タイトル

- Last Modified '05/05/07 -

Apple社Macintosh上で動画を再生するアーキテクチャQuick Timeが登場したのが十数年前のこと。コマ落ちのカクカクした動画でしたが当時は本当に感動したものでした。それが今では、ケータイやPDAの世界にまで浸透し、性能もさることながら金銭的にも非常に身近なものになって来ました。GameBoy の世界でも数年前から動画を再生する仕組み(ハード、ソフト共)が開発・販売されていたのですが、いかんせんマイナーというかアングラな印象が強く、GameBoy の普及度に比べると知る人ぞ知るといったカンジになっています。

任天堂からの正式ライセンスを得て開発されている アドバンスムービーアダプタ に関してはポケモンコナンなどの動画を提供しているのですが、独自のコンテンツ(市販ソフトの焼き直しでないオリジナルな作品)が無いこと、再生専用であること、思ったようにインフラが整わない等の要因でやはり知名度は高くありません。

ここで紹介するプレイやん松下電器任天堂の共同開発による音声および映像の再生を可能にするアダプタで、通信販売による提供のみという点を除けば一般ユーザーに対するアピール度はかなり高い製品だと思います(値段も高すぎないし、サポート面でも安心出来る)。少なくとも私は買ってしまいました (笑)

という訳で、例のごとく使ってみた感想をダラダラと書いてみたいと思います。(このページでは画像をクリックすると拡大表示されます)

playanとまわるワリオのカートリッジ比較

まず、本体ですが非常にコンパクト。通常のGBAカートリッジより縦に若干長いくらいで本体に挿した時もほとんど出っ張りません。ぶっちゃけまわるメイド・イン・ワリオよりもコンパクトです。これなら持ち運ぶ時も使うときも邪魔になって困るようなことはありませんね。


playanとアドバンスムービーアダプタ

同系統の製品である アドバンスムービーアダプタ と大きさを比較してみるとコンパクトさは一目瞭然。これは使用するメディアの違いによるもので アドバンスムービーアダプタ がスマートメディアを使用しているのに対し、プレイやんではSDカードを使用。若干厚みはあるものの、サイズ的には比較にならないほど小さく、また記憶容量も桁違いに大きいです(値段もかなりしますが (苦笑))。まぁ、一番の理由は松下電器が開発に関わっているからなんでしょうけどね (笑)


playanとまわるワリオのカートリッジ比較

SDカードは別売りで、パソコンからのファイルの転送はカードリーダー経由で行います。最近のデジカメの中にはUSBケーブルで接続すると外付けデバイスと認識して自由にファイルの転送が出来る機種が増えているので、それを使うことも出来ます。現在持っていないという人でも、カードリーダー自体は現在では2000円くらいで入手できるので問題ないと思いますけどね(肝心のSDカードが高いですが (苦笑))。ファイルを書き込んだSDカードは本体の横から挿入。あとはGBA-SP(あるいはディーエス)のスロットに挿入して電源を入れるだけでOK!(ちなみに、旧型の GBA では仕様上の問題がありプレイやんを使うことが出来ないので御注意を)


音声/動画選択画面

GBA本体の電源を入れるとプレイやんのタイトルが表示された後、音声を再生するか、動画を再生するかを選択する画面になります。パソコンのマルチメディアプレーヤーのようにファイルの種類に関係なくシームレスにファイルを扱うのに慣れていると、動画と音声でいちいち再生するプレーヤーを使い分けるのは面倒ですが、普通の人はひとつのアプリケーションでファイルが一緒くたに管理されるより、プレーヤーによって再生できるファイルを分けた方が直感的に分かりやすいのかもしれませんね(まぁ慣れの話だと思いますけど)


サウンドプレーヤー

まず「きく」を選んだ場合、すなわちサウンドプレーヤーの方を使ってみます。再生出来るフォーマットはmp3のみですがビットレートは32kbps〜320kbps(可変対応)、サンプリング周波数は32kHz〜48kHz、日本語IDタグ対応と通常のmp3プレーヤーで再生出来るファイルは問題なく再生出来るはずです(詳細は公式サイト参照)。プレイやんではmp3にコンバートするアプリケーションは付属しませんが、フリーウェアを含め膨大なソフトがあるので問題ないでしょう。個人的に良いと思ったのは、早送りした時に音が出ること。私が普段使っているmp3プレーヤーでは早送りしている間は音が出ないのでポイントを見つけるのが難しいのでチョット羨ましいかも。ファイルはディレクトリ構成にも対応しており、ディレクトリ下のファイルを全曲リピート、1曲リピート、シャッフル再生することが可能なのもたくさん曲を保存する人には良いかもしれません。逆に残念な点はイコライザが付いていないので音質を変えられないこと。一応サラウンド設定とバスブースト機能があるのですがヘッドフォンを使用した時のみ有効で、しかも正直あまり劇的な変化はありません (苦笑)


