【演出の常識】

《用語解説》

 
演出を担当するものとして、常識として知っていなければならない演劇・舞台用語を網羅してみます。
もしこの項目で、足りないもの、加えた方が良いと思われるものがあったら是非ご連絡ください。
           
参考文献
『日本舞踊総覧』日本週報社 『歌舞伎事典』講談社 他
   

『現代歌舞伎舞台の名称・用語(1)』

   

現代歌舞伎舞台

舞台機構図・・名前をクリックして下さい。説明項目へジャンプします。



 
あげまく 「揚幕」:
能舞台における鏡の間と橋掛りの境に下げてある五色仕立ての幕。
切幕ともいう。歌舞伎などでも松羽目物に使われる。

いちもんじ 「一文宇」:
舞台上部の見切りを解決するために使用する、上下(かみしも)いっぱいに横長に吊られた細長い黒幕。
舞台間口と平行に1.5〜2.0メートル間隔で吊れ、舞台端から順に第一、第二、第三と呼ぶ。
関西では霞と呼んで空色もある。

おおせり・せり 「大迫り」:
舞台中央にある切穴。奈落から種々のものを迫り上げ、迫り下げる装置。

かがみどおり 「鏡通リ」
(通称、大臣通り、
定式通り等):

上下の大臣柱を結ぶ舞台面上の一線を名づけ、定式道具の配置上また歌舞伎の演技上から
標識となって、重要な役割を持っている。即ち虹の梁下。二重舞台、
屋台はこの線より奥に飾るのが定式になっている。

きりあな 「切り穴」:
舞台の床を切り開いて奈落との連絡ができるようにした穴。不要の場合はあげ板で蓋がしてある。
利用法としては、井戸にこしらえて、本水を汲み上げることや井戸からの出入りを仕組む。

げざ 「下座」(外座):
下手大臣柱と舞台前を結ぶ所から奥への場所で、伴奏音楽者特に囃子連中の居る場所で、
文化年代の以前は上手に配置してあった事もある。「黒御簾」とも云う。

こうりょう 「虹梁」:
上下大臣柱の上部をつなぐ欄間の名称。大広間の舞台を飾る時には虹梁の前に、
特別に欄間を吊す、舞台前面上部一面に作るもので、柱は取り付けない。これを「大欄間」(おおらんま)とよぶ。

じゃのめまわし 「蛇の目廻し」
(二重廻し):

廻り舞台を同心円で二つ作り、外廻りと内円の舞台と同方向に回転する時と
又方向を異なって逆転する事も自由にできる設備のもので、1847年(弘化4)に生まれた。

すっぽん 「スッポン」:
本花道の七三の所にある切穴の名称で、亡霊や妖怪変化の出入に用いられる。
江戸期には人力で出演者を持ち上げ出演者が飛び出すカタパルトのようなモノであったらしい。

だいじんばしら 「大臣柱」(大神柱):
歌舞伎舞台が能舞台を踏襲した時から今日迄残存した物で、舞台上手にあるので、
後には上手大臣柱と呼ぶ。下手大臣柱は古く能舞台からの踏襲で「見附柱」(みつけはしら・目付柱)
と呼ばれていたが、 歌舞伎舞台の破風消滅後も下手に残存して下手大臣柱と呼ぶようになった。
上手チョボ床と舞台をくぎる柱を上手大臣、下手下座と舞台をくぎる柱を下手大臣という。

ちょぼゆか 「チョボ床」:
上手大臣柱と舞台前プロセミアム・アーチとを結ぶ場所の二階になった所で、
歌舞伎の義太夫の演奏場所で、浄瑠璃座とも云う。

はなみち 「花道」: 歌舞伎特有の舞台機構。舞台から客席の間を通って、
その奥の鳥屋(とや)にかかっている揚幕に至る迄の通路。
起源は歌舞伎初期に、客が演者に「花」その他のものを贈る「アユミ」と云う通路を、
演者が使用したと云う説がある。
他に、通路の附近に花の植込みがあったという説や「橋掛り」が移動したと云う説もある。
ただ、今では橋掛りは舞台そのものに吸収されたと考えられている。
一方で、能の橋掛かりとは別に、寺社での伎楽の練行(菩薩練行)の橋掛かりが利用された
と考える説もある。
舞台下手寄りから出ている花道を本花道と呼び、上手寄りの花道を仮花道と云う。
仮花道は、使用することが少いので幅は本花道よりもせまい。
現在では左右斜に同形のものが対照的に附いたものもあり、またさらに中央から出たものを加えて
三本客席に流れ込んでいるものもある。
花道は演者と観客との融和性に効果があり、遠隔の地への往来とか、廊下とかを示すに便利である。
また時間的経過を自由に表示できる利点もあり、本舞台に於ける平面的演技が、
花道では立体的に演じ得る利点がある。
エプロンと花道
エプロンと花道
菩薩練供養行
菩薩練供養行

ぶたいはな 「舞台端」:
舞台の前の客席と接する場所。舞台の客席側最先端。

ぷろせみあむあーち 「プロセミアム・
アーチ」:

舞台間ロ・舞台の額縁。原則として客席と舞台の境界に幕がある。

まくだまり 「幕溜」:
幕尻とも云い、上下外大臣とプロセミアム・アーチの間の場所で、引幕を開いた時の幕のある所。

まわりぶたい 「廻り舞台」:
舞台の床を円形に切り抜き、それに張った円形舞台を回転することによって、
飾られた舞台の場面を変化させる目的で作られたもの。
宝暦8年に並木正三の工夫によって発展した舞台装置。世界劇場史上に残る重要な機構の一つ。
映画などのカットバックと同様に、同時刻の異なる場所の事件を表現できる効果がある。

みずひき 「水引」:
ブロセニアムの上部から吊られた横長の布で、間口上部の装飾と調節とをかねて設置されている。
能舞台踏襲時代から継承されている。


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