら、その子はゆっくりかもしれないけれど自分で考える力がついていくでしょう。子ども達のゆっくりゆっくりに対して、待ってあげられる心の余裕を持っていきましょう。


Q54 面倒見のいい先生は、悪い先生?

・一般的には「面倒見がいい」ということばはプラスに感じ取られます。ここで言う面倒見がいいというのは、面倒を見すぎるということです。新任の先生が初めてのクラスや学年に入ると、障がいの重い子の面倒を献身的と言っていいほど見る場合があります。人間的にはきっといい人なんでしょう。でも、よく考えなければならないのは、常にその子のやろうとすることや思いを先回り(先取り)してやってあげてしまうと、その子は自分で考えて行動しなくなるということです。先生について行けば何も考えなくても・頑張らなくてもすむのですから、子どもにとってこんな楽なことはありません。
 本当に面倒見が良い先生とは、その子の学習や生活の課題を考えて、その子が自分で考え正しい行動ができるように支援する先生です。先生方は、子ども達のお世話係ではないのですから・・。


Q55 苦手な子こそ好きになるってどういうこと?

・教材・教具の話しではありませんが、私が特別支援学校の先生でいようと思うようになった話しです。新任で当時義務制になったばかりの養護学校に勤めるようになりましたが、養護学校というところがどういう所か殆ど知らなかったので、中学校の教員になりたいと思っていたのが本音でした。肢体不自由の学校に勤めるようになった初日のことです。小学部に配属され子ども達と初めて対面した時に、小3の車イスの筋ジスのお子さんに「こんにちわ」と言った途端、顔につばを吐かれました。膝を曲げてかがみ、子どもの視線と近づくようにしていたので、その子が吐いたつばは私の顔にビシャッとかかりました。普通そんなことがおきれば冷静さを失ってしまいますが、どうしてか自分でもわかりませんが、「こういう子こそ好きにならなければいけないんだ。」と思いました。私が担任になった学年(小3)は、養護学校が義務制になるに際して、障がいが重度・重複で就学免除(障がいが重度重複で教育の対象ではないから、学校に来なくていいということ)になってしまうような大変な子達がいる学年でした。私の顔につばを吐いた子は、知的にも重いお子さんでしたから、先生方を「おじちゃん・おばちゃん」と呼んでいました。そんな子でしたが、好きになろうと思って接していると本当に好きになるからおもしろいもです。半年くらい経つと、先生方はおじちゃん・おばちゃんだったのに、2人の先生だけは「○せんせい」と呼ばれるようになりました。その子の担当の「かね○先生」は「かーせんせ」で、別の子の担当だった私が毛塚の「けーせんせ」です。・・私はこの学年でいい同僚に恵まれ、もう中学校に行こうとは思わなくなりました。数年後この子は亡くなりましたが、忘れられないかわいい教え子のひとりです。苦手な子こそ好きになるって、案外すてきなことが待っていますよ。・・・先生になって本当に良かったと。


Q56 その教材で本当にいいの?

・普段当たり前のように思って使っている教材。どの学年でもそうしているからという理由で疑問を持たないと、もっといいものを見失うことになるかもしれません。
マラソンの周回数を教える輪ゴム 例えば、朝のマラソンで使われている周回数を知る教材。私がいた学校では、中学部は生徒が周回数を知る方法としてゴムバンドを使っていました。一方小学部の方は、ホワイトボードに児童がマグネットを貼るようにしていました。その教材は、自分の名前や顔写真カードの横にマグネットを貼ったり、児童ごとに色を変えたマグネットを貼るというものです。マグネットを使うのは、色々な学校でよく見られる光景でしょうが、これは余りいい方法(教材)だとは思えません。・・というのは、児童が1周するごとにホワイトボードの所に立ち止まって、どこにマグネットを貼ればいいのかとしばらくの間迷ってしまっているのです。
 一方、中学部のゴムバンドは体育の先生が考えた方法で、この方法がいいところは1周するごとにクラスごとのバケツや大きな箱にゴムバンドを投げ入れるだけなので、立ち止まる必要がないことです。また、走る目標が10周ならば、10本のゴムバンドを腕につければいいので、走りながらあと何本で終わるかもわかりやすいです。ゴムバンドは、ダイソーで売っている色つきの長いゴムをはさみで切ってしばっただけのもので、生徒事に色分けして使います。どちらのほうがいいのか、ちょっと考えてみるといいかもしれませんね。これが当たり前と思うと見方が狭くなってしまいます。


Q57 スプーンの指導はどうすればいいの?

握りやすくしたスプーン手づかみからスプーンへ・障がいの重い子の中には、学校に入学しても給食を手づかみで食べようとする子がいます。そういった子や握る力が弱い子のスプーン指導は、普通のスプーンを使うのではなく、握りやすい持ち手になっているスプーンを使うようにします。
 右のスプーンは、持ち手の部分を木で作ってあります。下の段の左側のスプーンは、食べ物をすくいやすいようにスプーンの首の部分を曲げてグースネックにしたものです。手首の使い方がうまくない子は、普通のスプーンのストレートの首の 形状ではうまく食べ物をすくうことができません。スプーンの首に部分がグーズネック状の形になっているとすくうことが楽になります。
 スプーンを握って使うことが普通にできるようになったら、次は普通の人が使うような持ち方を学習していきます。
下の段のスプーンは,スプーンの下側に丸棒がついているので、指が自然と丸棒を包み込むような形になります。左側の写真の生徒さんは、親指と人差し指がかさなってしまっています。そこで、スプーンの柄の上側に木でつまむようにする部分をつけて使ってもらうように改良しました。スプーンは学校用と家庭用を作り、家でも学校でも使うようにしていきました。個々の子スプーンの完成形スプーンの持ち方指の使い方が間違っているどもさんが使いやすいように工夫しながら、年齢に合わせて取り組みを考えるといいでしょう。


Q58  夏暑いのに、プールに入れる日じゃない。そんな時にいい方法はあるの?

ビールケース・夏になると各学部にプールを使う曜日や時間帯が割り当てられますが、プールのない日でも余りにも暑いと、小学部の子ども達には水遊びをさせてやりたくなるものです。水道がある中庭辺りにミニプールを膨らませて水遊びをしようとしたら、何回か使ったら穴が開いて使えなくなるといったことはありませんか? 私が小低の担任だった頃、一夏に学校のミニプールがまず破れて使えなくなり、その後、好意で持ってきてくれた先生方の家庭用のミニプールが3つダメになってしまったことがありました。ミニプールは空気を入れるのに時間がかかるのと、子ども達がすぐに穴をあけてしまうので、殆ど用をなさないことが判明?! ・・そこで同僚の先生が用意したのがビールケース。ビールケースを4〜8個四角に並べてその上にブルーシートを乗せて水を入れるる方法でした。このミニプールはよく使いましたが、準備も片付けも楽だった覚えがあります。ビールケースがない場合は、中古のタイヤでも同じように使えます。ビールケースも中古のタイヤも用意するのが難しい場合は、大きめのしっかりしたビニール袋に新聞紙を丸めてぎゅっと詰めてからビニール袋の口を閉め、それを数個作ってタイヤやビールケースの代わりにするといいですよ。子ども達が踏んでも危なくないし、準備も後片付けも簡単です。中に入れる水は数pの深さでも子ども達は喜びます。


Q59 図工・美術でランプシェードを作る時は、素材は和紙がいいの?

和紙を使ったランプシェード・図工や美術の授業で「ランプシェード」を作る時に、まず考える素材は和紙(障子紙)ですが、和紙は形が崩れやすいので、子ども達にはかなり難しい素材です。和紙を使う場合は、和紙で形を作るのではなく、色染めした和紙を透明のPP板で包むようにしていくといいでしょう。
 簡単で美しいランプシェードが作れるのは、100円ショップのダイソー等で売っている「クリアフォルダー」とアクリル絵の具との組み合わせです。アクリル絵の具をクリアフォルダーの内側に塗ると、外側から見ると光沢感のある色合いになります。また、ライトもダイソーに売っているプッシュライトを使うことができるので、材料集めも楽にできます。
段ボールのランプシェード クリアフォルダー以外では、カラー段ボール(ダイソー)も考えられますが、折る・切るに難しい面もあるので、こちらは中学部や高等部向きの素材になると思います。担当しているお子さん達の技量を考えて、どんな素材を使えばいいものが作れるか考えるといいですね。和紙・クリアフォルダー・カラー段ボール以外にもPP板やアクリル板など色々な素材がありますから、まずは先生が試作して、これなら子ども達でも作れるというものを見つけていきましょう。ちょっと変わったところでは、私が考えたグルーガンを使ったホットボンドのランプシェードもあります。ガラス細工のようで美ホットボンドで作るランプシェードしいですよ。一見難しそうに見えますが、小高以上のお子さん達であれば、障がいが特に重い子以外なら作れるでしょう。まずは、先生方が試作してみなくては授業を進められませんから、試してみてください。作り方は、「図工・美術」のページに「0からはじめる〜」で作り方や材料などが載せてありますので、参考にしてください。


Q60 「自作の教材・教具」の押さえておきたいポイントは?

・自作の教材・教具を作る際に押さえておきたいポイントはいくつかありますが、それらを全部含めて作るのはなかなか難しいでしょう。ポイントは頭の片隅に置いて、少しずつ子ども達にいいものを作れるようにしていきましょう。

@安全であること。(子どもがケガをしないような配慮が必要です。)
A子どもの課題に合ったものであること。
B色や形が美しいこと。(自作だからといって作りが雑なものは、使う側の子ども達のことを考えていないことになります。)
C収納を考える。(使わないときにはコンパクトになるといいですね。家や教材室はすぐに一杯になりますから・・。)
Dスモールステップを考えたものになっている。(これができたら次はこれという風に。)


Q61 通常のコンパスでは描けない大きな円を描く方法は?

通常のコンパスでは、ある程度の大きさの円しか描けません。教材・教具を作る際に、大きな円を描こうとする場合は、こんな方法があります。

@薄い板を用意します。(加工がしやすいので、バルサ材がいいでしょう。ホームセンターの材木関係の所に売っています。)板の長さは何10pでもいいのですが、大きな円を描くので、50p位はあるといいでしょう。これで、半径50p(直径100p)までの円が描けます。(※実際は、板の長さに2〜3pプラスした長さの板。)板の幅は、2〜3pあればよいでしょう。板の厚さは、数oあればOKです。

ペンを入れる穴をあけるA板の端に穴をきりであけます。この部分が回転する板の中心点になります。
板の真ん中に線を引きます。板の端の穴を0p(起点)にし、板に引いた線に1p間隔で印しをつけて、きりで穴をあけます。10p位のところから印しをつければいいでしょう。(それ以下の大きさの円なら、コンパスでもOKですから・・。)

龍の円を描く円を描くB穴をきりであける時は、鉛筆やボールペンの先が差し込める程度の1〜2oの穴を開けますが、そう神経質にならなくとも大丈夫です。

C円を描く。0(起点)の所の穴に画鋲やきりをさします。これで中心が決まります。描きたい大きさの所の穴に鉛筆かボールペンの先を突っ込んで、起点の画鋲やきりを片手で押さえながら、円を描きます。この方法なら、1mの円だって簡単です。特に大きな円を描く場合は、写真のように支点のきりをおさえる人とペンでぐるりと円を描く人の2人でおこなうといいでしょう。



Q62 ペンキを塗るときは、段ボール箱があるといいって何?

リースの塗装段ボール箱の活用・ペンキ塗り(はけでペンキを塗る・スプレーでペンキを塗る)をしている時に風が強いとほこりが舞い上がり、まだ乾いていないペンキにほこりやごみがついて困ることがあります。こういった時には、段ボール箱を使うと便利です。段バール箱を横向きにして、ペンキを塗る板等を段ボール箱の中に入れます。(できれば地面に直接置かずに、工作台等少し高い位置に置いた方が、よいでしょう。)風の吹いてくる方向に出入り口(?!)がこないようにしてペンキを塗れば、ゴミがペンキにつくことも減りますし、特にスプレーで塗る場合は、風の影響を余り受けないで塗ることができます。


Q63 安全な塗料ってどんなものなの?

ヨーロッパのおもちゃには、子どもたちが口にしても安全な塗料が使われていると息子が生まれた頃に聞きましたが、国内のおもちゃや教材の場合はどうなのでしょう? 普段私たちが使っている水性・油性のペンキやニスは、万が一にも安全なのかなとずっと気になっていました。以前買って読んだ木工の雑誌に「オスモカラー」(0SMO COLOR)という植物生まれの無公害塗料が出ていました。幸い私がよく行くホームセンターの「ジョイフル本田」にも売っています。子どもたちが使うものは、安全なものを選んで使っていきたいものです。技術の進歩で安全な製品が登場してきているのなら、そういったものを知って積極的に使っていきたいものですが、オスモカラーは同じ大きさの普通のペンキの缶の値段の2倍以上しますので、大きな教材に使うのではなく、子どもたちが手にとって使うような小さな教材に使うといいでしょう。(万が一に口に持っていっても大丈夫にしたいときに使うような使い方ですね。ちょっと価格が高いので、普段使いは難しいかも。)


Q64 紙皿などの円の中心を簡単に調べる方法は?

新聞紙に描いた円を切り取る新聞紙に円の縁を描く・おもちゃ作りや教材作りの際に、紙皿などの円状のものの中心を調べることに苦労することがあります。
@例えば、紙皿の中心を出したいときは、紙皿を新聞紙等の紙の上に置いて、外周を紙にペンでなぞって描きます。

A円が描かれた紙をはさみで切り取ります。

折り目で中心がわかる折るB切り取った紙を真ん中で2つ折りにします。円の半分になったものをまた、折って写真の左側のようにします。(折り目がしっかりつくように折ります。)

C紙を広げると円の真ん中が折り目の交差したところになって表れます。

千枚通しが刺さっているところが中心D紙皿に切り取った円の紙を重ねて、ペンか千枚通しのようなもので上から差し込めば、紙皿の中心が決まります。



Q65 フリーのものがあるのにイラスト集(CD・DVD)は買った方がいいの?

