[K]Style   更新日:1999.12.01


 1997年、たぶん12月。 僕は近所の古本屋で一冊のマンガ雑誌を手にした。  聞いたことのないタイトル、見たことのない絵、背表紙に書かれた「総集編」の文字。  どうしてそのマンガを読もうとしたか、今となっては思い出せない。 たぶん暇だったのだろう。  もともと僕にとって古本屋とはそういう場所なのだから。
 唐突だが、僕はラブコメというジャンルが好きだ。 映画、TVドラマ、アニメ、マンガ、 小説にゲーム。 メディアを問わず、ラブコメ的要素の強い作品に興味を引かれることが多々ある。
 その本の表題作になっているマンガもラブコメだった。 舞台は百貨店。 主人公は部門長を務める、 同期の中でも出世頭のキャリアウーマンと、その彼女を過去にひどい仕打ちで振ったことのあるプレイボーイ。  三角関係、嫉妬、付かず離れずの2人。 軽快なテンポ、軽妙な笑い。 デパートの裏側で繰り広げられる、 男女数組が入り乱れての恋愛模様。 典型的なラブコメ。 僕の好きなラブコメ。
 それまでにも僕は男性誌、女性誌問わず多くのラブコメマンガを読んでいたが、そのマンガには 他のラブコと大きく異なる要素が一つあった。 そのマンガは4コママンガだった。

 一口に「マンガ雑誌」と言っても、そこには多種多様なジャンルが存在する。
 少年誌、少女誌、青年誌、レディースコミック等は性別、年齢層といった 社会的属性で対象をおおまかに絞ったマンガ誌だが、その他にも読者の嗜好 によって対象を絞ったマンガ誌も存在する。 例えば、釣りマンガ誌やホラー マンガ誌、美少女マンガ誌等がそれに属する。
 一般的なマンガ雑誌では「箸休め」的な要素の強い4コママンガ(もちろん 一概に言えることではないが)だが、その4コママンガだけで、または4コママンガを 中心に構成されたマンガ雑誌が所謂「4コマ誌」である。
 4コマというカテゴリーだけで構成された4コマ誌は、上記の定義で言うと一見 「嗜好性マンガ誌」に分類されそうだが、実はそう単純に断言できるものではない。  4コマ誌にも性別や年齢によって対象を絞った「〜向け4コマ誌」が数多く存在して いるのがその理由だ。 そう考えると、「4コマ」は社会的属性、嗜好性と言った 枝別れしたジャンルではなく、「4コマ」と「非4コマ」というもっと大きな括りで 分類されるものなのかもしれない。
 話が逸れたが、対象とする性別や年齢によって細かく差別化された4コマ誌は 書店やコンビニ等で確認することができるが、4コマ誌を読み始めた当初はその数の 多さに随分驚かされた。 月刊誌として定期的に刊行されているものだと、私が知って いるだけでも10誌を下らない。 その他にも特定のマンガ家の作品を中心に構成 された「特集号」や、人気作品を単行本発刊前に再編集した「総集編」等が、ほぼ月刊 ペースで刊行されているので、毎月発行されている4コマ誌は総数で20冊近くにも 及ぶだろう。
 これだけ数多く出版されている4コマ誌であるが、その存在を知らない、または 認知していない(意識外にある)人も多い。 実際、私も2年前(当時はこれほどの 数ではなかったが)まではその一人だった。 あのマンガに出会うまでは。

 たまたま古本屋で手にしたマンガ誌から4コママンガの面白さ(あるいは 可能性)を知った僕は、それまで書店に行っても常に視界の外に追いやっていた 4コマ誌を意識して読むようになった。
 直に継続して読むようになったマンガも何本か出て来たのだが、それらの大半は 最初に読んだラブコメ4コマと同じ作者によるものだった(しばらくはそれに気付かず 読んでいた)。 当時から4コマ作家として確固たる地位を得ていたそのマンガ家は、 当然多誌に渡って数本の連載を抱えていた。 同じ作者のマンガを無意識にでも選んで 読んでいたのはそれほど不思議なことではないのだが、それでも僕はその偶然を 喜ぶべきことだと受け止めた。 本当に面白いと思えるマンガに飢えていたからなの かもしれない。
 あれから2年が経ち、今も僕はそのマンガ家の作品のいくつかを読み続けている。  作者に対する認識はかなり変わったが、それでも面白い作品を提供してくれる作家で あることに変わりはない。


 僕が最初に出会った4コマスタイルのラブコメマンガは来月、遂に最終回を迎える こととなった。 だからという訳ではないが、僕はこのマンガ家の作品について感じた こと、考えたことを文章にしてみたいと思うようになった。
 マンガ論やマンガ家論を書くつもりではない。 そんな文才ももちろん無い。  ただ、他の誰でもない僕自身の言葉で作品に対する想いを書き留めておきたい、 そう考えた。 2年という時間を総括するための作業として。

 [K]Style ── ここは『私的かつ散文的小池田マヤ作品考』です。

( 1999.11.27 文中すべて敬称略 )

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