鍋割山

神奈川県秦野市
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ミズヒ大滝 秦野市
ミズヒ大滝櫟山から秦野方面を眺める
 鍋割山は、表丹沢の前衛に位置する標高1272mの山である。 適度の高さがあり、アプローチに恵まれているから、日帰り山行の好適地である。 私は、ミズヒ沢の大滝を見てから、後沢乗越を経由しこの山に登ることにした。 四十八瀬川の支流であるミズヒ沢は、丹沢の玄関としてよく知られた大倉から歩いていく。 大倉までは、小田急線渋沢駅から頻繁に運行されているバスが利用できるから、細かな計画 を立てないで、気楽な山行を楽しむことにした。
ミズヒ大滝へ

 私はもう何年間も渋沢駅に降りていない。久しぶりに降りて見ると、駅の感じは以前とは だいぶ変わっていた。新松田に向かう時には、いつもこの駅を通過しているのだから気づきそうな ものであるが、以外に見ていないものである。ホームの脇に改札口があるような小さな駅舎を思い 浮かべて来たのだが、最近建てられた都市域の駅ではごく一般的な、ホームから階段を登り2階の 改札から出るタイプの駅舎に、ここも建て替えられていた。記憶とのギャップに呆然としながら、改札 を出、構内表示を頼りに降りていくと、バス乗場があった。乗客が一杯のバスが出発を待っている。 この時間帯にこれだけ混み合っているところを見れば、これが大倉行きであるのはあきらかだ。 大倉までは、たった10分強だから次のバスを待つこともないだろう。詰めてもらって乗り込むと、 バスはまもなく発車した。駅舎の建て替えによって、たぶんバス乗り場の位置も変わったのだろうが、 以前の場所は思い出せなかった。ここでなかったことは確かであるが、もう思い出せない。
 道路の傾斜が増し、丘陵を登っていることが感じられるようになると、大倉の終点であ る。乗客は一斉に降りていく。ここも近年整備されたようだ。施設が真新しい。水無川には、 大きな吊橋も架けられている。すこし戸惑うが、少しあるけば周りの集落はそれほど変わっている わけではないから、だんだん思い出してくる。
 大倉は水無川によって開けた平野部の最奥、出合いに開けた集落である。ここから水無川は 山中の沢となる。さて、今日これから向かうミズヒ沢は、この川とは無縁の沢である。大倉か ら尾根を一つ越えた西に流れている四十八瀬川の源流部だ。このあたりでは直線距離に1kmも 離れていないが、双方は合流することもなく、その後まったく異なった流路をたどった末に、 相模湾に流れ込む。この四十八瀬川は、西丹沢の河内川などと同じ酒匂川の支流なのである。
 水無川に沿って登っていく登山者たちとわかれ、私はバス停前にある商店の脇から西に向かう車道に入った。 道が右に曲がると集落は終わり、畑の中の道となる。再び進路は右に折れ、岡を登っていく。案内板が建て られているので、それにしたがって、左折し、民家の庭先とも思えるようなところにつけられた舗装されていな い車道を進む。林中に入り、北に向かう林道は、沢を迂回し終えると、少し南にもどり、四十八瀬川に 沿って登ってくる林道に出た。ここから約1時間歩くと、沢登りで有名な勘七の沢の出合いである二俣という 場所に着く。平凡な林道歩きであるが、日影で涼しく、風景もそれほど荒れてはいないので苦にはならない。
 途中林道が、沢の流れを越えている場所が現れる。ここの少し手前のコンクリートの土止めに立っ て沢をのぞき込むと真下に滝が見える。これは黒竜の滝と名づけられた滝である。林道の少し先には、 この滝に降りて、表丹沢県民も森に向かう歩道の入口がある。この滝は帰りにみることにして道を進める。
 林が切れ、道路急に明るくなり、先ほどから対岸に見えていた車道が合流してくる。地形図で確認 すれば二俣が近づいていることがわかる。少し登りが急になり、沢床が道路と同じ高さに接近してくる。路 上を水が威勢よく流れている。勘七の沢である。沢を渡ると、登山道の入口がある。小丸とよばれる場所を 経由して鍋割山や塔ノ岳に登るためのルートのものである。 勘七の沢に着いた時、もうほぼ目的地に着いたような気になっていたが、思っていたより林道歩きは続く。 やっと本沢を渡る所に出て、次のミズヒ沢に着いたのは、二俣から20分ほど歩いた後であった。
 鍋割山に向かう登山道は、沢を渡り、枝沢に沿って登っていく。その前に私は、最初の目的地である 大滝を訪れなくてはならない。沢の左岸に歩道があるので、ここを入る。途中からいくぶん荒れているが、10 分ほどで、ミズヒ大滝の手前の小滝の前に着いた。小滝の真正面に立つと、上に大滝が見える。 左岸の岩をよじ登ると、大滝の真下に出た。高さ25mくらいであろうか。水も豊富で、見ごたえのある姿である。
鍋割山山頂に登る
 滝の観賞を終え、先ほどの登山道の入口まで戻った。沢を渡り、歩道に入る。小さな枝沢、後沢乗越沢に沿って、 明るい植林中を登っていくと、涸れた沢の源頭に出た。ここから、別の沢にそって登山道はつけられている。それもすぐ終わり、 後沢の乗越に着いた。後沢はここから寄沢に向けて西に流下している沢である。この沢沿いを登って行き来をしていたのだろ う。乗越は峠を意味する。
 ここからは、稜線上を北に向けて登るだけだ。鍋割山へは1.7kmと表示されているから、それほどの距離ではない。 歩き始めは、けっこうきつく、休みながら登った。高度が増し、笹が現れるようになると時々展望が開け、傾斜も緩くなり楽しい登りとなった。 急になったり、平坦になったりと変化を繰り返しながら登っていくと、乗越から1時間で頂上に着いた。
 頂上は明るく、西には深く切れ込んだ寄沢を挟んで 三角形の雨山が見えている。前回登った雨山峠は、その北側にある沢の乗越だ。 頂上の南側に立つと、ここからは秦野方面がよく見えた。水無川のつくり出した平野が広がっていた。
歩道 山荘
後沢乗越から鍋割山に向かう稜線上の道鍋割小屋
山頂 栗の木洞
鍋割山山頂 山頂附近から栗の木洞方面を眺める
帰路
 後沢の乗越までは往路をそのまま戻った。登っている時には、気づかなかったのだが、林の切れ目からは秦野方面の眺望がよく効く。道も感じていたよりは急坂であったことに、 驚かされた。傾斜が急であれば下りは速いもので、30分ほどで乗越の分岐に出てしまった。
 このまま往路を帰っても良いが、まだ時間的にまだ余裕があるし、これで帰ってしまうのでは少しもの足りない気もするので、尾根をさらに南に進み、栗の木洞に登ることにした。 乗越から南の続く道を進む。左下方にはウシロ沢が深い谷を作っている。このあたりには、稜線にそって鹿の防護ネットが張られいて、歩道はその脇を進んでいく。主コースから外れているから、利用者 は少ないようであるが、道筋を追うのはまったく問題ない。
 少し急坂となり登り切れば、ピークの栗の木洞である。植林中の小さな空間で、視界が有るわけでもなく、ただ、そこがピークであることがわかるのみである。ここからも下ることも可能なようで、 表丹沢県民の森の案内板が立っている。せっかくここまできたので、もう少し南に進むことにした。ピークを越えたから下りが続く。どんどん下っていくと、木々がなくなり小さな草原に出た。視界を遮るも のはなくなり相模湾まで見える。草原中に12番ポイントを示す県民の森の標識が立っている。道が続いている感じなので、ここから下っていくことにした。草原のすぐ左の防護柵の上には板が渡してある。 人間が越えるためのものだが、ここを登る鹿はいないのだろうか。この板の階段に登って、立ち止ると、見晴らしは抜群だった。
櫟山 栗の木洞を後に歩道を下ってくると草原に出る。前方に視界が開け、ここからは相模湾も見える。 このあたりは櫟山と呼ばれているようだ。