・今はインターネットでフリー(無料)のイラストを手に入れることができますが、教材作りや学級通信などで使える質の高いイラストはなかなかありません。学校という内容で色々なイラストのサイトを見て回ったことがありますが、使えるものは数点くらいしかなかったからです。パソコンショップには、「スクールイラスト集」などのように学校に絞った内容のCD・DVDが売っています。私はスクールイラスト集(1・2・3)と他の素材集のCDのイラストを使って学級通信や学習グループ通信・各種のカードを作りました。イラスト集のCD・DVDは9000円位して結構高いものでしたが、それを20〜30年ほぼ毎日のように使うことを考えれば、決して高いものではありません。必要に応じて何枚か持っていてもいいものです。何よりもイラストの量が多いことと質の高さが違うと言うことです。学校に絞ったイラスト集は、学習や学校生活など色々な場面を描いているので、殆どの授業で使えます。長く使うものは、多少お金がかかってもいいものを使いましょう。そのほうが結果的にプラスですから・・。


Q66 教材・教具のデータベースって、実際のところ使えるものなの?

アフリカの楽器・カリンバ・ 特別支援学校(養護学校)には、市販の教材・教具以外に先生方が工夫したたくさんの教材・教具がありますが、誰がどんな教材・教具を制作し(または所有し)、どんな風に活用しているのかは、同じ学習グループにでもいないと全くと言っていいほどわかりません。折角いい教材・教具があるのに個人しか活用ができないわけではなんだかもったいない。私が前にいた学校では、研究部が「授業の記録」のデータベースと共に「教材・教具の記録」のデータベースも作って、学校のサーバーに入れていました。「教材・教具の記録」は、教材・教具の写真、教材・教具名、教科や領域名、所持している個人名やグループ名、保管場所、連絡先、簡単な使い方を記載します。
 その学校(または学部)の教材・教具のデータベースができていれば、授業を行う際にわざわざ0から教材・教具を作らなくても、既に授業で使われて使い勝手の良い点がわかっている教材・教具を貸してもらったり貸してあげたりが可能になります。例えばパネルシアターなどの教材は、個人で持っている場合が殆どですが、それを貸してもらえれば使い方や子どもたちへの上手な提示の仕方も併せて教えてもらえることでしょう。個人で色々な教材・教具を用意することは、毎日忙しく働いてる先生方にはたいへんです。個々の先生方の力が縦・横につながれば、もっと大きな力になって子どもたちに還元されるはずです。校内にいいネットワークを構築できれば学校の力もアップすることでしょう。
 ・・・ただ、問題もあります。折角データベースが作られても、自分では全くと言っていいほど教材を作らないで、他の先生方の労作である教材・教具を利用するだけという人が出てきてしまうことです。そういう人は、教員である前に人間として問題ですね。 また、データベースができたのにも関わらず、先生方の間で教材・教具の貸し借りができないままだったら、絵に描いた餅で終わってしまいます。データベースは作るのが目的ではありません。活用できて初めて活きるものですから。


Q67 感覚遊びで、座っている子や寝ている子を自由に揺らす簡単な方法ってある?

構造空き缶・感覚遊びで子ども達の体を揺さぶろうとすると、肢体不自由の学校ではクッションチェアに座らせて揺らしたり、トランポリンに乗せて上下に揺らしたり、シーツブランコで左右に揺らしたりします。これらの方法は、揺らす先生方も力仕事で結構大変です。また、板を数本のロープで吊してそこに子どもを乗せて揺らすという、大がかりな教材・教具もあります。色々な方法・教材がありますが、もっと簡単で先生方が疲れないようなものがあればいいですよね。
 右の写真は、知的の学校で地震の揺れを簡単に体験するためのものとして考えたものです。用意するものは、スチールの空き缶数個と布ガムテープと180p×90p・厚さが12o以上のベニヤ板だけです。スチールの空き缶(2個か3個くらい)をガムテープを巻いてつなぎ、ベニヤ板の下の真ん中辺りに置くだけです。子どもが板の中心辺りに座る(クッションチェアもOK)か寝転べば、重さのバランスがとれるのでそんない力を入れなくても、左右の回転・前後・上下へと揺らすことができるようになります。ベニヤ板と空き缶だけなので、実に簡単。


Q68 彫刻刀は危なくて使えないけれど、紙版画よりいいものはないの?

スチレン版画トトロスチレン版画・小学部では、図工の時間に紙版画作りをよく行うでしょう。紙版画の良いところは、厚紙とはさみで作れるところです。小学部の小さい子ども達には、彫刻刀は危ないから使えないですよね。中学部の子ども達でも彫刻刀を使わせることは、ちょっとためらいます。実際、授業でやったことがありますが、認識力の高いお子さんでも危なっかしいことこのうえなしでした。彫刻刀は危なくて使えないけれど、紙版画よりももっと本物の版画に近いものをと考えたときには、「スチレン版画」がいいでしょう。ダイソーで売っているカラーボード(表面に紙が貼っていないタイプ)に油性ペンで絵や線を描くと、ボードが溶けて版木のようになるのです。下絵をボードの上に置いてボールペンか芯富士山の版画スチレン版画の見本がやわらかな赤鉛筆等で描くと、描いた部分が少しへこみます。そのへこんだところを油性ペンでなぞればいいだけです。下絵がない場合(特に下絵がいらない場合 )は、自由にボードに油性ペンで線や点や絵を描けばいいだけです。彫刻刀を使わなくても版画が作れるので、小学部の小さなお子さん達でも、紙版画よりもぐっと上の版画ができる方法です。


Q69 障がいを知るってどういう意味?

宇腕・足の障がいを知るマット肘を固定する教材・高等部にいた頃、同僚の先生が指導して「生い立ちの学習」を行ったことがあります。生まれてきてから高等部の生徒になるまでを保護者の方にも協力していただいて、体の成長や親の思いなどを学びます。自分のことを知るいい学習でした。自分の障がいを知ることは大事なことですが、知的障がいの子ども達は、目の不自由な子達や肢体不自由の子達のことを殆ど知りません。自分のことを知って自分や友達や家族を大事にするように、他の障がいや高齢者の生活上の問題(転倒しやすいとかものが見えにくくなるとか記憶力が落ちる等々)も知ることで他者や高齢者も大事にするようになって欲しいと思いました。右の教材・教具は、「腕や足が自由に動かせないことを体験する」ものです。肘や膝が固定されてしまうので、思うように腕が動かせなくなったり、歩くのが難しくなったりするのを体験します。実際に体でその不自由さを体験すると、生徒達もこんなにも大変なんだと理解できます。また、絵本でも色々な障がいについて知ることができます。
 障がいを持つ自分自身のことも含めて弱い立場の人のことを知ることは、卒業後の生活の中でも活きてくるでしょう。特別支援学校の子ども達が、強くたくましく、そして人に優しい子になっていって欲しいものですね。


Q70 市販品を上手く使うって、どういうこと?

公文のカード生活道具カードあおむしの人形・右の写真の「はらぺこあおむし」の人形は、本屋さんで売っていたものです。自分でこれを作ろうとするとちょっと大変。思ったよりも高いものでしたが、自分で作ったのではこれほどいいものは作れないので、買って授業で使っていました。自作にこだわらないというのは、作るのが面倒だからと売っているものを使うということではありません。自分が作るよりも「いいもの」であれば、使おうということです。公文式の各種のカードも、教材としてのレベルが高いから使いました。自分がもっといいものを作れたのであれば、使うことはなかったでしょう。
 教材は子ども達が使うものです。子ども達にできるだけ「いいもの」を使わせてあげたいものです。自作の教材・教具についても、安全で子ども達が手を伸ばしたくなるようないいものにしたいものです。・・だって、子ども達が使うんですから。


Q71 机やイスをがたがたさせて落ち着かない子がいる。どうしたらいい?

テニスボールを使ったものゴムマットをつけた例・机やイスをガタガタさせる子は、その音がおもしろかったり、先生や友達の嫌がる反応が面白かったりするから注意しても止めないということが多いです。音がおもしろいのならば、その音を消してしまえばいいのです。机やイスの脚にダイソーで売っているテニスボールをはかせたり、ホームセンターで売っている接着剤のついた軟らかいゴムの板をイスの足につけると、イスや机をガタガタ動かして音を出そうとしても殆ど音がしなくなります。「あれ?」という表情を見せて何度もやっても、以前のようにガタガタと音が出ないとそのうち諦めてしまいます。そうするともう机やイスを動かして嫌な音を出すこともなくなってきます。(勿論、手強い子もいるかもしれませんが、大体この方法でやらなくなります。・・。)


Q72 厚手のシナベニヤ板の作り方は?

板を張る道具張り合わせる2枚の板表面がつるつるしたシナベニヤ板は、テーブル等を作るときに重宝しますが、価格が高いのと厚みがあるものが手に入らないのが欠点です。お金をかけずに厚さのあるシナベニヤ板を作る方法です。

@作りたい大きさのサイズの「ベニヤ板」と「3o〜5o厚程のシナベニヤ板」を用意します。作りたいシナベニヤ板の厚みは、ベニヤ板の厚みとシナベニヤ板(3o〜5o)の厚さを足したものになります。 例:シナベニヤ板5oクランプとベニヤ板12oなら、出来上がりは、17oの厚さになります。両面をシナベニヤ板にしなくとも、目で見える方だけの片面で使えます。
(それから、木工用ボンド・クランプ4個・ベニヤ板の幅とよりやや長めの長さの板を数枚・・・8枚位)

いたの全面にボンドをのばす
手でボンドをのばすAベニヤ板にボンドを塗ります。ベニヤ板全面にまんべんなく塗るには、素手でボンドを伸ばすときれいに濡れます。手は、その後石鹸で切れにすれば大丈夫です。(ボンドを塗る前に、ベニヤ板の下に端から等間隔くらいに板を置いておきます。ベニヤ板はその板の上に載る形になるわけです。)

クランプと板を使って2枚の板を挟み込むBベニヤ板の上にシナベニヤ板を端(左右・上下)が揃うように乗せます。その後、ベニヤ板の下に敷いた板に合わせてシナベニヤ板の上にも板を乗せます。下と上の板にクランプをつけて、しっかりはさんで固定します。ベニヤ板とシナベニヤ板がその時にずれるようなら、板を左右または上下の端にぴったりとなるべく直角に当てて、木づちかかなづちで叩いてずれを直します。

C一晩おいたらできあがりです。クランプとシナベニヤ板はさむことに使った長い板をはずして終わり。


Q73 教材・教具の制作は、シンプルに考える?

体育の授業でフープスタンド・教材・教具を作る時はいくつか作り方が思い浮かんだら、なるべく簡単な方法を選ぶといいかもしれません。勿論、用途によって耐久性も考える必要はありますが・・。右の写真は、体育の授業で使った「フープ立て」です。木の台座があるほうは、小学部・中学部・高等部で使っています。板とボルト・ナットで細いフープを挟むようにしたものです。耐久性を考えると、こういった形で作るのがいいでしょう。これですと、10年位は使えると思います。一方、下の「フープ立て」のほうは、ダイソーで売っているフープを使ったフープ立てになっています。こちらは作るのは簡単で、フープの下側に水の入ったペットボトル(500ml)をフープにひもで縛ってあるだけです。ペットボトルは、フープの左右に1本ずつでも大丈夫です。(フープをすぐに倒そうとする子がいるなど、心配なときは左右に2本ずつしばりつけます。)
ペットボトルの重しフープスタンド「フープくぐり」を体育のサーキットの授業でやろうとしても、すぐに上のような木とボルト・ナットで台座を作ったものは用意出来ませんが、ペットボトルをフープにしばりつけるだけでも同じように使えます。頭をシンプルにすると、難しいものと思っていることも案外簡単にできるようになるわけです。


Q74 「連絡帳」は難しい・・。

・毎日書く「連絡帳」は、保護者と担任とをつなぐ大事なものですが、連絡帳が原因でトラブルがおこることもあります。保護者の方々といい関係がずっと続いていればいいのですが、学年が変わったりして保護者が変わるときは、ちょっと注意が必要です。連絡帳は、クラス事に対応がバラバラにならないように学年で項目を決め、印刷したものを使うことが殆どでしょう。下校前の短時間で書かなければならないので、チェックだけで済むものは○印等を書けばすむようにしてありします。
 問題は、その日のお子さんの様子を記入する文章です。できるだけその子のプラス面を見て書いてあげようとすると、保護者によっては「うちの子はそんなにいいことばかりの子じゃない。ちゃんと見ているのか?」ということになってしまいます。親の心子知らずならぬ、先生の心親知らず・・のようなことになってしまいます。勿論、その日あった悪いことや○○ができない等、問題点ばかり書いていれば、子どもに対する視線が冷たいのではないかと思われてしまいます。「○○ができない」などということは、保護者は充分知っていることです。今更何を言っているのという感じで受け止めるでしょう。
 保護者が安心し、先生を信頼してくれる連絡帳の書き方は、「その子のプラス面を評価するのが基本ですが、いいことばかり書かないというバランスも必要」・「問題があった場合は、こうしていけば良くなると思いますという方向性を示し、保護者の協力もお願いする。」・「保護者の立場になって考える」ということではないでしょうか・・。
 書くスペースが少なくて子ども達の学習の様子や担任の思いが伝えきれないという場合は、「クラス通信」を週に1回とか2週で1回は出していくようにするといいでしょう。私はクラス通信を週に1回は出して、行事があった場合は特集も出すようにしましたので、大体週に2回は平均して出していた感じがします。忙しいからといって、2週間に1回程度の通信さえ無理などと思っていたら、いつまでたっても保護者の気持ちがわからないままの先生で終わってしまいますよ。


Q75 簡単に作れる「的当て用の的」ってあるの?

