平塚市ゴミ白書をつくろう!no3

神奈川県廃棄物処理計画の問題点と平塚市のこれから


小林



2000年6月の国の廃棄物処理法が改正された。神奈川県は1998年からごみ処理広域化計画を進めている。2000年2001年には、神奈川県廃棄物処理計画策定方針や神奈川県廃棄物処理計画の策定に向けて、意見公募や県民討論会を開催した。 近々、県民意見を集約したという神奈川県廃棄物処理計画が公表されるであろう。
改正以前は、市民生活で排出されるゴミは、一般廃棄物と呼び地方の自治事務として市町村が策定していた。県は、産業活動によって排出される産業廃棄物の処理計画を策定していた。ところが、改正された国の廃棄物処理計画では、こうした区分をなくし産業廃棄物も一般廃棄物も県が処理計画を策定することになった。しかし、地方自治法では一般廃棄物は市町村の事務となっており、また、廃棄物処理法でも一般廃棄物処理は市町村の自治事務と明記されている。こうした矛盾を内包するため強制は出来ず県の廃棄物処理計画は市町村と調整することとなっている。しかし、実際にこうした計画が動き始めると、国や県の示した方向に市町村が対抗するのは難しい。
国や県がこのような計画を進めている理由は、昨今話題になっているダイオキシン対策として高温連続運転によるガス化溶融炉などを用いて焼却する。焼却によって、焼却灰を減量し逼迫した最終処分場不足の延命を図る。しかし、高温連続運転は大量のゴミを必要とするので、ゴミの自区内処理の垣根を外し広域化し他市のゴミを受け入れる。同時に処分に困っている産業廃棄物も受け入れゴミ量を確保する。そのために広域連合という新たな行政区をつくり運営する。広域連合では、コスト削減のため民営化が進む。広域連合はまた、市町村合併の前段階という意味もある。こうしたシナリオを国や県は進めている。しかし、大型焼却炉は安全性が実証されていない。大型なので建設にも運転にも莫大な費用が必要であるが、それは税金負担となる。産業廃棄物を一般廃棄物と一緒に処理する併せ産廃は、本来企業が負担する処理費用を税金でまかなうので違法である。(廃掃法3条)また、国の定めた循環型社会推進基本法の理念となったヨーロッパの拡大生産者責任(企業が製品の廃棄過程にまで責任を持つ概念)からもかけ離れた内容である。現在の世界の潮流は、拡大生産者責任に基づいた政策が進んでいる。また、広域連合は、廃棄物処理の他にも必要ならば事業を拡大できるし、事業が一度市町村から広域連合に移管すると市町村の仕事は消滅し住民の声も届かなくなる。つまり、自治権がなくなるのである。今回の廃棄物処理計画は、このように多くの問題を含んでいるが多くの人は気付いていない。
さて、こうした計画が進むと平塚市はどうなるのであろうか。平塚市環境管理課によると、三市二町の中で具体化はされていないそうである。しかし、平塚市大神の焼却施設は平成19年で停止予定である。また遠藤原2期の最終処分場も今後約15年で終わる。今年12月には、ダイオキシン類対策特別処置法が施行され規制が強化される。平塚市は、リサイクルを進めるためのリサイクルプラザの建設計画を進め、次期焼却施設に関しては非公開の審議会を立ち上げ議論している。県は、上記の計画を進め照会を求めてくる。平塚市は、廃棄物問題に関して十分に議論し今後の計画を市民と共同で進めるのであれば早急に取組みを始めなければらない。…・・もし、あなたの近所に突如大型の焼却施設建設が決まったらどうしますか?考えてください。
今回の神奈川県の廃棄物処理計画では、根本的な対応が考えられていない。例えば不法投棄・散乱ごみに対して、神奈川県廃棄物処理計画(原案)p8では、現状に対して充実と強化が課題となっている。p16では国へデポジット制度を要望となっているが、実際の事業はp23の意識啓蒙や監視、海岸清掃、研究などとなっている。しかし、これでゴミが減るだろうか。発生抑制(企業責任)が考えられるべきである。また税金支出には住民の声が反映されるべきであるが、今回の県の意見集約は強引ではなかっただろうか。市民自治の根幹を揺るがす広域化計画もドサクサにまぎれて行うのはやめて欲しいものである。このような神奈川県の廃棄物処理計画で、持続可能な社会(循環型社会)へのインセンティブ(誘引)が働くだろうか。したがって、平塚市には廃棄物処理法や地方自治法に則り、市民自治や市民の健康、地域の環境を最優先した取組みを期待する。
参考:ごみ処理広域化計画     山本節子著   築地書館 
*実質ごみ問題を書くのはこれで3回目になるので、通しのタイトル名を変更しました。 

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