平塚から新しい形をつくろう

自治基本条例づくりに参加して


赤松



 『市民情報誌 +α』の活動にかかわることで平塚の市民自治条例づくりにもご縁が出来ることになったので、条例について如何に考えているのか改めて記してみたい。
 条例について考える市民委員会の会合や資料でも既に述べたことであるけれども、地方分権一括法の施行以来、国と自治体は対等・平等の関係となり、その中で自治体がどのように在るべきか示すものこそ自治基本条例であると言えるだろう。また、市民と行政の契約を自治基本条例を通して行うという考え方も出来るかもしれない。
 条例には少なくとも2っの大きな側面があると考えられる。理念と手続きとである。
 理念では、様々な物事を極力地域で考え、解決していくということ。そして税金を払うことによって存在する自治体の意味とは何か。独自の財源の創設が求められ、様々な行政サービスに於いて受益者負担と短絡的に考えられがちな状況の中で、市民の生命と財産を守るという根源的な役割を果たしていく為の所得の再配分機能や機会の平等の確保という観点を先ず基本に置かなければならないだろう。その上で、自治体の規模や市民活動と行政組織の在り方、行政への市民参加と直接請求制度、間接民主制のかかわり、国による補助金制度を通じた自治体への縛り等について整理し確認しておくことが必要であると考えられる。また、地域コミュニティとプライバシーのバランス、行政サービスに於ける選択と集中、その一方での多様性の確保といった観点も検討することが欠かせないであろう。
 手続きでは、財政面等での政策的なぶれを抑える為、金融・証券市場をモデルとした調整の仕組みとしてのサーキットブレーカー制度を導入することや人事制度の在り方、公文書の定義と作成・管理、調査方法の決定と実施、構想や計画の作成から事業の執行、評価の実施に亘る過程の設定とその過程への市民参加、市民提案制度、各種委員会での学識経験者や団体代表を含めた公募と公開審査の制度、公募・公開審査の導入による効率的な購入と発注の体制の確立、公共的なサービスと準公共的なサービスとの関係、また情報の公開と提供体制の検討という観点では記者クラブ制度とのかかわりや住民投票について検討することも求められて来るだろう。
 当然検討の過程では、情報公開条例や個人情報保護条例等、様々な条例・要綱・規則あるいは要領等との整合性について検討することが欠かせない。
 また、国と自治体が対等平等という観点に立てば、現行の諸制度に対する問題提起という側面を持つことも充分に在り得るだろう。
 さらに条例の進行管理という点では、『ひらつか自治白書』のようなものの市民参加による発行なども考えられるのではないか。
 中央集権型の社会から分権型の社会へ、大きな政府から小さな政府へ、独占から競争へ、人口増から人口減へという時代の転換の中にあって自治基本条例の作成を通して近代の国家が失った自治の価値を再認識していくひとつの過程・契機になれば何よりである。ただ、施設をつくること等とは違い制度を如何に考えるのかといった抽象的な面を多分に含むものだけにより多くの市民の理解を得ていく為には事例を出しながら条例の意義について理解を深めていかなければならない筈である。この条例が活動する市民とその他大勢の市民との共通のフィールドになり得るのかどうか、自治の基本をより多くの市民と共有する取り組みも大きな課題なのだろう。

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