的当て用の的簡単にできる的ダブルクリップ・ボール投げで的当てをする時に的を用意しますが、最も簡単な的の作り方は的用の板(ダイソーで売っているカラーボードや厚画用紙など)と洗濯ばさみ2本かダブルクリップを2本を用意するだけです。板の下側にダブルクリップか洗濯ばさみをはさむだけ的は完成です。これで板はしっかり立ちます。バランスが悪いようなときには、ダブルクリップや洗濯ばさみを別のものに変えて試します。写真のガチャピン・ムックの的は、ダイソーで売っていたカラーボードにガチャピン・ムックの樹脂製のまな板を両面テープで貼っただけです。これ以上簡単な的はないでしょう。的を大きくするときは、ダブルクリックや洗濯ばさみを大きいものにすればOKです。


Q76 大学の先生は偉いの?

・大学の先生は偉いの?・・と、喧嘩を売っているわけではありません。大学の先生・研究所の先生・教育センターの先生という肩書きが偉いわけではないということです。人間的に偉い先生もいれば、人間的には偉くない傲慢な先生もいるからです。私は肢体不自由の学校と知的障がいの学校で10数年研究部長をしていたので、毎年数人の大学や研究所の先生に研修会や講演会に来て頂いて、色々な話しをする機会がありました。その先生の書かれた本が良かったので講演をお願いしたら、話しが全く面白くなかったり、内容が基礎的すぎてベテランの先生方には退屈であったり、現場を余り知らないのではないかと思う困った先生もいました。そういった先生とは違って、謙虚で子ども達のことを情熱を持ってわかりやすく語る姿に頭が下がる思いがした先生もいました。
 特別支援学校での勤務年数が少ない若い先生方の中には、大学の教授や教育センターの先生という権威に弱い人もいるのではないでしょうか・・。大学や研究所の先生が偉いのではないのです。偉い先生もいれば偉くない先生もいるということを頭の片隅に置いておきましょう。本物を見る目を持たないと、いい先生には出会えないでしょうから。


Q77 歩行が不安定な子には、腕を持って支えない・・?

・肢体不自由の子や知的障がいの重い子で、体幹がしっかりしていないせいかふらふらと歩く子や発作を起こして急に倒れる子がいます。そうするとその子についている先生は、その子の片腕を自分の両腕でしっかりつかんで支えようとします。そうすることは万が一その子が転倒しそうになった時に、腕だけでなく肩関節に大きな負担を掛けてしまうことになってしまいます。子どもの腕をつかんで支えている様子を見ると、大体子どもの腕が持ち上げられて肩も不自然に上がっています。そんな状態でつまずいたり転んだりしたら、支えられないだけでなく、肩へののダメージも大きいでしょう。
 そういった子への支え方は、体をやや密着した状態でその子の背中側に手を伸ばして、腰のベルトを片手でしっかりつかむようにします。こうすると支えられる子も楽ですし、万が一転倒しそうになった時もすばやく対処できます。ただ、腕力のない女性の場合は、子どもと一緒に倒れやすくなるのでお勧めできません。発作のある子や歩行が不安定なお子さんには、男性教員がつくのがいいでしょう。子どもをケガさせると保護者から信頼されなくなるので、学年やクラスの担任間でよく話し合っておくといいですね。


Q78 教材・教具を簡単に作る方法は?

運筆練習盤人形積み・教材作りは大変な面もありますが、100円ショップ(ダイソー)で売っているものを組み合わせるだけでも作れます。右の写真は「人形の色合わせ」ですが、材料はダイソーで売っていた大きめのトレイ・まな板・バランス人形という商品だけです。バランス人形の下側ををまな板にボンドで貼っただけで完成です。その隣の「ダルマ積み」は売っていたダルマ落としの一番下側をボンドで貼っただけです。一番右側の「運筆れんしゅう」は、ダイソーで売っていたホワイトボードに板状のマグネットシートをはさみで切って貼っただけです。
オーシャンドラムなぞり練習 下の写真は、「運筆練習」です。ダイソーに売っていた厚画用紙をはさみで切って、裏側に板状のマグネットシートを貼っただけです。赤いものは「オーシャンドラム」(波の音を出す楽器)でダイソーに売っていた竹製のざるを蓋をするような形にして2個使い、中に小豆を入れただけです。児童が踏んでいるのは高さの調整台。漫画雑誌の少年ジャンプを重ねて布ガムテープを巻いてあるだけです。身近にあるものを使ったり、100円ショップ(ダイソー)の商品を組み合わせることで、教材・教具は割合簡単に作れます。


Q79 捨てないでとっておくと教材作りに使えるものって何?

和紙のトレイ高さの調整台・家庭にあるもので普段捨ててしまうものでも、ものによっては教材作りの材料になるものがあります。使おうと思ったらなかったということが多いので、邪魔にならない程度はとっておくといいでしょう。ラップの紙の芯・プリンのカップ・空のペットボトル・スチール製の空き缶・キャップ付きの空き缶・スーパーのトレイ・牛乳パック・漫画雑誌辺りは、色々な教材や図工の作品見本の材料になります。
スポンジのスタンプ手作り楽器カズー 右上の写真は、背の低い子用の高さの調整台(雑誌を使ってっています。)と和紙のトレイ(型枠としてスーパーのトレイを使っています。)。下側の写真は、手作りの楽器「カズー」(ラップの紙の芯を使っています。)とスポンジのスタンプ(プリンカップを使っています。)です。これ以外にも「ペットボトルの浮き輪」「玉入れ」「地震体験盤」などたくさんありますが、きりがないので紹介はこの辺で。
 色々作れることがわかりましたか? ・・・へーそうなんだと思われたでしょう。案外色々なものが教材に化けていきますよ。


Q80 靴紐を結べない子の指導は?

・靴紐の結び方を覚えてもらうことは、とても難しいことです。色々なひも結びの教材を用意しても、児童生徒ができるようになった例は少ないです。障がいの程度が大きく影響するので一概には言えませんが、ある程度認識力が高くないと無理なのかもしれません。ここで「こうするといいですよ」と言えないのが残念です。
 靴紐が結べない子はどうしたらいいのかと考えると、誰でも思いつくのはマジックテープやジッパー付きの靴ですね。数ヶ月ひも結びにチャレンジしてもできない場合は、ひも結びにはこだわらなくていいと思います。障がいのない人達でも、高齢者になれば色々な面で障がいを抱えるようになり、今できることを最大限活かすような生活になるわけですから・・。


Q81 玉入れの缶が、いい音がしない時は?

缶の底に足をつけて空間を作る・「玉入れ」の教材を作る時に、玉が缶の底に落ちた時にいい音がするように金属製の缶(例えばお茶の缶や100円ショップで売っている缶など)を使います。いい音がすることで子どもたちにやる気がおきるようにしようとしているわけですが、実際に玉を入れると期待どおりの音はしません。いい音を出すには、缶の底が缶を置く机等から少し浮くようにしなければなりません。缶の底の4ン箇所に小さい厚紙(1p厚くらい)を貼り付けることで隙間を作ってあげれば、「カーン」といういい音が出せます。「いい音がちっとも出ない」と悩んでいる時には、この方法を試してみてはいかがでしょうか・・。尚、いい音が出る缶はスチール製のもので、100円ショップでよく売っているアルミ製のものはいい音はでませんから、買う際にスチール製かアルミ製かを確認するといいでしょう。


Q82 クリアファイル(クリアフォルダー)やビニール傘に色を塗りたい時は?

ランプシェードランプシェード・クリアフォルダーやビニール、プラコップなどの樹脂製品やガラスコップなどのガラス製品には、水彩絵の具やポスターカラーでは色を塗ることはできません。ポスターカラーの場合は、食器洗いの洗剤を少量混ぜることで描けるようになりますが、一番にいいのは「アクリル絵の具」を使うことです。アクリル絵の具は専門店で買うと結構しますが、ダイソーで売っているもので大丈夫です。クリアフォルダーやビニールに塗る場合は、クリアフォルダー等の表側の面ではなく裏側の面に塗るといいでしょう。こうすると表側から見たときに光沢のあるきれいな仕上がりになります。ランプシェードなど作品作りで役立ちますから、一度試してみるといいですよ。まずは先生方が自分で試作ををしないと授業にはなりませんから。


Q83 今まで通りに疑問を持つ?

・「今まで通り」に疑問を持つというのは、例えばこんなことです。避難訓練や不審者対応訓練は毎年行われるもので、担当する分掌の係でしっかり検討されているものですが、毎年内容が変わらないのはどうしてでしょう。内容が改訂する必要がないほどいいものにになっているか、担当者が例年通りでいいと思っているからではないでしょうか・・。もうこれでいいといことは、殆どの事柄においてありません。避難訓練では、火災の発生場所が毎年同じだったり、地震で避難に使えなくなる場所が同じだったりしたら、実際の火災や地震で対応できなくなるでしょう。どんなことがおきるかわからない部分が多い火災や地震に対応する為には、色々なシチュエーションを考えなければなりませんから、毎年同じと言うことはありえない筈です。不審者対応訓練では、通報があった時に各階の廊下を見守る係がいますが、さすまたを持っていても一人の教員では、刃物を持った不審者には対応できないのに、各階1名のままの計画では殆ど意味がないと言えるでしょう。訓練の為の訓練になっていないか、今まで通りでいいのか疑問を持たないと、「あの時○○しておけば良かった」と後悔することになります。宿泊学習や校外学習などを検討するときにも、前年度の計画案は参考にするとしても、今まで通りという安易な考えは捨てましょう。後悔するのは先生ですが、被害に遭うのは守らなければならない子ども達ですから。今まで通りを転換させるのは、若い先生方の新鮮な発想力です。


Q84 

Q85 他の学部・学年の先生と話しをするのはいいの?

・学年が違うと学部会くらいでしか他学年の先生方と話す機会がないという先生はいませんか? ましてや他学部の先生とは殆ど話をしたこととがないという人はもっと多いかもしれませんね。学部という縦のつながりが、さほどないのが特別支援学校です。つながりができるのは、分掌会や委員会や同期の先生方くらいでしょうね。特別支援学校は、職員数が多いというのもつながりが少ない理由かもしれません。私が勤務した肢体不自由校は職員数が160名位はいましたから・・。
 他学年には、今あなたが担任しているお子さんの元の担任だった先生や信頼できる・尊敬できる先生がいるかもしれません。そんな先生方と話すことは、あなたが担任している子の指導に役立つし、あなた自身の勉強にもきっとなるでしょう。また、他学部の先生方と話すと、自分たちが教えている子ども達が他学部でどんな学習内容を行うか・行ってきたかがわかります。子ども達にとって一番大事なものはコミュニケーションの力ですが、大人だって同じですから。


Q86 保健室との連携って何?

歯磨き練習・保健室というと、身体測定の時と生徒が発作をおこしたときくらいしかお世話になっていない先生もいるのではないでしょうか。たまに用もないのに保健室にちょくちょく顔を出して、保健室をたまり場のようにしてしまい注意されている先生も見かけますが・・。
 保健室との連携とは、肥満対策等で連携をとると言うことだけではなく、歯磨き指導やインフルエンザやアレルギーの問題等、考えられる子ども達の健康面の全般について、時々話しを聞くようにすることと担当している子ども達の情報を伝えることです。保健室の先生方は、私たち教員よりもそういった方面の知識が豊富ですから、わからない点やこれから気を付けなければならない点など、色々と教えてもらうといいでしょう。折角、保健室があるのですから、お互いに活かし合える良い関係を作っていきましょう。


Q87 遊具の点検は誰がするの?

ブランコの金具のはずれ防止・中庭や校庭にあるブランコなどの固定遊具の点検は、誰がしているかご存じですか? 分掌の中にある係の先生がやっているはずですが、多分学期に1〜2回くらいでしょう。新しい固定遊具に関しては、それを設置する際に事務室の方が立ち会ってチェックしている筈です。そんな遊具ですが、時々よく見てみることが大事です。係であるかどうかは関係ありません。先生達が担任している子ども達が毎日のように使うものですから、危ないところがないかチェックすべきです。固定遊具の殆どは、その学校が作られたときに設置されたものです。創立30年の学校であれば、固定遊具も取り付けられてから30年間は経っていると言うことです。毎日チェックする必要はありませんが、木が腐っていないか・ボルトナットがゆるんでいないか・金属部分が腐食していないか等、たまにはチェックしていきましょう。気をつければ防げる事故って結構ありますよ。写真の金具は、ブランコのロープを引っかけるものです。カラビナのようになっているので、小さいな子でもバーをちょっと押すと閉じている部分があいてしまいます。そこでビニールの管を縦に切ったものを入れてビニールテープで固定したものです。こうすることで子ども達が触っても危険がなくなりました。


Q88 震災を考える?