メディアステージの媒体

次に「みる」を選んだ場合、すなわちムービープレーヤーの方を使・・・う前に動画ファイルについてはちょっと気になる点があります。再生可能なファイルのフォーマットについての細かい点は公式サイトを見てもらうとして、大まかにいうとプレイやんで再生出来るのは、DiGAというビデオデッキで作成したファイル(松下電器との共同開発ですからね (笑))と、他のフォーマットの動画ファイルをパソコン上で専用のソフト(Media Stage)を使って再生可能なフォーマットにコンバートする、この2通りです。前者についてはデッキを持ってる人はともかく新たに買うとなると大きな投資になるので、ほとんどの人は後者の方法で動画ファイルを作ることになると思います。しかし、現時点では Media Stage はWindows版しかないため、他のOSのパソコンを使用しているユーザーは手も足も出ない状態です。Windowsユーザー以外は御注意を。


Media Stageのスクリーンショット

Media Stageによるコンバート作業ですが、作業手順自体は非常に簡単。変換しようと思う動画ファイルを選択してコンバートボタンを押し、品質(高品質、標準、低品質)を選んでスタートすれば後は自動的に変換作業を実行します。低品質は本当にファイルのサイズを小さくすることだけを目的にしたようなカンジでカクカクとコマ落ち表示されるので、実質的には高品質か標準をメモリの残容量との兼ね合いで選ぶことになると思います。そんな訳でちょっと実験で動画ファイルのコンバートをやってみました。


使用したのは mpeg1 形式のファイル(SONY VAIOで録画したテレビ番組の動画ファイルで再生時間は1分30秒,画像サイズは352×240,ファイルサイズは14442KByte)を Pentium M 1.4GHz,メモリ512MBのパソコンでエンコードしたところ、通常品質(352kbps,240x176,30fps,ファイルサイズ4142KByte)へのコンバートは1分10秒、高品質(480kbps,240x176,30fps,ファイルサイズ5527KByte)へのコンバートは1分25秒、と実際の再生時間とほぼ同じくらいの時間がコンバートにかかりました。

また、普段私は SANYO の Xacti (DMX-C1) という動画デジカメを使っているのですが、これで撮影した動画のファイル形式(mpeg4形式、拡張子はmp4)の場合、Media Stage では読み込むことが出来ず、やむなくDiv-Xコーディングの動画ファイルにして、プレイやん用のファイルにコンバートしたところ、元のファイル(MPEG4(Div-X),再生時間9秒,640×480,958KByte)に対して、通常品質(352kbps,240x176,30fps,ファイルサイズ606KByte)へのコンバートは11秒、高品質(480kbps,240x176,30fps,ファイルサイズ475KByte)へのコンバートは10秒、と実再生時間よりも若干長く時間がかかってしまいました(誤差の範囲だと思いますが)

もちろん、もっと性能の良いパソコンを使えばエンコード時間は早くなると思うのであくまでも目安ということになりますが、某所のレビューでは Pentium4/2.4GHz のマシンを使って再生時間の8割程度のエンコード時間がかかっているので大幅な時間の短縮は望めないのかもしれません。もっとも、動画のエンコード作業の苦労を知っている人ならばこれくらいの時間ならは許容範囲・・・どころか早いと思うんですけどね。ただ、たとえば毎日30分のテレビ番組を録画しててそれを移動中にプレイやんで見たいとかいう場合、実際に録画する時間+パソコンに録り込む時間+Media Stageで変換する時間がかかることになるのでよほど時間に余裕のある人じゃないとすぐに挫折してしまいそうです(もそういう使い方をする人はDiGAを買えってことなのかな (笑)?)。たまに、遠出する時に退屈しないように2時間ドラマとか映画を見たいとかなら、前日寝ている間にエンコードさせておけば良いし、重たいノートパソコンやポータブルプレーヤー持っていかずに済むのでかなり便利かな、と思ったりして。


