南イタリア発
“タランテッラ”─地中海の民の音楽

アコルドネ
マルコ・ビズリー(テノール)
ピノ・デ・ヴィットリオ(テノール/バッテンテ・ギター)
アルフィオ・アンティコ(タンバリン/ヴォーカル)
グィド・モリーニ(チェンバロ/オルガン)
ステファノ・ロッコ(リュート/ギター)
ファビオ・アクールゾ(リュート)
2004年7月22日 紀尾井ホール


(麹町、明治珈琲館にて)

デデ: タランテラというと、どうしても3連符で目まぐるしく駆け回る音楽を思い出しますが、今日はそのルーツとでも言うべき、イタリアの土俗的な音楽の数々を堪能いたしました。

CoCo: タランチュラに噛まれた患者を癒す、ヒーリング・ミュージックかと思いきや、一言では片づけられない民衆音楽のエネルギーを感じましたですニャー。

ガンバ: あの18歳まで羊飼いをやっていて、その後大道芸を披露しているところを見いだされたっていう、アルフィオ・アンティコだっけ、あのお兄さんは面白かったわねぇ。手作りのタンバリンを大小7つか8つぐらい叩き分けていたでしょ。みごとなリズム感。繊細なピアニッシモから、ドラムセットよりも大きな音まで自在に操って、すごかった。

ブチッケ: え〜と、曲目としてはですニャー・・・おもにナポリ、プーリア、それにシチリアの古い民謡というのか、カンツォーネというのか、まあ、そんなようなものをベースにして、自由にアレンジした聞かせてくれたわけですが、CoCoも言っていたようにその生き生きとした活力に圧倒されましたです。

CoCo: 「どこをタランチュラに噛まれたって? スカートの中かい? ゴシキヒワと白鳩が接吻するとこかい? 愛し合うって素敵なこと。どうすりゃいいか知っているだろ?・・・」 みたいな他愛ないというか、素朴な歌詞の曲がほとんどだったけど、無窮動風のすさまじいテンポで踊り続け、解毒作用をもたらすというのか、患者をハイな状態にして、まあ、精神的・肉体的苦痛から解放するってことですニャー。まあ、タランチュラは口実で、実際は日々の辛い労働の憂さを晴らすための曲であり、踊りなんじゃないかなぁ。

デデ: 一方で、「僕の愛しい人は故郷の山、故郷の海に暮らしている」みたいに、しっとりとした叙情的な歌もあって、これはアラブ・アフリカ風だったかな。うんヨーロッパの旋律とはちょっと違う味わいの曲もありました。

ガンバ: それから、ナンセンス・ソングというのか、ただの語呂合わせみたいな何の意味もない歌詞とか。でもパルラーレ・カンタンドって言うのかしら、歌が歌だけで存在せずに、語ってしまうのよね。意味はわからなくても、っていうのか、そもそもどうでもいいのかもしれないけど、この語りの音と響きが素敵なのよねぇ。

デデ: マルコ・ビズリーというテノールとグィド・モリーニという鍵盤奏者が中心のユニットで、ライブ活動に特化したグループだそうですが、太鼓のアルフィオ・アンティコや歌とギターのピノ・デ・ヴィットリオなど、芸達者な人たちでした。モリーニは去年エンリコ・ガッティのグループで来日して、素敵なコンティヌオを披露してくれた人ですニャー。彼が弾いていたのは、最初クラヴィ・オルガンかなって思ったんだけど、どうやら巨大なイタリアン・チェンバロの鍵盤部分をポジティフの上に乗っけていただけみたいですニャー。このイタリアンはなかなかいい響きでした。

ブチッケ: ピノ・デ・ヴィットリオという人が弾いていた、バッテンテ・ギターというのもいい響きだったよね。形はギターなんだけど、裏板部分がリュートみたいに出っ張っていて、8×4の複弦できらびやかな音でしたニャー。リュートも野太い音がして、ピック弾きだったから、ひょっとしてウードだったかな。よく見えなかったけど。

ガンバ: プログラム全体の盛り上げ方もよかったんじゃない。いつもそうなのか、今日が特別だったかはわからないけど、ノリノリ状態で、30分以上アンコールを続けて、最後にはチェンバロ伴奏でオー・ソレ・ミオまで飛び出しちゃって、なかなかサービス精神も旺盛な御一行だったわね。


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