リストバンド笛・あの東北の震災や各地でおこる洪水や土砂災害等から、私たちはどうやって子ども達を守れば良いのでしょう。これから確実に来ると言われている巨大地震や火山の噴火は、その被害の甚大さからとても人ごととは思えません。学校では震災マニュアルを策定し訓練も以前よりもしっかり行われているように思われますが、震災は今日・明日くるかもわかりません。教室の棚の上にものを置かない・避難経路になる場所にものを置かないなどと言うことは、みんながわかっていることですが、それが徹底されていなければ絵に描いた餅。身元を示すカードがあっても、いざというときに子ども達が身につけていなければ役立ちません。スクールバスの中にいれば、とりあえず連絡も取れて一安心、といえるのでしょうか。考え出したらきりがないことです。でも、子ども達を預かっている先生方が考えなければ、子ども達を守ってやれないという自覚を持ちましょう。子どもを守るのは大人の役目ですから。


Q89 インフルエンザの予防接種

・冬になるとインフルエンザがはやりだし、クラスの子ども達がポツポツと休むようになります。中には高熱を出しているにも関わらず、保護者が登校させてしまうという困ったケースも見られます。子ども達については、各家庭の判断で予防接種を行うわけですから、担任といえども口は出せません。保健室から「保健室だより」等で広報してもらうくらいしかできないでしょう。
 ここで言うインフルエンザの予防接種とは、先生方についてです。お金はかかるし面倒くさいなどという理由で予防接種を受けていなかった為に、子ども達に先生のインフルエンザがうつったらどうでしょう。それだけで保護者からの信頼は失墜です。自分が保護者だったらと考えればわかることです。子ども達のことを常に考えて、まずは先生がインフルエンザの予防接種を受けましょう。それでもインフルエンザにかかってしまった場合は、同僚も保護者もわかってくれます。


Q90 初めからできる人はいない?

・あの先生は、教育課程に詳しい・あの先生は教材作りがとてもうまい・あの先生は英会話ができる等々、・・・自分は何もできないと感じている若い先生はいませんか。でも、先生になれたのは試験勉強を頑張ったからでしょう。子どもの頃、自転車に乗れるようになったのは、何度も転んで乗れるようになったからでしょう。はじめから何でもできる人なんていませんよ。
 教材作りで言えば、私の場合は見よう見まねで作り出しても、初めの頃は失敗ばかりでした。なんとかいいものが作れるようになってきたのは、40位作った頃でしょうか。失敗しても、こうすれば失敗するとわかるだけでも収穫です。コツコツと学び続けて「詳しい人・うまい人・わかる人」になるしかありません。今がんばっていることが数年先に実をつけるのですから、がんばれるってとてもいいものです。「継続は力なり」・・・、わかっているけれど難しい。


Q91 何を言うかではなく、誰が言うかが大事?

・職員会議や学部会・学年会・分掌会・学習グループ等の会議で正論を述べても、言っている人がみんなから信頼されていない先生だったら、誰も「そうだよね。」とは思ってはくれません。間違ったことを言っていなくても、普段の行いがよくない・仕事に手抜きがある・同僚を馬鹿にしている・子ども達を叱ってばかりいる先生が言うことなど、聞く耳持たずということになります。
 それとは逆に、みんなが大変だからやりたくないようなことを言っても、その意見には反対だという先生がいても、「○○先生が言うなら耳を傾けましょう。」と、言われる先生がいます。その先生の人柄や仕事ぶりをみんなが知っているからです。多少の知識や知恵があればだれでも正論を言うことはできますが、人柄や仕事ぶりは、一朝一夕に繕えるようなものではありません。若い先生方には、いつか「○○先生が言うのだったら・・・」と言われるような先生になっていって欲しいものです。謙虚で誠実で子ども達を大事にする先生に。


Q92 講演会の聴き方は?

・学校では、大学の先生や教育センター等の先生を呼んで毎年講演会や研修会が行われていますが、あなたの心に残った講演や研修会はどれだけありますか? 講演や研修会で話しを聞いて、その結果いい授業ができるようになったということがありましたか?
 ・・ちょっとシビアな話になりましたが、私の経験から言うと、そういった経験は少なかったです。勿論、0ではありませんが、少なかったことは本当のことです。それは何故かというと、講演の時間が2時間くらいと短いことも一つの要因です。短い時間でテーマに沿って話していると、最低限の事柄しか伝えることができません。どんなに優秀な講師の先生でも、時間が足りないのでは伝えたいこともイ・ロ・ハのイで終わってしまうのです。中身の濃い話しが始まる前に講演が終わってしまうのですから、心に残るはずがありません。また、講演慣れした大学の先生といえども、新任の先生からベテランの40・50代の先生まで、みんなが良かったと思えるような講演や研修は難しいでしょう。大体真ん中のレベルを想定してお話ししているようですが、基礎・基本のようなお話しや本を読めばわかるような話が多いのです。研究部で講演会後にアンケートを採ると、20代の先生方には好評でも、30代以上になると不評という結果になってしまいます。
 講演会や研修会は、そのテーマに関しての学びの第一歩と捉えるのが良いと思います。若い先生方は、講演が物足りなかったというレベルまでいくように勉強していきましょう。基礎・基本を聞いて感心しているようでは、まだまだ・・。


Q93 保護者との面談を上手に行うには?

・学期ごとに保護者との面談が行われますが、「上手に」というのは、「うまく」というテクニックではではありません。予め伝えたいことを整理しておき、最低限伝えることを忘れないようにすることがまず大事です。保護者の立場から考えると、「家の子のことで何を言われるのだろう?」と心配してくることが多いようです。保護者がリラックスできるように笑顔で対し、基本的には聞くことに徹します。学習に関して話す場合は、ただ「がんばってましたよ。」では何をどう頑張っていたかがわかりませんから、課題とそのことに関してどうがんばってきて変化(成長)したかを話してあげるといいでしょう。担任が子どもの成長を親のように喜んでくれているということが伝われば、保護者の方々は安心し、いい先生に出会えたと感じてくれます。先生が緊張し過ぎていると、その緊張が保護者に伝染しますから、まずはスマイル・スマイルでいきましょう。


Q94 最新の情報を知っている?

・保護者の中には、並の教員以上に最新の特別支援教育の情報を広く深く知っている方がいます。それは、インターネットの普及や保護者の方々の高学歴化もあるのでしょう。まれにそういった知識を武器にしようとする困った保護者がいますが、殆どの方は、お子さんの障がいについて必死になって勉強してきた方々です。学校では、保護者との話し合いの中でわからないことがあったら、「わかりません。」とは言わないで、「後で必ずお伝え(お答え)します。」と話すようにしているところが多いのではないでしょうか。
 その方針は間違いではありませんが、何度もそういったことがあると、保護者は「この先生は、勉強していないんだ。」と思ってしまいます。あなたがもし保護者だったら、同じように感じるでしょう。先生の仕事は兎に角忙しいのが現状ですが、保護者から信頼されるようになりたいのであれば、最新の情報についても知っていなければなりません。先生になったばかりだから、若いから、臨採だからでは通用しません。保護者から見ればみんな先生なのですから・・。 保護者の方々もいい先生とばかりお付き合い出来たわけではありません。「今度こそいい先生と出会えたらいいなあ」と切ない望みを持っているんです。
 新しい情報は、特別支援教育関係の月刊誌や季刊誌から得るといいでしょう。今話題になっていることやこれから話題になるであろうことや特別支援教育の現場が抱える課題や指導法などの情報が書かれています。それらをしっかり読み込んでいれば、「この先生は勉強しているなあ」と保護者の方も安心できるでしょう。自分の為、子ども達のためにも、最新情報は知っているべきです。


Q95 「学級通信」で気を付けることは何?

・「学年通信」は、次週の「1週間の学習の予定表」や行事等のお知らせで紙面が一杯になっているものが多いでしょう。一方、学級通信は、クラスでの出来事や学習時のお子さん達の様子を伝えるものが多いのではないでしょうか。 学級通信で留意すべきことは、子ども達の様子を伝える際には、どの子も等しく取り上げることと写真はクラスの全員が通信の中に映っていることです。子どもごとに文章の量が違いすぎないようにし、写真に写っていない子が一人でもいないようにすることです。また、子どもの名前を間違えないことも当たり前のようですが大事なことです。
 それらのことをミスってしまうと、その子の保護者は「あれ?」と思ったり、「どうして?」と思ってしまいます。寛大な保護者の方であればその場は許してくれるでしょうが、2度目はそうはいきません。こうお話しするとビビってしまう先生もいるかもしれませんが、そんなにビビる必要はありません。ちゃんとチェックすれば名前が間違っていることや写真に○○さんが写っていないなどは、すぐにわかることですから。ミスが出るのは大体「通信」作りの仕事が遅くなって、チェックが充分にできない状態でおこります。仕事は早め早めにするように普段から心掛けましょう。保護者との信頼関係を築く一つの手段である「学級通信」で、信頼関係を壊さないようにするために。


Q96 知ることで怖くなくなる?

・新任の先生や若い先生は、学校の中での色々な仕事が初めてづくしでしょう。初めて全体の朝会でマイクを握って発言したり、分掌でやったことのない係になったり、学年で遠足や校外宿泊学習の係になったりと・・。右も左も何もわからないところにぽつりと置いて行かれたような怖さを感じるかもしれませんね。誰でも最初はそうです。わかっていることであれば手順が浮かんでコツコツやるだけですが、何から始めれば良いのかわからなかったら、お先真っ暗ですもの。
 わからないことは、わかる先輩にどんどん聞いていくだけです。自分なりにわからないことを整理してから聞けるといいのですが、それさえわからない場合もありますよね。遠慮しないでどんどん聞けば良いのです。そうやってひとつひとつ仕事を経験していけば、手順もやることもやがてわかるようになり、わからなくて怖いとは思わなくなります。怖がっていないで飛び込む気持ちで人が嫌がる係もやってみると、どんどんわかることが増えて自信と実力(仕事力)がつきます。心配している暇があったら、まずは先輩から聞く・教えてもらいましょう。あなたのそばには、人間的に優れたいい先輩がたくさんいるでしょう?


Q97 子ども達が言うことを聞く先生は、怖い先生? やさしい先生?

・最近はさすがに少なくなってきた気がしますが、以前はよく体育の先生や男の先生で、子ども達に大声を出したりする威圧的な態度をとる人がいました。それはどうしてかというと、暴れたりする子が今よりもとても多かったこともあります。今の子ども達は、総じて昔よりも穏やかな子が多い感じがします。
 ・・・怖い先生の言うことは、暴れるような子もその先生が怖いからよく言うことを聞いていました。聞いていたと言うより従っていたと言った方がいでしょう。ベテランにそういった先生がいると、若い先生で勘違いをしてしまう先生が出てきます。子どもは正直で、怖い人の言うことには聞きますが、優しい人の言うことは聞かなくなってしまうからです。「自分が言えば言うことを聞く」などと勘違いしてしまうわけです。子どもは大人の顔色をうかがっているだけで、その先生が正しいから言うことを聞いているのではありません。子ども達を威圧して従わせていることに気づかず、おかしな自信を持つ教員を「バカ」と言うのです。若い先生は、バカになったりバカを見習わないように。子ども達を大事にする優しい先生が、若い先生方のお手本ですよ。


Q98 体育のリーダーの先生の在り方は?

・公開授業で小低の体育の授業を見たときのことです。リーダーの若い男の先生を中心に子ども達が大きな輪になって座っています。子ども達の側には先生がいて、先生1人につき子ども達が4〜5名。リーダーの男の先生の声掛けでストレッチのように体を動かしますが、子ども達についている女の先生の数が少ないので、両側の子くらいしか見てあげることしかできません。子ども達がリーダーの先生の模範の動きができるまで、若い男のリーダーの先生はただ退屈そうにしているだけでした。これではリーダーでもなんでもありません。声掛けして流れを作るだけがリーダーの役割だと思っているのなら、話しになりません。
 子ども達についている先生方の手が足りないわけですから、当然殆どの子が模範の動きなど見ていないしやろうともしていないのです。リーダー役の若い男の先生がするべきことは、活動の流れを作りつつ全体の様子を見て、手が足りないところに出向いて先生方の補助を行うことです。ぼーっとしているだけで、子ども達みんなの動きができるのをただ待つのではリーダー役は務まらないでしょう。


Q99 担任間でフォローし合うって、たとえばどんな場面で?

・担任同士が力を合わせて学級経営をするのは当然のことですが、よく叱る先生とそんなには叱らない先生が組むとちょっと難しいこともあります。叱られた子を余り叱らない先生が後でフォローするってありませんか? それとは別のことになりますが、クラスの中で知的に高い子がそうでない子を馬鹿にするような態度を頻繁に取るような場合は、その都度注意しても中々改まらない場合があります。叱り役となだめる役を予め担任同士で話し合っておき、普段の叱り方ではない強い叱り方をすることがありました。この場合、叱り役という損な役は普段余り叱らない方の先生が務めます。大体の子が泣き出してしまうくらい叱りますが、普段よく叱る先生がフォロー役をすることで、子どもは素直に友達や叱った先生に謝ることができるようになり、その後はクラスの雰囲気もがらりと変わっていきます。これは、子どもが泣くほど叱りなさいということではありません。叱る役・フォローする役を事前に話し合って役割分担するのも効果があるということです。よく叱る先生も、自分はいつも損な役回りだなあと思っているかもしれませんよ。


Q100 校外では、子どもから目を離さないのは当たり前?

・学校内は勿論のことですが、校外に出た場合は子ども達から目を離さないのは当たり前のことです。校外に出る際には、先生方も気を張って子ども達が事故に遭わないように、どこかへ行ってしまわないようにしますが、落とし穴があるということを知っておきましょう。・・それは、子ども達の誰かが落ちていたものを口に入れてしまったり、急に走り出してしまったり、発作をおこしたりしたり、転んでケガをしたりしたときに表れます。
 先生方全員の注意がその子の方に一瞬いったときに、別の子がいなくなってしまうということがおこるのです。何かがおこっても、全体に目を配らせるということを心掛けましょう。そうすることで、遠足等で警察まで呼んでいなくなった子どもを探すというようなことがなくなりますよ。


Q101 子ども達は見抜いている。何を?

