憲法92条 地方自治の本旨=まちの主人公は市民!

湘南市(政令指定都市)のオマケは産業廃棄物!?


小林



 今年1月1日のNHKニュースにおいて、市民にも議員にも説明されていない、平塚市、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町、大磯町、二宮町の3市3町が合併し湘南市をつくる構想が発表されました。吉野市長は、合併に関して市民への情報提供や意見聴取を行うと公言しましたが、出される情報は抽象的で具体性に欠き、また、9ケ月たった現在でも一度も公的な話し合いの場は持たれていません。具体的な方向性も予定も示されていません。こうした状況に不安を抱き、私は自分で情報を集めることにしました。また、普段取り組んでいる廃棄物問題の取材で岡山県倉敷市を訪れたところ、思いがけず市町村合併と廃棄物政策の関連を見つけたので紹介します。
 岡山県倉敷市は、瀬戸内海に面し水島コンビナートを有する人口約43.9万人面積298.92kuの中核市です。倉敷市は、昭和42年に3市が合併し現在の市域になりました。平成13年保健所政令市を経て、今年4月中核市になりました。岡山県は、平成10年岡山県ごみ処理広域化計画を策定後、平成11年からガス化溶融炉を中核施設とした環境関連産業を誘致する環境コンビナート構想を進めています。内容は、前回+αで紹介した神奈川県の全体構想と同じです。倉敷市は、中核市への移行に伴い岡山県の方向を受け継ぎ、PFI方式(民間資金を活用した社会資本整備)による新ごみ施設の整備事業(資源循環型廃棄物処理施設整備運営事業)を行っています。平成17年供用開始を目指し20年間稼動するガス化溶融炉を建設する予定です。注目すべき点は、300tの一般廃棄物と250tの産業廃棄物、下水汚泥、焼却灰を焼却処理する全国でも例のない規模であること、PFI方式によること、ガス化溶融炉であることの3点です。普通の市であれば産業廃棄物を管理する必要はありませんが、中核市となり県の事務が移管されることが理由となっています。産業廃棄物に相当する建設費、運営費は企業が負担するそうですが、実質市が建設した焼却施設で混合処理するのですから、市の税金が使われているとも言えます。本来、産業廃棄物は企業責任で処理しなければなりませんから、公的な機関がそれを補助するのは釈然としません。
 このように、合併によって中核市や政令指定都市は産業廃棄物の管理が県から移管されるのですから、政令指定都市を目指す湘南市に産業廃棄物の管理が移管されるのは当然です。したがって、湘南市の焼却施設建設地域には、97万人のごみに加え産業廃棄物も搬入されるでしょう。また、ガス化溶融炉は安全性が実証されていませんから健康被害が心配されます。湘南市研究会は、このことを明確にするべきでしょう。
 ところで、合併は地方分権を推進するのが目的です。地方分権の推進にあたり、地域のことは地域で決める自己決定自己責任が掲げられています。現在は平塚市のことは平塚市に住む人が考えて政策を進めることができますが、湘南市になると平塚市の問題を藤沢や茅ヶ崎の人たちにお伺いを立てて決めなければならなくなり、地方分権の理念に反します。さらに、地方自治法には、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、…」と書かれており、危険な産業廃棄物処理を地域が抱え込まなければならない理由など見当たりません。
 まちの主人公は市民です。市民が暮らしやすいまちになるためには、市民が社会参加して意見が反映できる仕組みが必要です。市域が大きくなり組織が大きくなると、問題解決への道のりが複雑かつ遠くなります。地方行政に求められているのは、地域のニーズに地域で応えていくことです。上からの指示や補助金を仰ぐことではありません。市民と行政が現実の問題に向き合い、考え、行動する、協働ができなければ、現在の様々な問題はいつまでたっても先送りとなるでしょう。また、問題を解決しない未来に住みやすい社会などありえません。
 湘南市について考えるより現実を考えることの方が、重要ですし住みやすい地域社会に向けての近道だと思います。だから何も合併しなくても、今の平塚市でいいと私は考えます。


    * 財界展望2002年10月号  *
  「神奈川県環境テクノロジーセンター」"官製NPO"の不透明な実態
前回の+αでご紹介した、県の全体構想に参加する上記のNPOの問題が指摘されています。全体構想に参加する平塚市に関連はないのでしょうか?

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