20代が語る環境問題

環境問題の責任と課題 (2)


鈴木



 今回は放射性廃棄物について論じたい。昨年は福島と新潟の原子力発電所で部品の損傷隠しなどの問題が明るみに出て、新聞でも大きく扱われた。原発事故がいかに恐ろしいものであるかは、チェルノブイリの事故を考えれば容易に理解できる。しかし、発電所で事故が起こらなくとも、そこから出る放射性廃棄物にまだまだ危険性があるのだ。昨年の問題では原発そのものに注目が集まったわけだが、廃棄物の危険性も忘れてはいけない。
 まず、放射性廃棄物とはどのような物か考えてみよう。代表的な廃棄物は使用済み核燃料であろう。これは所謂死の灰やプルトニウムを含んでいるものである。他に考えられる物は、原発内の部品などであろう。原子炉内部はもちろん放射能まみれである。その中で使用された部品を交換したときに出る廃棄物も、当然放射能汚染されている。また、老朽化原発を解体した場合、巨大な放射性廃棄物がそこで発生するはずである。さらに、見逃されている廃棄物も存在する。気体や液体の廃棄物である。この中で放射能レベルの低いものは大気中や海中に放出されているのだ。放射能レベルが低く、さらに濃度を薄くしているそうだが、危険物質を外に捨てていることに変わりは無い。放射能の害は短時間で出るものではないので、今のところ問題が起こらなくとも、今後に大きな不安があると言わざるを得ない。
 ところで、高レベル放射性廃棄物とか低レベル放射性廃棄物といった言葉をほとんどの人が耳にしたことはあるだろう。そのレベルはどのような基準で分けられているのだろうか。
 実は、その分け方は非常に単純なものであった。使用済み燃料を再処理した後の廃液と、その廃液を耐熱ガラスと混ぜてステンレス容器に固めたガラス固化体の二つだけが高レベルとされているのである。それ以外は全て低レベルとされている。しかし、その低レベルの中には外国では高レベル扱いの物もある。さらに、低レベルという言葉にも疑わしい面がある。高レベルと比較すると放射能レベルが低いというだけであって、人体や環境への影響は決して低レベルではない。低レベル廃棄物を詰めたドラム缶に抱きつけば、数分で一般人の年間被曝規制値に達してしまうのである。
 現在、その低レベル廃棄物は青森県六ヶ所村の低レベル放射性廃棄物埋設センターで処理されている。青森県では建設中の原発があり、さらに核燃料再処理施設も造っている。原発関連施設が多い青森に、さらに高レベル廃棄物処分場建設の話が持ち上がった時期もあった。
 高レベル放射性廃棄物処分場は全国に4箇所の候補地があったという。青森県、岐阜県、岡山県、北海道道北エリアである。これらの候補地では住民による反対運動があったものの、岐阜と北海道では処分場建設の話が進んでいるようだ。
 高レベル放射性廃棄物は地層処分という方法で処理される。廃棄物を地下深くに埋めるのである。その深さは1000m級にもなるという。なるほど、放射能レベルが高く危険な物は地下深くに埋めれば安全に思える。しかし、既に低レベル廃棄物のドラム缶で腐食・ひび割れが確認されているのだ。高レベルの放射能が漏れた場合、地下水は汚染され、地上に影響が出るのも時間の問題である。チェルノブイリの放射能が日本にも届いたことを考えると、地下1000mの深さが役に立つとは考えにくい。もう一つ忘れてはならない事実は、日本は地震大国であることだ。大地震の心配は無いとされた関西地区で阪神大震災があったことは周知の通りである。地震が少ないと言われる地域も残念ながら安心はできない。また、深く埋めることによって、トラブルへの対処をかえって困難にするという指摘もある。
 放射性廃棄物は長期間の管理が必要で、非常に危険な負の遺産と言える。負の遺産をこれ以上出さないこと、これが現代の私たちの責任であり、義務である。そのためにも私たち一人ひとりが目を向けるべき問題であろう。

 参考資料:西尾漠編 「原発のゴミはどこにいくのか」
 創史社(2001)

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