・普段は子ども達の前で笑顔でいることもなく、子ども達の相手もしないし、時々保護者の悪口を言う先生っていますよね。そういう先生に限って、公開授業や授業参観の日だけは、やたら子ども達や保護者に愛想がいいというのを見たことはありませんか?  普段から子ども達を大事にしているあなたが、そういう先生を見ると腹立たしいでしょう。保護者の中には、そういった偽物のいい先生にだまされてしまう方もいます。・・でも、子ども達は障がいがあって話しが上手にできないような子でも、自分のことを大切にしてくれている先生と偽物の先生とをしっかりと見分けています。むしろ大人(保護者)よりも見抜く力はあるかもしれません。大人におべんちゃらは効いても、子どもには効きませんから。にせものの先生のやっていることなど気にかけず、あなたはいつものあなたでいいんです。


Q102 サンダル履きは非常識?

・小学部では余り見ませんが、高等部の先生の中に校内でサンダル履きの先生を見かけることがあります。特別支援学校では、子ども達がどういった行動をとるかわからないことも多いので、先生方は校内を走らなければならない場面や急に姿勢を変える場面がおきることもあります。サンダル履きでは、そういった場面に対応出来ないでしょうし、体育の指導や不審者の対応・地震の時の対応などではどうするのでしょう。サンダル履きをしているのは、若い先生方ではなくベテランと言われる人が多いのですが、若い先生方は間違ったことを真似ないようにしましょう。工事現場で働く人が安全靴を履いているように、その場その場にふさわしい格好がありますから。サンダル履きは、特別支援学校にはふさわしくありません。今時、そんな先生はいないでしょうが・・。


Q103 給食の係活動を考える?

・給食の係活動を考える時に、配膳はどうしていますか? ワゴンの運搬は? クラスの子どもの実態を考えて係を割り振っているのでしょうね。ただ、考えなければいけないのは、数の対応ができない子には配膳を任せられないとか、どこへ行ってしまうかわからない子にはワゴンの運搬は任せられないというのは、学習のチャンスを捨てているようなものだということです。給食の係活動は、毎日繰り返し行われるものですから、やる内容を身につけやすいものです。数の対応ができない子には、毎日みんなの机にパンや牛乳やおかずなどをひとつずつ配る良い勉強になります。ワゴンの運搬は、周囲の状況を見てぶつけないように丁寧に運ばなければなりません。初めは先生が一緒について行い、徐々に少し離れた位置で見守るようにしていけば、最後にはその子に任せることができるようになるでしょう。ちゃんと教室まで運ばなければ、みんなが大好きな給食を食べられないわけですから、真剣になりますよ。係活動はできる子に任せるのではなく、できない子にこそ任せるいいチャンスなのです。


Q104 トイレ指導は小学部で身につける?

・中学部や高等部になっても、男子トイレでズボンやジャージを下げてお尻を出して排尿をしている子ども達がいます。各学部でもトイレ指導は行いますが、トイレ指導は小学部の段階でしっかり身につけることが大事になります。特に小低でしっかり行っていかないと、上の学年に上がるほど指導が入りづらくなるからです。小低の段階でしたら、男の子のトイレ指導にも女性の教員がつけるでしょうから、他学部よりも指導に手が回りやすくなります。小学部の男性教員数は少ないでしょうから、男の先生頼りというわけにはいかないのです。男の先生が少ないのに、児童は男子の方が多いというパターンはよくあることです。中学部に上がるのにお尻を出して排尿している子どもがいると、「小学部は何をやっているんだ・・。」と中学部の先生方に思われますよ。


Q105 特別支援学校の常識は、一般社会の非常識?

・修学旅行や遠足に行くと「あっ困った」という場面に出会うことがあります。パーキングエリアのトイレや公園等のトイレで、中学部や高等部の体の大きな生徒達が、ズボンやジャージを下まで下げてしまいお尻を丸出しの状態で排尿をしている姿を一般の方が不思議な顔をしてじーっと見ている時です。また、移動の際に大きな子ども達が全員手をつないで歩いている様子に一般の方々が「えっ、なんで?」という表情を見せるとき。学校内では見慣れた風景であっても、社会では違和感を持つ風景になります。見慣れたということに気を付けなければ、学校内の常識は一般社会での非常識になってしまうでしょう。子ども達は卒業してからの人生の方が遙かに長いのですから・・。


Q106 教え子の新しい担任には気を使う?

・自分が教えた可愛い子どもたちのことは気になるものです。新しくその子の担任になった先生には、その子の指導のポイントや実態や課題など伝えたいことがたくさんあるでしょう。でも、ちょっと待って・・。新しい担任からの視点も考えましょう。初めて接するその子のことを知りたいと思い、元担任に声をかけてくるような新しい担任であれば、良い関係でその子の為になる情報交換ができるでしょうが、元担任であるあなたが、「自分は誰よりもあの子のことを知っているんだ・あの子をかわいがっていたのは自分だ・・」などとアピールするような真似をしたならば、新しい担任にとっては困った存在でしかありません。そういう先生って結構いますよね。そういった先生にならないようにしましょう。新しい担任の力量が心配でも、「何かわからないことがあったら聞いてください。」と声をかける程度にしましょう。新しい担任も元担任も、子どもの為にという思いでいないとその子のためにはなりませんから。


Q107 視聴覚機器に強くなる?

学習の様子・視聴覚機器と言ってもパソコンに関してはそう問題はないでしょう。昔とは違い、誰もがパソコンを持っていたり使っている時代ですから・・。学校ではプロジェクターや電子黒板を使うことがありますが、「触らない・使わない」先生には無縁の機器です。ただ、使ったことがなければ、当然使い方はわかりません。一度でも使えば「あ、わかった」と言うくらいのものですが、知っていれば国語・算数・数学・特別活動等の授業にもどんどん使えるものです。知らないから使えないでは勿体ないですよ。わかる人に聞けばいいやと思っていたら、いつまでたっても「わかる・使える」先生にはなりませんから。


Q108 図工・美術は、ワンダーランド?

吸水スポンジのサボテン・図工・美術では、絵を描くときに画用紙を使います。でも、子ども達が小さければ小さいほど、絵や模様など好きに描く場合は画用紙では小さすぎます。もっと自由に大胆に描かせたかったら、模造紙など大きい紙を使いましょう。場合によっては、広げた新聞紙を何枚か貼り合わせたものでもいいのです。絵の具もポスターカラーや水彩絵の具でなくてもいいでしょう。墨やペンキやアクリル絵の具など、普段と違うものを使ってみましょう。縄・ひも・紙・新聞紙・段ボール・アクリル板・カラーボード・色のついた砂、針金・木の小枝・どんぐり・野菜・吸水スポンジ・スポンジ・ホットボンド・紅葉した木の葉・スズランテープ等々、素材になるものは限りなくあります。何を使っても作品作りはできるでしょう。制限が少なくどこまでも広がるのが、図工・美術がワンダーランドたるゆえんです。子ども達が目をパチクリするようなチャレンジもやってみましょう。好きにやれるって子ども達には魅力的です。


Q109 指示するのは簡単だけれど・・・。

・先生方が、子ども達に「外から教室に入ったら、手を洗いなさい。うがいをしなさい。」・「トイレに行ったら手を洗いなさい。」・「食堂に行くときはマスクをしなさい。」等々、指示することはたくさんあるでしょう。色々なことに気づいて子ども達にてきぱきと指示している先生がいますが、そのままでは単に口うるさい先生でしかありません。しっかり指導しているつもりかもしれませんが、子ども達の耳には入っていきません。指示する内容を子ども達に身につけて欲しいのなら、指示する前に先生自身が子ども達のすぐそばで行動で示さなければなりません。まず先生が行い、「○○さんもやろうね。」と声掛けしなければだめでしょう。指示するのではなく、良いタイミングで声掛けすることが大事なのです。指示ばかりしてイライラしていませんか?指示するのは簡単です。でも、それでは子ども達は受け身でしか考え行動しません。自立性のない何でも受け身の子を育てたいなら別ですが。ちょっと立ち止まって指示するということについて考えましょう。


Q110 女の先生は得している?

・「女の先生は得している」などといえば、「冗談でしょう!」と叱られそうですが、「発達」の学習では小さなお子さんを育てているママさん先生は、本の内容がすんなり頭に入っていきます。自分の子育ての経験と本に書かれている発達の筋道がぴたりと合って、「そうそうそうなのよ。」と納得出来るはずです。男の先生では、がんばって子育てを手伝っていてもなかなかそうはいきません。苦労して子育てしているからこそ、わかることがたくさんあるのです。幼児の病気に関しても、男の先生よりも遙かに詳しくなっていきます。
 また、絵本の読み聞かせも男の先生より上手なのは女の先生です。私は息子達が幼い頃、毎日30分〜1時間は必ず絵本の読み聞かせをしてきましたが、女の先生にはかなわないなあと感じました。子ども達にとって女の先生は、学校でのお母さんのようなものなのかもしれません。若い先生は、お姉さんかもしれませんが・・。男の先生が逆立ちしても得られないようなものを持っている女の先生を見ると、心底羨ましい。苦労した分、仕事にいかせることをたくさん獲得しているのが女の先生です。男の先生も子育てをしっかり頑張らないと、いつまでたっても女の先生方にはかなわないでしょうね。


Q111 カッターナイフは大きい方が良いの?

刃の曲がり方・カッターナイフは、教材の制作でよく使う道具です。ダイソーに行けば様々なカッターナイフが売っています。私もダイソーで買ったナイフを数本持っていて使っていますが、カラーボードをカットする際にはオルファの大きいカッターナイフを使うようにしています。大きいカッターナイフは、刃が硬くしなりが少ないから垂直にカラーボードをカットすることができますが、小さいカッターナイフは刃が柔らかくしなりが大きいので、右の図のように定規をあててカッターナイフを使っても、カラーボードのカットした断面が垂直にならないのです。パズルなどを作る時に切った断面がカーブしていては、はめ込もうとした絵がすっと収まらなくなります。普段使いは100円ショップのカッターナイフでOKですが、教材の制作ではオルファの大きいカッターナイフを使う方がお勧めです。


Q112 見込みがないと思われると声をかけてもらえなくなるの?

・若い先生方を先輩の先生方は見ています。子どもへの接し方や仕事に対する真面目さや性格など。見られていることを特別意識する必要はありませんが、いい加減な仕事をしていれば、表面上は付き合ってくれても「あの人はダメだね。」と思われます。うまくできなくてもなんとか頑張ろうとしている若い先生には、たくさんの先輩が助けてくれますし、頑張っているなあといい印象を持ってくれます。何かできなくても、次にできるようになればいいのです。頑張っているだけでは進歩がないと言われてしまうでしょうが、わからないことは悩んでいないでいい先輩達から聞けば良いのです。そうしているとアドバイスしてくれることも増えていくでしょう。やる気がないと思われれば、声をかけてくれなくなります。この頃、なんだか先輩達がよそよそしいと思ったならば、それはあなたに原因があるからかもしれませんよ。


Q113 基礎学習では、机から○○が落ちないようにする?

コイン入れを行うこども紅白玉入れペグ挿し・抜き・基礎学習では、「玉入れ」や「コイン入れ」や「リング抜き」・「型はめ」等の教材を使う場面があります。机の上を使ってやる活動ですから、子ども達が玉(ビー玉や木の玉やスーパーボール等)やコイン(お金や丸い板等)等を落とすことがあります。玉等を落とすと、先生がそれを拾わなければなりません。その都度活動が中断してしまうようになってしまいます。私は大きなお盆(ダイソー等で売っている大きなトレー)を使うようにしました。トレーにはカラーボードを敷いて、落ちたものが跳ね返らないように・ボードの模様に気が行かないようにして使いました。子ども達が玉等を落としても机の上から転がり落ちないので、活動が中断されることはありません。机の周囲に厚画用紙等で壁を貼っても良いかもしれません。活動に集中出来るようにしていくとよいでしょう。


Q114 車イスは、平らな所でもブレーキをかけるの?

・先生方は、凸凹したところやスロープなどの斜面では、車イスに必ずブレーキをかけることでしょう。では、平らな所ではどうでしょう。私は肢体不自由の学校にいたときに、毎年のように車イスの事故報告を朝会や職員会議で聞きました。事故が起きた理由は、殆どが先生方のちょっとした油断やミスでした。他の子の動きに気をとられて、車イスにブレーキをかける前に手を離してしまったり、ゆるやかな坂に気がつかずに手をハンドルから離してしまったりしておこったものです。人間ですからミスは必ずと言っていいほどおこすでしょう。でも、おこしてはいけないミスってあるんです。普段から、平らな所でも立ち止まったら必ず車イスのブレーキをかけるようにすれば、体が覚えてくれます。ちょっとしたミスもなくなるわけです。子ども達をケガさせたくない・怖い思いをさせたくないのなら、面倒だなと思わずブレーキをかけることを習慣化することです。人のミスを対岸の火事などと思わぬことですね。「あの時、ブレーキをかけておけば良かった。」・・と、後悔しないために。


Q115 痛みは伝わらないってどういうこと?

・子ども達の中には、突然先生方をつねってくる子がいます。かわいがっているのに、どうしてとちょっと悲しくなりますね。つねる理由は必ずありますが、つねられる方としてはたまったものではありません。先生方の中には、つねられるってこんなにも痛いんだよとつねり返して、「わかった?」と応じる人がいますが、これは意味を持ちません。意味がないどころか、つねり返した先生を子ども達は嫌いになるだけです。興奮していたり、何か嫌なことを思いだしたり、気を引こうとしたり、わがままだったりと理由は色々とあるにせよ、つねり返しても「痛みは伝わらない」のです。
 痛いときには、「痛ーい」と反応することとしばらく相手をしないことでその子との距離をとります。好きな先生が相手をしてくれないことが、つねってくる子には一番つらいことです。つねったら相手をしてもらえないということを子ども達が学習するまで待つべきでしょう。それでも、つねられるって痛いしあざはできるしとしんどいですけれど・・。


Q116 家族の笑顔・・。

・保護者は色々なことで悩んでいます。子どものことを話すと心配事が山のようにあるのがわかります。そんなとき「家族が笑顔いれば大丈夫ですよ。」と話します。子ども達は周囲の様子に対してとても敏感に反応します。お父さんとお母さんが喧嘩をしたり、お母さんがイライラしていたり、表情が暗かったりすると子ども達も不安になります。色々心配なことがあっても家族の笑顔が側にあれば、子ども達は間違った方向には行きません。歩みはゆっくりであってもすくすくと真っ直ぐに育ってくれるでしょう。
 担任から離れて数年経っても、お母さん方から「先生、あの時のことばは忘れられません。」と、会った際には今でも言われます。家族の笑顔と先生方の笑顔が、子ども達を笑顔にする力になります。


Q117 研修会の参加費用が高い。参加しようかどうしようか?

