3月8日レオンハルト・チェンバロ・リサイタル
(カザルス・ホール)


デデ:音楽会ひさしぶりだニャ。

CoCo:ばぶるがはじけてから、どうもいまいちだね。呼び屋さんの方も、お客さんの方も。

ガンバ:去年あたりから特にひどくなってない。それまではまだ、ばぶるの頃の契約が残ってたみたいな感じで、去年からすごく落ち込んでるよ。

ブチッケ:どうでもいいっす。安くていい音楽が聴けりゃ。

ガンバ:でも、音楽会の値段はどんどん上がってくね。

(わらわらわらわら・・・ネコどもはお茶の水の雑踏をくぐり抜けカザルス・ホールに到着。)

D:明大の記念館が矢板で囲われて、もうすぐ取り壊されるみたいだね。

G:気の利いた建物ってどんどんなくなるね。

(4匹のネコ達はモギリのおねーさんの足下をすり抜け、客席にもぐり込みます。入りは7割程度。それぞれ適当な場所を見つけたようです。デデは2階のバルコニー、ガンバはもちろんお客さんの膝の上。CoCoは図体がでかいので、1階の奥の席に陣取ってます。ブチッケは、舞台に上がってチェンバロの縁にのっかりました。)

(デデの独白)
一曲目のデュモンのアルマンドはまあまあかな。

ルイ・クープランて好きなんだよナア。レオンハルトおじさんはニ短調の曲を6つ選んで組曲にしているけど、ボクは最初のプレリュードが好き。拍子も小節線も、音符の長さも書いてない、全音符とスラーだけの奇妙な楽譜から、どんなイメージを引き出すかっていうのがこの手の曲の勝負どころだけど、レオンハルトおじさんのの解釈はテンポの揺れ、フレーズの作り方、急速なスケールの後のゆったりとした歌い回しなんか、気持ちいいねえ。アルマンドをすごくゆっくり弾いて、クーラントはきびきびと弾き進む。よくクーラントって二拍子と三拍子の混合だっていうけど、この演奏を聴いてると、それが本当によくわかる。というか、聴いてるうちに拍子がだんだんわからなくなってきてクラクラする。人によっては縦の線が揃わない、とかいって嫌うけど、ボクは好きだニャー。サラバンドもかなり速めのテンポ。

ルイ・クープランをもう一曲。『ブランクロシェ氏のトンボー』だよ。譜面を見るとすごく単純な曲。それだけにチェンバロのレジスターの対比、それにテンポ感などかなり思い入れの強い表現ができる曲。確かレオンハルトもレコードではそんな演奏だったはずだけど。今晩はあっけないほどあっさりと弾き終わってしまった。それでも弔いの鐘といわれる後半部分の低音の鳴らし方、高音に新しいフレーズがでてきたときの音色の対比なんかはさすがといった感じ。クープランは全体に単旋律の曲を軽快に弾き進めたって感じかなあ。

ダングルベール(1635-91)のプレリュードは、クープラン(1626頃-61)に比べるとわずかに時代が後なだけに豪勢に鳴らしていた。

今日一番楽しみだったのはフローベルガー(1616-67)。組曲19番。これはクープランのように勝手に曲を選んでってものじゃなく、形がしっかりしている組曲。ところがなぜか18世紀の組曲と違って、アルマンド、ジグ、クーラント、サラバンドの順番に演奏されることが多い。なぜだろう???クープランとは一転してかなり思い入れの強い演奏だな。特別テンポが遅いとか、特定のフレーズを強調したりってわけじゃないけど、でもややもするとある瞬間が永遠に続きそうな錯覚に陥る。つまりぶちまけた話し、音楽が流れない。

ガンバ:グーグー

(デデの独白の続き)
組曲よりも格段に面白かったのは、バラのトッカータ、ファンタジア、リチェルカーレだな。これこそフローベルガーがフレスコバルディから学んで、アルプスの北にもたらしたもの。これらの曲ではレオンハルトの変幻自在なテンポやリズムが、実に生き生きとした音楽を作り出している。確かレオンハルトはフレスコバルディーでも以前いい演奏をしたニャー。それと対照的にバッハを聴いて本当によかったと思った試しがないニャ。レコードでは数々のバッハの名演があるのに。どうも形がしっかりした音楽よりも、時間の中に漂うような音楽がこの数年のレオンハルトにはしっくりきているみたいだ。

フローベルガーをもう一曲、『ブランクロシェ氏の死に寄せるパリで作られたトンボー』。フローベルガーは生涯フーテンの生活をしていたような人だから、人生の悲しみとか、はかなさってものを表現するとすごくうまい。おいらみたいだニャ(ナンチャッテ)。この曲もそのひとつ。クープランの同名の曲よりもかなり凝った作り。それに、拍節の定かでないフレーズがちりばめられる。ちょっと素人じゃ手に負えない曲だけど、レオンハルトの手にかかるとへんてこりんなフレーズがピタッとはまっていく。でもクープランの時と同じく、音楽が流れない。永遠の時間の中に漂っているようで、思い入れが強すぎるっていうんじゃないけど、デデにはちょっとしっくりこない。

ガンバ:グーグー

(デデの独白の続き)
後半はフォルクレ(1672-1741)の組曲第5番。もちろんセガレがチェンバロ用に編曲したやつだよ。レオンハルトおじさんは7曲あるうちから5曲しか弾いてくれなかった。しかも、あの、あの、ジュピターをカットしちゃって。ここらへんの年代になると、もうロココっていってもいいんでしょうか?小粋で意味不明な題名の付いた曲が並んでる。デデの小部屋に最初に書いた記事との関係で、どうしてもボアソンの話をしたくなっちゃう。かなり速めのテンポできびきびと弾き進んでいくし、楽想の変わり目には大胆なブレークが入ったりして、ハッとさせられるところもあったけど、でもやっぱり中野振一郎の方がちょっと面白いかな。

ガンバ:(ガバッと飛び起きて)私もそう思う。

(帰りの地下鉄の中)
デデ:あのチェンバロの音はどうだった。

ブチッケ:ブルース・ケネディー作のミートケ・モデルの2段。やっぱし、ジャーマンすね。ギンギンに鳴ってました。

デデ、CoCo、ガンバ:ホント!?

CoCo:やっぱり、そばで聴けば鳴ってたんだ。しかし、カザルス・ホールって古楽には最悪だねえ。

(一同うなづく)


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