 目を北東に向ける。山塊のピークの中の2つには小屋があることがわかった。地図を取り出して小屋のある場所を探していくと、手前は鳥尾山、その向こうは三の塔のようだ。 ピークから南に続いている三の塔尾根は、大倉のバス停の横にあった吊り橋のあたりで終わっている。
 吊橋から水無川の流れに沿って目で追っていくと、大きな工場のならぶ地域を越えて、市街地に入っていく。このあたりが秦野の駅前であろう。さらに遠くの相模湾を見てから、今度は西に向かっていけば 平野は終わり切り立った海岸が西に続いている場所がある。小田原から湯河原方面に向かうあたりの海岸であろう。 視線を手前に戻してくると、大倉のあたりはなだらかな岡となっている。水無川と四十八瀬川の削り出した土なのであろうか。上には畑が広がっている。
 下り始めると、日当たりの良い斜面であるから草が育ち放題だ。草の間に見える道を追って10分もいくと、ポイント11を示す標識が現れた。防護柵は縦横に張り巡らされているのか、ここまでの間にも、2回防護 柵を越える場所があった。さらに5分ほど下ると林道に出た。県民の森の中では分岐ごとに番号がふられている。ここには、全体の位置を示す地図の書かれた案内板が立っていた。次に向かうポイントは10番で良いようだ。 案内図の示す方向に進むと、再び林道に出た。ここには東屋が建てられていて、この森の散策の中心地のようだ。 今いる車道は、朝対岸に見えていた三廻部から登ってくる林道である。左岸の大倉に向かう林道へは、四十八瀬川を渡り、黒竜の滝を経由するルートをとればよい。
 河原に向かう道を下り始めると、じきに林間に陽に反射して輝く河原が見えてきた。歩道の先には橋が架かっていて対岸に渡れる。豊富な水が、下流に向かって流れていくのを眺めながら、橋を渡り、すぐ上で流れ込んでいる沢沿いを 登っていくと高さ15メートルほどの黒竜の滝があった。滝を後にして10分ほど登ると、林道に出られた。
 ここからは、朝来たとおりに林道をだらだら下っていくだけで大倉につくのだから気が楽になった。1時間ほど歩いて畑の間の舗装された道路に出た。道路脇には野菜の無人販売所があり、大根やタマネギがおいてある。 先ほど上から見えた畑で収穫されたものだろう。朝は感じなかったが、このあたりの道路もけっこう傾斜があるものだ。急な車道を下るとバス停に着いた。
 バスが止まっているが、もうこれ以上乗れないくらい、車内は混み 合っている。次のバスでもそれほど待たされるとも思われないのでなく、まずは自販機で飲み物を買い一休みしてから次のバスを待つことにした。
三の塔 黒竜の滝
三の塔表丹沢県民の森にある黒竜の滝
訪問のために

<地形図> 秦野、大山(2万5千分の1)
<交通機関>小田急渋沢駅で神奈中バス大倉行きに乗車.終点大倉で下車.約12分. 丹沢の代表的な入口、大倉であるから、バスは頻繁に運行されていてアプローチはきわめてよい. 反面、訪れる人は多く、バスが混み合うのが難点である.


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