・都内で行われる様々な研修会の中には、実技のための材料代込みとは言え参加費が2万円というようなものがあります。この研修会に参加した先生からこれを聞いたときに、「金儲けが目的か・・」と腹だたしくなりまた。会場代や講師への謝礼などで主催者側が大きな負担を抱えるとしても、子ども達へ良い技術を広めようということを大切にしているのか、研修会で儲けようとしているのかどっちなんでしょう。いい研修会の内容だとしても、この参加費に納得がいかないとしたら、参加はためらうでしょうね。参加費が高いからと言って内容が高いわけではありません。なんでも儲けにしようとする団体や講師の先生に手を貸す必要はありません。教育に関する研修会において志の低いところに人が集まれば、金儲けしたい人達の思うつぼです。教育は金になると・・ね。


Q118 コミュニケーションカードを作ったが、子どもが使ってくれない。使わせるコツは?

コミュニケーションカード・初めてコミュニケーションカードを作る時は、その子が好きなもの(おもちゃ等)や興味がある物(掃除機や教員のしているメガネ等)を一覧にしたカードを作ると良いでしょう。初めから色々と詰め込むのは使いづらくなるだけです。折角作ったコミュニケーションカードを子どもが使ってくれない理由は、自分からそのおもちゃなどを取りに行けることが原因のひとつです。自分で取りに行けるのであれば、人に頼む・「これがほしい」と伝える必要がないからです。
 そこでいつも遊んでいたおもちゃを隠してしまいます。そうすると自分で探しても見つからないと、「先生○○がほしい。」とカードの中にあるおもちゃ等の写真を指さしするようになります。コミュニケーションカードを使わざるをえない状況を作るわけです。この形ができるとコミュニケーションカードを使えば、自分の思いが他者に伝わるということを学ぶわけです。その子の興味があるもの・好きなものに友達や先生のカードや行きたい場所のカード・感情のカードが入るのは、コミュニケーションカードを使うことが日常的な行為になるようになってからです。焦らずせかせずやっていくといいですよ。


Q119 教材の大きさを考えている?

・教材の大きさというと「何?」と思われることでしょう。ここで言う教材とは、机の上で使うようなカードや「仲間分け」・「玉入れ」・「運筆練習」等の基礎学習で使う教材のことを言います。障がいが重いお子さんの場合は、カードは大きさだけでなく厚みも考えなければいけません。障がいが軽いお子さんの場合は、小さすぎない限りは大きさも厚みもそんなに気を使う必要はありませんが、障がいの重いお子さんの場合は手指の操作が未熟な子が多いので、大きめのカードや厚みがあるカードの方が使いやすいでしょう。
 また、仲間集めなどでは、お子さんの肩幅を意識した大きさのボードがいいでしょう。利き手を動かす時に教材・教具が肩幅以上の大きさがあると、操作が難しくなるからです。その子に合った大きさがあるわけです。


Q120 教材には、どんな色を塗れば良い?

プリンカップの色合わせ・基礎学習の教材・教具は、障がいの重いお子さん達が使うものです。そこで使う色は、色が鮮やかなあ「青・赤・黄」などの色を使うと良いでしょう。これらの色はしっかりと目にうつるので、障がいの重いお子さん達には適した色になります。幼児向けの雑誌などは、よく見るとこういった鮮やかな色を使っているものが多いでしょう。障がいがさほど重くないお子さん達が使う教材・教具に関しては、きれいであれば淡色等を使ってもOKです。

※色の3原色(絵の具等の色の三原色は、かつては赤・青・黄といいましたが、今ではシアン「緑みの青」、マゼンタ「赤紫」、イエロー「黄」と言われています。)


Q121 事務室や給食室の職員と仲良くなる?

・普段余り関わることがない事務室や給食室の職員の方々と仲良くしていますか? 仲良くしていると言うよりもいい人間関係を築いていますか? 若い先生方には、どちらもちょっと敷居が高い感じがするかもしれませんね。もしかしたら、子ども達の教育とは関係ないと思っていませんか?
 先生方は同僚をどういう人か見ているでしょう。いい先生もいればそうでない先生もいますよね。良い先生には敬意を払いますが、そうでない人にはできるだけ関わらないようにしますよね。事務室や給食室の職員の方々に、自分も子ども達もいつもお世話になっているという意識があれば、感謝する気持ちが生まれいい人間関係が築けます。事務室や給食質の方々も、感じの良い先生には親身になって対応してくれますが、感じの悪い先生には素っ気ない対応しかしてくれません。ベテランの先生だから良い対応をしてくれるのではありません。私は給食室に子ども達とワゴンを返しに行くときは、必ず給食の方に「今日の○○は、子ども達がよく食べていましたよ。」など報告していました。時々、おかずの作り方なども教えてもらっていましたが、休憩時間などに顔を合わせるとよく話しもしていました。学校は、先生だけで作っているわけではありません。事務室の人達や給食室の人達や掃除の人達や先生方など、みんなの力で成り立っていることを忘れてはならないのです。先生方が偉いわけではなく、その一員でしかないことを意識しましょう。


Q122 ムードメーカーを大事にしている?

・先生方の中には、仕事が特別できるわけではないけれど、とても重要な先生がいます。それは明るい雰囲気を醸し出してくれるムードメーカーの先生です。仲が良い先生方が集まっていても、意見がぶつかり合ってちょっと気まずくなることってあるでしょう。そういったときに明るい先生の存在に助けられることって結構ありますよね。
 クラスの子ども達にもそういっったことが言えるかもしれません。お調子者(?)だなあと思われるような子が、困っている子にとても優しかったり、喧嘩している友達の仲裁に入ってくれたり・・。先生の言うことを素直に聞く子だけが良い子なのではなく、ちょっとお調子者で普段言うことを聞かないような子の中にも、クラスにとって大切な子がいるんです。


Q123 卒業生に聞く。「働く」ってどんなこと?

・高等部では現場実習をおこない、担任が実習先に指導に出掛けます。実習先の会社の人や作業所の方々から、子ども達のことを色々伺うのですが、卒業して就職したり作業所に入るとアフターケアで何回か訪問することくらいしかできなくなります。高等部の先生方がわかるのは現場実習の情報が殆どで、就職したり作業所に入ってからの生活について余りわかりません。
 私が高等部にいた頃は、進路部の先生方が企画して年に数回卒業生に来てもらい、「仕事のこと」・「休みの日のこと」・「お給料をもらってどうしているか」などを話してもらっていました。先生方が何か言うよりも、卒業生の語る仕事のこと・生活の様子など高等部の生徒達は真剣に聞いていました。作業所の方・会社の方に来てもらうこともありますが、高等部の生徒達にリアルに情報が届くのは、卒業生のことばです。「教え子達に教わる」のって、なんかいいですね。あーこんなにも成長したんだと、あらためて嬉しくなります。


Q124 調理学習は、楽しいけれどちょっと怖い?

使いやすいまな板使いやすいまな板の皮むき・調理学習(調理実習)で怖いのは、『火・庖丁・皮むき器(ピーラー)・お湯』などです。庖丁や火は、子ども達も怖がって慎重になるので意外と大丈夫なのですが、怖いなと思うのは「お湯」と「皮むきのピーラー」です。子ども達はピーラーを使うことが余りないのか、ジャガイモやニンジンなどを持っている手指のほうに向かって手前側に削っていくことが多いので、いつ指を切らないかと心配になります。そういった心配を解決するのが、まな板に突起がついている「皮むきがしやすいまな板」です。これがあれば突起の部分に野菜を押し当てて固定できるので、手に持つ物必要がありません。小低のお子さん達でも安全・安心です。
 お湯の入っている鍋のほうは、近づかないことを徹底させるしかないようです。ある意味火よりも怖いですから・・。小学部の調理では、落ち着かないお子さんが多いクラスや学年では、電子レンジを使って火やお湯を使わないで済む調理をおこなうのがいいかもしれませんね。


Q125 買いもの学習は、ねらいをしっかり考えないと意味がない?

・買いもの学習は、小学部と中学部とでは学習のねらいが違ってくるでしょう。教室で行う買いもの学習とスーパーや100円ショップやコンビニや町の商店で行う買いもの学習も違ってくるでしょう。
 小学部では、「買いたい物を選ぶ・買い物籠に商品を入れる・レジでお金を払う」という一連の流れを体験するのが主な目的になります。選んだ商品をレジでお金を払わないままポケットに入れない・「お願いします。」と言う・レジでレシートをもらうといったこともねらいになるでしょう。教室での学習の後に、実際にダイソー等の100円ショップに出掛けて買い物を体験する場合は、予め財布に108円だけ入れて持っていき、商品を1個だけ選んでお金を払うという形をとることが多いのではないでしょうか。コンビニやスーパーでは、商品の価格がばらばらなので、商品を1個選んでもいくらになるかわからないので、買い物の流れを体験するには良い方法かもしれません。でも、学校の近くに100円ショップがないとできない方法なので、近くにコンビニやスーパーや商店しかない場合は、500円位は持っていかないと難しいでしょうね。小学部の段階では、買いものの一連の流れを経験しましたが、中学部ではどうでしょう。

 中学部では、選ぶ商品の数が増えます。買いもの先は100円ショップではなく、スーパー辺りが多くなります。複数の商品を選ぶ場合は、家庭から買い物して欲しいもののリストを持ってきてもらうといいでしょう。買う物が余り多すぎると時間的に難しいので、3〜4点くらいがいいかもしれません。自分で好きに買いたい物を選ぶのではなく、決められた商品をたくさんの商品の中から探して買い物を行うということがねらいのひとつになります。学習としてより実際の買い物に近いシチュエーションを作っていきます。レジで支払いができる子には、少し離れて先生方は見ていてやらせるようにします。お金の計算ができない子達は、決められたものをたくさんの商品の中から選べたかが大事になります。選べたのならねらいは達成したと考えます。レジで1000円札を出しておつりをもらえれば買い物学習は終了になります。買いもの学習は、各学部(各学年)で年齢に応じた「ねらい」をしっかりもっておこないましょう。


Q126 学級園で花を育てても子ども達が興味を示してくれない?

A・
春先に学級園の花壇に子ども達と花を植えますが、こども達はやることはやるのですが、植えてからは全くと言っていいほど無関心。こちらが花の成長を話題にしないからかなと思い、毎日のように話すも殆ど無関心状態は変わりません。仕方がないので、花ではなくジャガイモやサツマイモなら関心を持ってくれるかなと思いましたが、関心を持ってくれたのは、収穫の時の掘るときと食べるときだけでした。まあ、そんなものかもしれないなと思いましたが、どうやらそうではなさそうです。
 高等部と小学部の時のことですが、花壇で花以外に枝豆を育てたときと教室でかいわれ大根・ミニトマトを育てたときは、子ども達は毎日のようによく見ていました。どうやら土の中で育つものは、食べられるものでも見えないから興味が湧かないようです。また、花はきれいですが食べられないから関心が薄くなるようです。成長がじかに目に見え、いつか食べることができるものがいいようですね。学級園だから花と決めつけなくてもいいでしょうし、教室内で育てられるものはもっといいということでしょうか・・。かいわれ大根は、子ども達が食べたら味がきつかったようで、その後は見向きもされませんでしたが・・。


Q127 記録が大事なのはわかっているけれど、なかなか続けられない。

子ども達が下校して教室の掃除が終わる頃、先生方も休憩時間になります。職員室を見ていると多くの女の先生方は記録を書いています。男の先生は、やっと一休みという感じでしょうか・・。その日の授業の反省や子ども達の様子等を記録することはとても大事なことですが、これがなかなか続けられない・・。書き出すと20分位はかかってしまうので、休憩が取れないという気持ちにもなります。短時間で記録ができるようにするには、あらかじめ記録用紙を作っておき、○をつければいいようにしておくと続けることができるようになります。教科名の横に「がんばった・ふつう・がんばれなかった」という風に項目を作り、該当する所に○をつけます。その隣に空欄スペースを作ってそこに記録を書くようにすると、書こうとすることがすぐに浮かんできますし、負担に感じないで記録を取り続けることかできます。日付しかない白紙に書こうとすると中々続きません。


Q128 男だから、女だから・・?

A・
女だから視聴覚機器の操作は無理・男だから調理実習は教えられない。・・そんなことを言っているのは、どこのおじいちゃん・おばあちゃんでしょうか? 男だから女だからというまえに、先生なんでしょうと言いたくなってしまいます。先生という仕事は子ども達を相手にする仕事ですから、人間力が試されているような仕事です。特別支援学校でも小学校や中学校・高校でもおなじことです。仕事の勉強をするのも大事ですが、普段の生活の中で必要なスキル(料理・洗濯・買い物・裁縫・家電の知識等)を身につけていなければ、料理を作ってくれる人や掃除をしてくれている人などにに対する感謝の気持ちもわからないでしょう。若い先生方は、年配の先生方よりも記憶力も吸収力も高い筈です。男だって料理も作るし、女だって視聴覚機器もOKと、子ども達にあなたの人間力を見せてあげましょう。


Q129 勘違いしていない?

