北京京劇院



龍鳳呈祥(りゅうほうていしょう)

2001年11月26日 芸術劇場 中ホール


デデ: いやあ、絢爛豪華な舞台でしたニャー (=^^=)

ブチッケ: さいざんす。京劇というと道具立てはすごく地味。というか、通常の出し物では大道具は使わないわけですが、今回の公演は新演出ということもあって、なかなか凝った舞台でしたニャ。

デデ: 「龍鳳呈祥」という演目ですが、上演プログラムによると、三国志の50回以降の内容を整理してまとめたもののようです。伝統演目の名前でいうと、「取桂陽」、「甘露寺」、「美人計」、「回荊州」ということですニャ。

ガンバ: 2時間ほどの上演時間内に、2組のカップルが誕生して、なかなかおめでたい出し物ね。

CoCo: そう、あの名将、趙雲まで結婚しちまうんだから、なかなかめでたい。それに三国志の主な登場人物がほぼ全員出揃って、衣装もきらびやかなこと。

ブチッケ: そうでしたニャー。武将の衣装のゴージャスなことといったら。本当に溜息が出そうなくらいでした。

デデ: ストーリーはまあ、単純明快。赤壁の戦いで魏の曹操軍をコテンパンにやっつけた呉・蜀連合。これでいわゆる、諸葛亮の「天下三分の計」が成ったかに見えたんですが・・・まあそう簡単にはことが運ぶはずもなし。

ガンバ: まだ、魏の残党もいる。で、諸葛亮が「戦わずして桂陽を取れ」と趙雲に命じたわけね。しかも、「龍たるものは鳳に出会ったら七分を譲れ」となにやら意味ありげな言葉を添える。龍はもちろん趙雲の字、「子龍」を指しているわけだけど、鳳とは如何に。

CoCo: 桂陽の太守、趙範は趙雲との戦にまるで自信がないばかりか、兄嫁で寡婦の樊玉鳳(はんぎょくほう)の助言を聞き入れて、戦わずして投降。趙雲と同郷の趙範は義兄弟の契りまで結んでしまうんですニャ。

ガンバ: それでもって、趙範は樊玉鳳との結婚を盛んに勧めるわけですが、趙雲のほうは、義兄弟の姉と結婚するのは道理に反するとかなんとか、わけのわかんないことを言い出して、結局、単身桂陽を攻め落とそうとするわけね。ところが戦場に出てきたのが武者姿の樊玉鳳。これがまさに「鳳」だわね。

CoCo: 戦っているあいだに、趙雲はメロメロになっちまうわけですニャー。

ガンバ: この「取桂陽」で、樊玉鳳が登場する場面は息をのむほどきれいだったわね。綸子をつけた女将軍の姿なんだけど、最初はホリゾントにだけ照明が当たっていて、影絵のように登場。ひとしきり踊り歌った後で突然スポットライトが当たって、絢爛豪華な衣装が浮かび上がったでしょ。

デデ: うん、今回の照明の使い方はうまかったですニャー。まるで、亡くなったストレーレルの光の使い方みたいでしたニャ。

CoCo: ま、ともかく、ご両人が仲睦まじく(?)戦っているところに、劉備と諸葛亮が登場して、「まあまあ」と取りなし、めでたく結ばれるという、かなり都合のいい筋立てですニャ。

ブチッケ: さてさて、呉では知将(?)の誉れ高い周瑜(しゅうゆ)が「美人の計」を練っておりましてな、孫堅の娘つまり孫権の妹である孫尚香を、夫人を亡くしたばかりの劉備に嫁がせるという口実で、劉備をおびきよせ、亡き者にしようというわけですニャ。

ガンバ: ところが諸葛亮がこれを逆手にとって、呉の国中に婚姻を触れて回らせる。この噂を聞きつけたのが呉の老臣、喬玄。呉蜀連合を固めるためにもいい話じゃないかっていうわけで、呉国太(呉の皇太后)に伝える。ところが皇太后の方は、孫権・周瑜の陰謀を見破っていて、孫権を呼びつけ、自分の妹をダシに使って、暗殺を企てようとはけしからんと叱りとばす。そうこうするうち、自ら甘露寺で劉備の人物を見極めようということになるわけね。皇太后を演じたベテランの趙葆秀っていう俳優の唱はみごとだったわねぇ。

CoCo: はい、京劇では年輩女性というと、喜劇的な世話焼き婆さんといった役が多いんだけど、この人の威厳があって声量豊かな歌唱はなかなか聞き応えありました。それに続いて劉備が登場し、ひたすら自分の手柄話を語って聞かせる。劉備役のベテラン譚孝曾も軽やかに歌って聞かせましたニャ。

デデ: それでもって、すっかり皇太后に気に入られてしまった劉備。孫権・周瑜が手配した刺すお客さんなんかも登場するんですが、すごすごと引き上げて、メデタシメデタシの祝言。

ガンバ: あの道化役の刺客もなかなか芸達者だったね。それに続く結婚の場面は短いけれども豪華だったわ。

デデ: ところが政略結婚だったはずなのに・・・当人同士がアツアツ。いつまで経っても呉の国から引き上げようとしない劉備に業を煮やしたのが、付き従っている趙雲。諸葛亮から授けられた計略を用いて、「曹操が荊州に攻めてきた」との誤報を流す。荊州は桃園の三兄弟の本拠地ですから、こりゃまずいってわけで、劉備もやっと重い腰を上げる。孫権の妹で、劉備夫人となった孫尚香も、心の内では密かに孫権を軽蔑しきっている。というわけで、趙雲を伴い荊州への逃避行が始まるわけですニャ。

ガンバ: そうはさせじと行く手を阻むのが、周瑜。この人は長い綸子をプルプル震わせて怒りを表すのが特徴ね。ベテランの宋捷のはまり役だけど、なかなか唱も演技も客席を湧かせていたわねぇ。気が短くて、怒りっぽい中間管理職って感じかなぁ。

ブチッケ: そういえば、新しいプロダクションというわけで、全体の演出も宋捷が担当したそうですな。登場人物が多いし、めまぐるしく入れ替わるし、なかなか大変な舞台だったと思うけど、うまく交通整理ができていたんじゃないかな。さっきも話題になったけど、照明と舞台装置がかなり凝っていたよね。

ガンバ: そうそう、きれいな舞台だったわねぇ。最後は、趙雲、張飛、それに趙雲夫人の樊玉鳳まで登場して、大乱闘。それを後目に、劉備は荊州に落ち延びる。最後には全員が引き上げてメデタシメデタシ。

デデ: というわけで、なかなか絢爛豪華な舞台、そしてベテラン俳優の立派な歌唱、あでやかな衣装、そして切れ味のいい立ち回りと盛りだくさんな内容で、とても楽しめた一夜でした。

CoCo: あ、それから、最初にプロローグのようなものがついていて、二胡の姜建華が名人芸を披露しておりました。音楽は唐建平という人が、(たぶん、伝統音楽の手法に基づいて)作曲した新作だそうですニャ。


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