ムービープレーヤー・猫

プレイやん本体には動画のデコード用のチップが積まれているらしく再生される動画は非常に滑らかで、ケータイの動画やテレビ電話の映像などのようなコマ落ちは見られません(15fpsの高圧縮で変換したファイルは別として)。私が持っている SHARP の SL-C3000 (Linux Zaurus) というPDAにも動画プレーヤーが搭載されているのですが、当然PDAが主用途なのでデコード用のチップなど搭載している訳もなく(ソフトウェアエンコード)同じファイルを再生してみても全然動きが遅くて使いものになりませんでした。特に早送り/早戻しする時にその違いは顕著で、プレイやんは見たい場面がすぐに見つけることが出来ます。


ムービープレーヤー・デカ

動きが滑らかなのもさることながら、画像の品質についてもかなりのレベル。というか 240x176 というサイズにリサイズされることで粗が目立たなくなるという話も無いことは無いのですが (笑)、今回変換に使用したファイルに関して言えば高品質で変換した場合にはブロックノイズなどはほとんど見えず、スタッフロールなどの文字もきちんと判別出来るレベルでした。標準レベルでもそれほど目立ったノイズは無かったのですが、あまり動きが大きくないファイルだったからかな?アニメなどを変換した場合には結構違いが出てくるような気がします。実際問題として、高品質と標準の場合ファイルサイズに劇的な違いがある訳ではなく、SDカードの容量が少なくてファイルを転送出来ないという場合以外は、高品質で変換することをオススメします。


GBAとNDSの違い

オススメといえば、プレイやんはディーエスで使うことを強くオススメします。内部的な処理はプレイやん本体が行うとしても、画像や音声の出力は当然液晶ディスプレイやスピーカーの性能によって変わります。そうなると、木目が細かく明るく見やすい液晶を持ち、ステレオスピーカーを搭載しているディーエスの方がより快適に楽しめます。プレイやんでは映像の色合いの調整などは出来ない(明るさの調整は出来るけど白トビするだけなので実用的ではない)のと、変換されるファイルの彩度が若干落ちる傾向があるように思われるので(単にリサイズされて平坦になるだけなのかもしれないけど)、ハードウェアの違いは結構大きいと思いますよ。


ヘッドフォン端子

あと注意といえばヘッドフォン端子。GBA-SP(あるいはディーエス)本体のヘッドフォン端子ではなく、プレイやん自身に装備されているヘッドフォン端子にヘッドフォンを接続すること。また、音量調整も本体に付いているヴォリュームではなく、アプリケーション上で示されるように十字キーの上下で変更します。サウンドプレーヤーでのサラウンドやバスブーストはこの端子からしかサポートされていないし、音を大きくしようとして本体のヴォリュームを上げると本体のスピーカーから大音量が出て周りに迷惑をかけてしまうことになるので気をつけましょう (笑)


正直、ネタとして買ったようなものだったのですが、実際に使ってみると意外に使える、というか用途によっては市販のポータブルマルチメディアプレーヤーよりも実用に耐えるものだと感じました。まったく何も持っていない人はSDカードとGBA-SP本体(あるいはディーエス)を購入しなければなりませんが、十分実用に耐えうる256MBのSDカードは6000円前後で買えるし、GBA-SPなら実売9000円くらいで買えます。プレイやんは変換ソフト込みで6000円ですから2万円チョットで動画と音楽を持ち運んで楽しむことが出来るようになるのです。しかも市販のソフトしか再生出来ないというのではなく、自分が録画した番組や撮ったムービーも変換して再生出来るのですから本体だけで数万するハードよりも断然コストパフォーマンスは高いと思います(まぁ保存出来るファイルの容量が違うというのはありますけど)。個人的には、任天堂製品の動画やサウンドをプレイやん用のファイルにして配信したりしてくれると面白いと思うんだけど、考えてみればわざわざプレイやんに転送しなくてもパソコンで見られるんだから意味無いよね (苦笑)。アドバンスムービーアダプタ みたいにビデオを市販する・・・としても高いだろうし、誰も買わないだろうな(´・ω・`)


ガレージゲーム

そうそう、書くのすっかり忘れてた (笑)。なんと音楽や動画の再生以外にゲームも出来たりします(→ガレージゲーム)!まぁゲームといっても凝った物ではなく、PSなどでローディング中に遊べるミニゲームみたいなモノなんだけど、プログラムも扱えるというのは個人的に結構大きいかも。プログラムの仕様を公開してユーザーが自由にプログラムを作れるようになると良いのになぁ。まぁ、現実的にはかなり難しいとは思いますけど。それが無理ならせめて初期のゲーム&ウォッチを移植して・・・ってそっちも無理か (苦笑)


ソフトウェアのレビューはこちら (Update!)