A・
最近は、特別支援教育を大学で専門にして特別支援学校に勤める先生も増えてきました。このこと自体はとてもいいことだと思いますが、中には勘違いを起こしている若い先生を見受けます。大学で特別支援教育を勉強してきたのですから、小学校や中学校・高校の免許の先生よりは知識が多いのは当たり前です。年上のおとなしい先生よりも自分の方が上だと勘違いしているような言動をして、先生方からひんしゅくを買っていることに気づかない人がいます。そういう人ほど力を持っている先生にこびを売るような態度をしてきます。知識が多いことと指導力があることとは結びつきません。知識があればやっていけるほど現場は甘い世界ではありません。本人は意識していないかもしれませんが、こびを売るような若い先生を力のあるベテランは相手にはしません。ベテランは様々なことを体験し勉強してきていますから、その程度の知識で自分は偉いと勘違いしているような人を「愚かだな」としか思っていませんから。若い先生で知識や経験が少なくても、子ども達を大事にする真面目な先生を評価します。いくつになっても愚か者にならないように謙虚でいなくてはね。


Q130 教材は、作って使って終わりじゃない?

A・
自作の教材は、それを作っている時も学習で使っているときも、「この教材でよかったのだろうか?」と心配・不安が頭の中をよぎります。学習で使ってみて、その子に合ったものになっていることがわかるとほっとしますよね。もし、その子に合ったものでなかったら、別のものに変えるか今使っているものの問題点を改善したものにしなければならないでしょう。
 いい教材ができたとしても、「もっといいものは?」と考えましょう。これでいいと思ったら、「もっといい教材」は生まれてきませんから。若い先生は、これから30年くらいは仕事が続きますから、じっくり時間をかけていい教材を作っていってください。



Q131 親の立場で考えるってどういうこと?

A・
困った保護者はどこにでもいますが、殆どの保護者はいい方達です。障がいを持って子どもが生まれ、今までどれだけ苦労してきたか・・。いい先生とばかり出会ってきたわけでもないでしょう。時にはひどく傷ついたこともあったでしょう。
 自分が子どもを持つとわかりますが、子どもはかけがえのないものなのです。子どもがひどいケガや病気になったら、自分が代われるものなら代わってやりたいと思うのが親です。親って切ないものです。そのことが少しでも想像できれば、親の立場になって考えられるようになります。「いい先生と出会えた。」と思ってもらえるように頑張りましょう。子ども達や保護者を応援できるのはあなたなんですから。


Q132 授業を記録するってノートに書くこと?


・授業のことを記録するのはノートですが、それが大変な時には写真を上手く使わうといいでしょう。授業の様子をデジカメで撮っておき「Word」や「一太郎」に貼り付けて、その時に感じた反省点や子ども達の良かったことなどを書き込むようにすると短時間で記録をまとめることができます。紙のノートでもいいし、パソコンでもいいということです。自分のやりやすい方法で記録をつけて授業を考えましょう。


Q133 手洗いの習慣は、石鹸が作るの?

石けん朝のマラソンや体育や図工や作業学習等の授業が終わった後や給食の前には手を洗いますよね。教室では石けんを使っていますか? 水飲み場やトイレではどうでしょう? 殆どの学校が固形タイプの石けんを使っていると思います。最近の家庭では、固形タイプの昔ながらの石けんよりもポンプ式の石けんを使っている方が多いのではないでしょうか。
 ある日、保健の先生に「学校でも、ポンプ式の石けんや殺菌力の高いミューズ石けんのようなものを使うようにならないの?」と聞いたところ、「私たちもそうできたらいいなと思っているんですけれど、予算がないから無理なんですよ。」と言われました。企画委員だった私は、その件について企画委員会でも話題にしましたが、「いいのはわかっているけれど、ない袖は振れないなあ」というのが結論でした。お金がない・ポンプ式では子ども達が悪戯するのではないか・詰め替えが固形タイプの石けんに比べて面倒など色々意見が出ましたが、一々もっともとしか言いようがない状態でしたね。
 学校で使っている安価な固形タイプの石けんは、乾くとかぴかぴになってしまい、子ども達がしばらく手の中でごしごしやっても泡立たないので、試しにポンプ式の石けんを買ってきてクラスで使うようにしました。しばらく様子を観察していると、普段「手を洗って」と散々言われてもなかなか手を洗わなかった子が、自分から手を洗っているではないですか・・。一緒に担任をしている女の先生とふたりで「あれ???」でしたね。数ヶ月だれもポンプ式の石けんを悪戯することもなく、手洗いも自主的にやるようになったので、「案ずるより産むが易し」・・でした。ポンプ式の石けんは学校では買えないので、他のクラスでも先生方が自腹で買ってきて使うようになりました。勿論、従来通りの石けんも使いましたが・・。


Q134 学級(クラス)文庫って何?

学校には図書室がありますが、予算等の関係で毎年新しい本がたくさん入ってくるというわけにはいきません。学校ができた頃からずっとあるような古い本が多くなってしまい、魅力に欠ける図書室になってしまっている学校も多いことでしょう。子ども達を連れて図書室に行くと、子ども達が手に取る本の数が少ないことに気がつきます。そういったこともあって、図書室から足が遠のく状態になってしまいますが、子ども達が本が嫌いというわけではないので、何とかしたいなあと感じることはありませんか?
 そこで、図書室から好きな絵本や図鑑等を借りてきて、クラスに子ども達用の学級文庫スペースを作りましたが、借りて終わりという状態がしばらく続きました。子ども達の好きな鉄道や働く車やアイドルやアニメはわかっていたので、学年の先生方に協力してもらい図書室にはないそういった本も一緒に並べると、毎日休み時間に本を見る子が出てきて、次第に他の子も一緒になって見たり、絵本を手に取るようになった子もでてきました。「先生、読んで!」と声はだせなくても本を持ってくる子もいて、本を通してちょっぴり世界が広がった気がします。優良図書を並べるのが学級文庫ではなく、子ども達が本に近づけるようにするのが学級文庫の役割だと思います。本が身近な存在になるように・・。


Q135 亡くなって良かった?

肢体不自由の学校に勤めていた頃、私の学年のあるお子さんが亡くなりました。その子は全国でも3例しかないという難病の子でした。小3なのに体は赤ちゃん並の大きさで、目も見えない・耳も聞こえない・声も出ない・知的にも最重度という子でした。お葬式が一段落した後、学年の先生方とお母さんとで話しをしましたが、お母さんがその時に、泣きながら「あの子が亡くなってほっとした気がしました。」と言ったのが、30年位経った今でも忘れられません。
 障がいのある子を持った保護者は、「自分が先に死んだら、この子はどうなるんだろう?」と思っている方が殆どです。保護者の切ない思いを知らなくては、このお母さんの言葉は理解できないでしょう。保護者の立場になって考え、子ども達との学校生活を日々を大切にしていかなければ、「先生」とは言えないでしょう。若い先生は、子ども達の成長を保護者と共に喜べる先生になってください。


Q136 子ども達の好きなことを知っていますか?

子ども達が話題にしているテレビの番組やゲームのことやアイドルのことなど、あなたはどれだけ知っていますか? 「先生は知らないなあ。」と言うと、子ども達はがっかりした顔を見せませんか? 休み時間や給食でのお喋りも、先生と子ども達をつなぐ大事なコミュニケーションのひとつです。先生が色々なことを知っていることがわかると、子ども達も普段以上に家庭での様子や自分の好きなことをたくさん話してくれますから、自分には特に興味がないようなことでも知っておくといいですよ。連絡帳ではわからない子ども達の意外な一面を見つけられるかもしれません。


Q137 自転車の指導をしていますか?

午後の時間に、校庭を高等部の生徒達が学校の自転車や三輪自転車に乗って走り回っています。自転車に乗っているのは、自転車通学をしている子達ではなく、普段はスクールバスで通っている生徒達です。学校で自転車乗りすることについては、保護者の中には「家の自転車を乗りたがるようになるから、ちょっとねえ・・。」と言う方もいます。心配するのもある意味当然かもしれません。自転車に乗れても交通法規を知らないから危ないということです。自転車に乗れる楽しみはなんとか確保してあげたいものですが、学校で自転車指導を行わないと片手落ちかもしれません。年に1回行われる「交通安全指導」だけではおぼつかないでしょう。卒業後に自転車の事故で亡くなった生徒は少なくありませんから・・。


Q138 小学部の体育は、楽しくなければ子ども達は伸びない?


キャスターボードでシートくぐり新忍者ボード新忍者ボード・小学部の体育の授業で、市販品のミニハードルを使った公開授業を見たことがあります。子ども達は淡々とやっていましたが、誰も笑顔を見せていなかったのが印象的でした。ただやっているだけという感じでしょうか。体育では体全体を動かすことが求められます。「歩く・走る・止まる・投げる・跳ぶ・登る・手足を連動させて動かす」などの活動には、普段の生活では余り行わない体の動きもあります。子ども達が体を動かすことに喜び・楽しみ・驚きを感じなければ、本気で体を動かそうとは思わないでしょう。指示されたからやっていますという内容の体育の授業では、運動を好きになってはもらえません。体育の内容を考える際には、「学習のねらい」が先に来るのであって、学校に置いて大型滑り台タッチでリンある道具でできる範囲のことを考えることではありません。学校の教具ではできないようなことが学習のねらいとなるならば、子ども達が夢中になって体を動かするような教具を作る必要が出てくるのです。学校にある教具に関しては、厚手のマット・ハードル・跳び箱などを組み合わせることで、連続して活動が行えるようにするなど工夫が必要です。子ども達が夢中になって体を動かすような体育の授業を行えるように、先生方で力を合わせましょう。


Q139 学校の中には人材が一杯?

・特別支援学校の中には、様々な才能や特技(?)を持っている先生方がいます。ただ、その先生の側にいる一部の先生くらいしかそのことを知らないことが多いようです。英会話ができる・ポルトガル語や中国語が話せる・ダンスが踊れる・和太鼓が叩ける・パソコンに凄く詳しい・民舞が踊れる・書道が凄い・楽器の演奏ができる・彫金ができる・革工芸ができる・読み聞かせがうまい・演劇ができる・教材をたくさん作っている・読書家である・カメラに詳しい・俳句や和歌に堪能・化石のことに詳しい・星のことをよく知っている・体操が凄い・・等々、あなたの学校にもそんな先生方がいるでしょう。そういった先生方を活用しないなんて勿体ない。
 私が肢体不自由の学校で研究部長をしていたときに、月に1回通常の研究テーマの研修とは別に研修日を設けるようにしました。その日は、特技や才能のある先生を講師役にして、学校の色々な場所で研修会(講座)を行ってもらいました。講師役以外の先生方は、自分が学びたい先生の所に行って学習するようにします。例えば、和太鼓がやりたい先生方は、和太鼓を教えてくれる先生のところに行って、1年間学ぶようにします。夏休みには、研修日を各講座で設定するので、普段行けない講座にも参加出来ます。この講座は、色々と形を変えながらも10数年経った今でもその学校で続いています。学部の垣根を越えて人の交流ができる・人材を掘り起こす・みんなの力に変えるといったことができるのがメリットです。外部から人を年に1〜2回呼んでも、継続性がなければやろうとすることも根付きません。


Q140 木工用のボンドは、木や紙を接着するだけじゃない?

秋色のコップ秋色のお皿・木工用ボンドは、木の板と板を貼り合わせるのに使いますが、それ以外の使い道もあります。右の写真は、図工の時間に作った「秋色のお皿」と「秋色のコップ」です。紅葉した葉っぱをボンドで貼るだけだと、やがて葉っぱは、乾燥してポロポロとはがれてしまいます。こういったときには、ボンドを水で薄めて葉っぱの上から塗るようにすることで、葉っぱにコーティングをするようにします。こうしておけば葉っぱがポロポロはがれてしまうようなことがなくなります。お面作りやランプシェード作りでも、のりではなく水で薄めたボンドを使うといいですよ。


Q142 幼児教育の本は役に立つ?

・幼稚園の先生や保育園の先生が読んでいる月刊誌が本屋さんで売っていますが、若い男の先生は手に取ってみたことがありますか? 女の先生はこういった本にも詳しい方が多いのですが、男の先生となると手に取ったことがないという方が殆どではないでしょうか。幼児教育の月刊誌は、図工や壁の装飾・季節の行事の進め方など小学部や中学部の子ども達の指導に役立つことが色々載っています。特別支援教育の本だけでなく、こういった本にも手を伸ばして知見を広めましょう。大体どんな本屋さんでも特別支援教育関係のコーナーの隣が幼児教育や保育のコーナーになっています、若い男の先生にもお勧めします。


Q143 ひとつの教材・教具で色々な子に対応できるものって何?

タッチでリンジャンプしてタッチ傘の的A・教材・教具は、障がいの程度や性格が違う個々のお子さんにごとに用意しなければ個々の課題に対応ができません。ただ、体育などで集団で活動する場合は、教材・教具の工夫で色々な子に対応出来るようになります。右の写真は、ジャンプして金属の管に触れるとシャララーンときれいな音色が出るというものです。真ん中の写真は、ジャンプしてアンパンマン等のイラストの貼ってあるボードにタッチしたりつかんで取るというものです。左の写真は、天井のフックを利用した傘の的です。これらは太めの輪ゴムで傘とつながっていたり、ロープの両端に輪ゴムを使ってあるので、ジャンプ力のない子がジャンプする時やボールを投げるときには、その場ですぐに高さを変えられるようになっています。ボールを高く投げられる子・投げられない子、ジャンプが上手な子・苦手な子と、工夫次第で色々な子に対応できるようになるわけです。


Q144 担当学年をよく変える先生ってどうなの?

