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2つのボールの衝突 1999/02/25 (初版)  以下では、平面内のベクトルを習慣に従ってアルファベットの太字で表すことにしま す。また普通のアルファベット文字はその大きさを表すものとします。  2つのボールの完全弾性衝突の物理的性質は、次のように要約できます。
物理法則 2つのボールには、他からの力は働かないので運動量の和は変化しません。また、完全 弾性衝突では、衝突の前後で2つのボールのエネルギーの和は一定です。  さて、この2つの式を別の視点から眺めることにします。空間に固定した座標系では なく2つのボールの重心と共に動く座標系(重心系)でこの衝突を眺めることにします。 重心系とは、重心の位置がいつも原点となるように時間と共に動く座標系です。重心の 速度は、2つのボールの運動量の和を質量の和で割ったものとして表されるので、上の 1番目の式からこれは衝突の前後で変化しません。従って、次のことが導かれます。

重心系 となります。つまり、重心系では運動量の和は常に0(ゼロ)になります。これがミソ です。  重心系で眺めた2つの保存式(運動量保存とエネルギー保存)から次のような関係が 得られます。

重心系での速度  ここで、とてもシンプルで重要な性質が導かれました。つまり、重心系では (1)2つのボールの速度は互いに平行で反対向きである。 (2)それぞれのボールの速さは、衝突の前後で変わらない。  これを図で表現すると、
重心系での衝突 となります。  図にあるように、衝突前の2つのボールは互いに平行な直線上に沿って近づき、 衝突後は別の平行な直線上に沿って遠ざかります。  以上のことから、ボールの衝突を調べるには、重心系で眺めると簡単になります。 そして衝突の前後の関係が分かったら、元の実験室系に戻ればよいことになります。

実験室系に戻る  ここまでくれば、あとは衝突後の角度が分かれば問題は解けます。しかし、それは すでに知っていることです。  重心系では、それぞれのボールの速さは衝突の前後で変わらないので、これは丁度 壁との衝突と同じです。

ボールの衝突の角度 ただし、壁に対応する衝突面は上の図の赤い線のようにボールの接触点での接線となり ます。つまり、衝突後の角度は衝突前のボールの角度と衝突面の角度が分かれば決まり ます。

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