ピアズ金沢 幹事 笠井
今回は脳血管障害者を取り巻く諸問題とピア・カウンセリングについて述べます。
1、脳血管障害者取り巻く諸問題
まず、本人が直面する問題は後遺症そのものによる苦しみだけでなく、先の見えない苦しみがあります。この苦しみがこの先何時まで続くのか、医者に聞いても普通「判りません」、「一生治らないかもしれません」という悲観的な答えしかかえって来ません。その結果、多くの障害者は希望を失います。しかしながら、同病の先輩を見ればそれなりに希望の持てる未来が類推できるのです。例えば退院時、医者から「一生車椅子の生活でしょう」といわれた先輩でも2、3年たって国内旅行はもちろん海外旅行を楽しんでいる人も結構多いのです。
次に、家族の直面する問題として経済的・社会的問題があります。例えば一家の大黒柱が脳血管障害に
なった場合、家族は突然の事態におろおろし右往左往しているようです。しかしながら、障害者をサポートす
る制度は公的福祉制度、職場の福祉制度などそれなりにあります。ただ、これらの諸制度は申請しない限り享
受できません。行政の福祉サービス課にいけばすぐわかる諸制度や各種受け皿があることすら知らない人が多
いのです。
このような障害者や家族が直面する多くの問題も先輩の経験から学べることが多いのです。
問題点 | 内容 | ピア・カウンセリング | |
本人 | 後遺症との闘い | 後遺症そのものの苦しみ | 先輩の経験から類推 することにより希望の光が見える |
同上 | 先が見えない苦しみ | 同上 | |
希望を喪失 | 引籠もり | 仲間を通じて今までとは別な世界の扉が開いてくる | |
同上 | 生甲斐の無い人生 | 同上 | |
家族 | 経済的問題 | 右往左往 | 経験者の生活の知恵に学び賢い家族になる |
生活上の問題 | 知らないために損をする | 同上 | |
本人との関係 | 賢い家族でありたい | 同上 |
2、後遺症との闘い
病理治療は医者の担当ですが、後遺症との闘いは障害者本人なのです。PT(理学療法士)、OT(作業療
法
士)がサポートしてくれますがリハビリをやるのは障害者本人なのです。
さて、後遺症は機能障害だけではありません。脳にダメージを受けたのですから体調障害や精神的障害
が残ります。機能障害は外から見えるし、またリハビリ施設もそれなりにあるのですが、体調障害と精神的障
害に関するサポートは現在の日本の医療や福祉体制では欠落しているようです。そのため多くの脳血管障害者
は機能障害以上に体調障害や精神的障害で苦しみます。
医者に相談してもわかってもらえない。この苦しみが一生続くのか、それとも改善してゆくのかそれも
わからない。出口が見えないのです。しかし、同病の先輩には解ってもらえるのです。また先輩を見ることに
より自分の1年先、2年先を類推することも出来るのです。1年目は地獄の苦しみだったが、2年目・3年目
には楽になったという人が多いようです。それにつれて、それなりの生活が出来るようになり、ある人は旅行
へ、ある人は趣味に、ある人は仲間作り、と生甲斐を求めはじめます。
もし、先の見えない、地獄の苦しみに耐えている障害者がこのような先輩の経験を知ることにより、今
耐えている苦しみが一生続くものではなく、時とともに改善し、それなりの人生がおくれるようになるとの希
望が見え、生きる勇気がわいてくるのです。
内容 | 主担当 | サポート | |||
脳血管障害 | 手術、施薬等による血流再開治療 | 医師 | なし | ||
後遺症 | 機能障害 | 右マヒ、左マヒ、失語症、高次脳機能障害 | 本人 | PT.OT等 | ピア・カウンセリング |
体調障害 | 身体が鉛を入れたように重い、頭に霞がかかる、頭がポワーンとする、嚥下障害、 便秘、心肺機能の低下、筋硬縮、自律神経の機能低下(例:いくら暖房をしても寒い等)、その他もろもろ | 同上 | ・・・ | 同上 | |
精神的障害 | 再発の恐怖、引籠もり、諦め、絶望、感情コントロール機能低下、などなど | 同上 | ・・・ | 同上 |