A・毎年のように担当する学年を変える先生がたまにいます。毎年ではないにせよ、よく変えるなあと思われる先生は、学校の中に1人や2人はいるでしょう。人間関係が良くなかったり、保護者と上手くいかないなど色々な理由はあるかもしれませんから、何でも我慢する必要はありません。誰だって困った人と組んでしまったり、問題のある保護者に当たってしまうことってありますから。 ただ、子ども達に愛着が湧かないなどという理由で学年をよく変えるような先生は、そもそも教員という仕事が合っていないとしかいいようがありません。子ども達にも同僚にもいい存在ではありませんから、早めに転職した方がいいでしょうね。学校の先生には子どもが好きな人がなって欲しいと思います。安定した仕事をしたいというのであれば、他の公務員の仕事でもなんでもその人に合ったものがあるでしょうから・・。


Q145 数の学習で使う「魚釣り」の竿の糸が絡まって困る。からまらない方法は?

糸がからまわなくなる方法A・算数の授業では、遊びながら数を学べる「魚釣り」をよく行いますが、竿が5本・10本と多くなると、片付けたときに糸が絡んで困ることがあります。マグネットのついたひもを竿にクルクル巻いておいてもからんでしまうので、いざ授業で使おうとするとひものからみを取ることからしなければならなかったなどということになってしまいます。それを解決する方法は、輪ゴムをひねって2重・3重の輪にしたものを写真のようにひもの上から入れるだけです。こうすると何十本竿をまとめてもひもが絡むことはなくなります。簡単で助かる方法ですよ。


Q146 教室で「玉入れ」がしたい。準備が簡単なものってある?

傘の的A・一番簡単な方法は、100円ショップ(ダイソー)の傘と洗面器を用意するだけです。洗面器の上に傘を広げてさかさにして乗せれば完成です。勿論、傘や洗面器は、学校にある物でOKです。


Q147 絵本の世界を体験する?

おおきなかぶA・
「てぶくろ」・「ゾウくんのさんぽ」・「おおきなかぶ」・「めっきらもっきらどおんどん」・「のせてのせて」・「パオちゃんのすべりだい」等の絵本の読み聞かせをしてから、「おおきなかぶ」ならかぶに見立てた新聞紙などを詰めた大きな袋を引っ張りたりするでしょう。子ども達は絵本の世界がとても好きです。「ぞうくんのさんぽ」なら、先生が子ども達を背中に乗せて四つ這いになってぐるぐると教室の中を這っていくでしょう。「めっきらもっきらどおんどん」なら、縄跳びをやったり、丸太に見立てたマットに乗ったりもするでしょう。「てぶくろ」の授業を行った時に、薄い布団を縫い合わせたもので手袋を作り、子ども達を次々と布団の中に入れて女てぶくろの授業てぶくろの先生が一緒に横になったときの子どもたちの嬉しそうな笑顔を今でも思いだします。絵本の世界を体験することは、ことばの学習になったり動作模倣の力を伸ばしたり、役割を演じたり、見立ての力をつけたりすることにつながるでしょう。小学部では、先生方も楽しみながら子ども達に絵本の世界を体験させるとを大事にして欲しいと思います。ことばの学習をねらいとするか動作模倣をねらいとするか、役割を演じることをねらいとするか,学習のねらいをはっきりさせて取り組むといいでしょう。


Q148 図工の作品作り。障がいの重い子でもいい作品を作れる?

折り染めパームマットを使う立体的なお面A・
クラスや学年で図工の授業を行う時に、障がいの重い子をどうしたらいいかと悩むことがあるでしょう。この内容だったら作品作りができるかなと考えたりしていませんか?
 障がいの重いお子さんでも友達がやっていることは気になるようです。自分が友達と全く違うことをやっていると尚更気になるみたいです。ぬたくりなどだれでもできる内容を考えるよりも、みんなと同じ内容でやり方や道具などを工夫することで、障がいの重い子にもできるようにしてあげる方がいいと思います。例えばお面作りでは、風船に和紙(障子紙)を貼るのは難しい子でもダイソーの園芸コーナーで売っているパームマットを使えば障子紙をぺたぺたと貼ることができます。紙の折り染めなどは、障子紙を折るのは小学部の子ども達には難しいので先生方が事前に行いますが、色付けの方は障がいが重い子でもできます。紙染めした紙を使ってきれいな箱作りも可能です。
 障がいの重い子ができることを探すのではなく、どういう風にやればみんなと同じようにやれるか工夫することが大事になると思いますよ。


Q149 火を使わない簡単な調理は?

えびせんべいA・
学期の終わりに行うことがある「お楽しみ会」で調理をすることがありますが、時間的に厳しい場合や火を使いたくないことがあります。そういうときは電子レンジだけで作れる調理をすると短時間で楽しい調理ができます。写真のエビせんべいは、ご飯とクッキングシートと丸い棒とオキアミとお塩だけで簡単に作れます。ご飯はパックされたものを電子レンジでチンすればOKです。ご飯が茶碗に一杯あれば5〜6人分はできるでしょう。オキアミが手元にない場合は、ご飯と醤油があればせんべいは作れますから、短時間で子ども達が作って食べることができます。※せんべいの作り方は、「色々な教材・教具 9」のページをご覧ください。


Q150 足の筋力を高める簡単な方法は?


脚の筋力を高めるタニタのタイマーA・
小学部や中学部の子ども達の多くは、脚の筋力が弱かったりバランスを取ることが苦手ではないでしょうか。体育は毎日行われるわけではありませんし、朝マラソンは雨が降ればできません。体育館があいていればなんとか走れますが・・・。
 もっと簡単に短時間で毎日できることがあります。タイマーを使って「片足立ち」をすることです。片足立ちがが苦手な子は、片手を壁に添えて立ちます。左右の脚を交互に10秒上げて終わりです。慣れてきたら20秒・30秒・1分と伸ばしていけばいいでしょう。毎日数回行い記録を取っていけば、1年間で筋力もバランス力もついていくでしょう。天候や場所や時間に影響を受けないで、子ども達が遊び感覚で簡単にできる方法ですよ。各家庭にもお勧めできる簡単な方法なので、お父さんやお母さん・おじいちゃんやおばあちゃんとお子さんで、ゲームのようにやってはどうですかとお話ししてもいいでしょう。


Q151 

Q152 意外と気づかない靴のことって何?

A・朝、お子さん達がスクールバスから降りて登校してきます。バスのドアの所や玄関の下駄箱でお子さん達を担任の先生方が待つわけですが、どの辺をいつも見て(観察して)いるのでしょう。大体顔色を見て健康状態をチェックしたり、家庭で何かあったか表情から察するようにすると思います。その時に靴を履く様子もたまにで良いので見てあげると良いでしょう。特に小学部のお子さん達ですが、親御さんはお子さん達が成長することをみこして大きめの靴を与えていることが多いのです。また、靴が体の成長に伴い小さくなっている場合もあります。親御さん達は学校での様子はわからないことが多いのと、お子さん達が自己申告できないので殆ど靴についてわかりません。大きすぎる靴も小さくなってしまった靴も、体や運動時に良い影響は与えませんから、担任の方から伝えていくようにしたいものです。経済的に新しい靴を買うのが難しい家庭もあるでしょうから、その辺は考慮する必要がありますが・・。


Q153 本物を意識した教材・教具とは?

郵便ポストA・教材・教具で「本物を意識する」とはどういうことか。例えば「郵便ポスト」について考えると、先生方が国語や生活単元学習で「葉書の書き方」や「郵便」などの学習をする際に教材として郵便ポストを用意しますが、箱に手紙を入れる口の開いたけだけの郵便ポストは、郵便ポストではなくて各家庭に設置されている「郵便受け」にしか見えません。私たち教員や小学生であれば、『この箱は郵便ポストではないけれど郵便ポストのつもり』と見立てができるからただの穴の開いて箱でも郵便ポストとしてOKになるのです。特別支援学校のお子さん達は、そういった「見立て」が難しい子がたくさんいます。笑い話のような話しですが、小学部3年の児童達の担任だった頃、児童の親御さん達から「先生、家の郵便受けにうちの子からの手紙みたいなものが入っていたんですよ。」という話しを聞かされました。住所も書いていないメッセージのようなものだったそうですが、お母さん方には嬉しかったようです。微笑ましい話しですが、この話しで大事なのは子ども達が授業で使ったポストの教材が箱に穴が開いただけのものだったということです。「見立て」ができていないお子さん達だったから、授業歩行者用の信号機で使ったポストを家庭にある郵便受けと思ってしまったわけです。校外に出て実際に本物のポストに手紙を投函する体験を積むか、本物の形や色合いの近いものを教材・教具として用意するかが大事なことになってくるでしょう。子どもの視点に立って教材・教具を考えないと、がんばって授業を行っても学習効果が怪しくなると言うことですね。自作の教材・教具作りは時間もかかるでしょうし材料代も自腹で大変かもしれませんが、より良い教材・教具で授業を行うほうが、一見遠回りのようで最短の近道になると思います。交通指導の信号機類の教材・教具に関しても、なるべく本物に近いようなものを用意した方が、子ども達の学習に役立つことでしょう。


Q154 学校で最も大事なことって何?

風遊びのトトロ・学校でもっとも大事なことは、「一に子ども達・二に授業」です。色々な仕事や研修がありますが、全てはそ のことのためにあるといっていいでしょう。ただ「授業が大事」ということはわかっているのに、全校の研究テーマが数年ごとに変わる「キャリア教育」等の時流に沿ったテーマなのはどういことなんでしょうね。全国的に同じテーマで研究することは必要だからやっているわけですが、なんだか流行を追っているような気分になることがありませんか?
 それらの研究テーマに関してもできるだけ精通していかなけれなりませんが、それらのテーマが必要だとしても、学校において「授業」以上の研究テーマはないと思います。より良い授業を行う為には、卒業後の生活を見据えて子ども達に必要な学習内容の検討を行うことや指導法の検討、より優れた教材・教具の開発や発達の学習など色々な研修課題があるでしょう。ある研究テーマですごくがんばって全国の先進校になっても、全国でのテーマが変わればせいぜい数年程度しか続かない先進校です。「授業」以上に重要な研究テーマはないと思います。


Q155 「生きる力」ってなんだろう?

・「生きる力」って何だろうと、卒業していった教え子達のことを思う時や国語・算数:数学の授業の準備をしているときに考えます。生きるためには、健康でなければならいだろうし、生活するためには収入がなければ食べていけないし、良い人生を送るためには楽しみ(趣味)もなければならないだろうと。人と関わる楽しさを知ったり仕事や生活で助けてもらう際にはコミュニケーション能力も必要でしょう。
 お金の計算ができない子どもたちは、どうやったら自分で買い物ができるようになるのだろう、文字が読み書きできない子どもたちは生きていくのがひどく不便で大変だろうと・・。学校では、様々な取り組みをして子どもたちに「生きる力」をつけさせようとしています。それでも文字が読み書きできないまま卒業していく生徒がたくさんいます。楽しみが食べることだけという子どもたちも多いでしょう。
 高等部にいた頃、生徒に「夢は何?」と聞くと、「家族で旅行に行きたい」・「働いて給料をもらったら、お父さん・お母さんに楽させてあげたい」・「アイドルのコンサートを見に行きたい」など、いい表情をして子ども達が私に教えてくれました。学校でできることは、文字が読み書きできなくてもお金の計算ができなくても、それらができる人と余り変わらないような生活がしていけるように学習内容を考えることかもしれません。プリントで計算ができても実生活で使えない計算能力では意味がありません。教材・教具の工夫で読み書きができない子でも発語がない子でも他者とのコミュニケーションが最低限とれるようにすることは、自作の携帯できるコミュニケーションブック等の活用で可能だと考えています。スマホが買えなくてもスマホの使い方が分からなくても、買い物に関しては0〜9まで分かっていれば、支払いは可能になります。教材の工夫で今まだ無理だろうと思っていたことが、できるようになることがたくさんあるでしょう。東京の特別支援学校ではカードの活用を教えているところもあります。計算ができなくても支払いができるということですね。それもひとつの方法かもしれません。
 障がいが比較的軽度のお子さん達については、就職できればいいのかというと、決してそれだけではないでしょう。学校を卒業していった子どもたちが、いい人生・心が豊かな人生を送るにはどうしたらいいのかを考えなくては、学校生活の中で何が必要なのかが見えてこないでしょう。


Q157 初心忘るべからず

・初めて子ども達に接した日のことを覚えていますか? それから、初めて担当した学年のことや仕事のことを。2年・3年と経つと段々仕事に慣れて、毎日が当たり前のように過ぎていきます。いつしか初心を忘れがちになりませんか? 私は、新任で肢体不自由の学校に勤務しましたが、いきなり最重度のお子さんの担当になりました。普通は、新任の先生は障がいの軽い子の担当になるのですが、学年主任の先生から「毛塚さん、大変だと思うけれど、これからの教員人生に必ず役に立つから頑張ってください。」と言われました。1年間、毎日深夜まで本を読み、休日は教材を作って勉強しましたが、何もできなかったという思いしか残りませんでした。給料をもらうのが恥ずかしいと思う1年。その時の思いは今でも忘れません。子ども達を可愛いと思うだけでは、子ども達の力にはなれません。子ども達の力になれる先生になろうというのが初心です。


Q159 最も優れた教材・教具とは?

・子どもたちのことが好きで、暴れたり噛んできたり急に道路に飛び出したり、万引きを繰り返すような大変な子にも寄り添えること・子どもたちと一緒にいるときに笑顔をたやさないこと・子どもの達の成長を何よりも喜べること・保護者の立場になって考えること・分からないことは先輩や同僚や本から学ぼうとすること・「あの先生と出会えて良かった」と同僚や保護者や子ども達から思われる(信頼される)こと・・そういう先生が最高の教材・教具でしょう。人間ほど良い教材・教具はありません。



TOPへ