保育MLでの保育制度を巡る議論のサマリーです。 あるべき保育制度を考えるため、保育制度と、保育の質を低下させる要因(リスク)とその可能性の大きさについて、まとめてみました。 辛口応援団サイドが提示した「望ましい保育制度」の概要は、以下の通りです。
リスクの種類 | 措置制 | 現行 | 望ましい保育制度 | |
1.認可園に入れない | リスクの大きさ | 大 | 大 | 小 |
運動系コメント | 行政の怠慢 | 行政の保育切り捨て | 極度の質の低下が起きる | |
辛口系コメント | 構造的問題。行政は保育需要に応えるインセンティブを持たない。 | 保育業界への参入障壁が高すぎるため、保育園が増えない | 質・量共に充実 | |
リスク軽減法 | 引っ越しまたは、保育運動。 | 引っ越しまたは、保育運動。 | 引っ越しまたは、自営 | |
2.悪質な保育を受けるリスク | リスクの大きさ | 大 | 中 | 小 |
運動系コメント | 行政の怠慢 | 行政の怠慢 | 表向きだけ繕った悪質な保育が増える | |
辛口系コメント | 構造的問題。認可園は良質な保育をするインセンティブを持たない。悪質な認可園とわかっていても措置される場合がある。無認可園には市場の失敗が起きる。 | 保育の質を正しく評価する仕組みがないために、大幅にはリスクは減らない | 悪質な保育園は廃園に追い込まれる。 | |
リスク軽減法 | 保護者会活動で園を変える。ただし、園や行政に妨害される場合有り。確実なのは、引っ越しまたは退園のみ。 | 情報収集によりそのような園を避ける。転園。保護者会活動で園を変える。 | 情報収集によりそのような園を避ける。転園。保護者会活動で園を変える。 | |
3.閉園になるリスク | リスクの大きさ | 大 | 大 | 小 |
運動系コメント | 公立および豊富な資産に担保された法人によるため、自治体リストラ以外ではまず起きない。 | 公立および豊富な資産に担保された法人によるため、自治体リストラ以外ではまず起きない。 | 営利園は閉園する確率が高い | |
辛口系コメント | ちょくちょく起きている。 | 悪質な保育園ならば、閉園になる確率は高い | 買収や営業権売買を可能にして、保育が継続できるようにする。 | |
リスク軽減法 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 保護者会による運営に切り替える | |
4.園を追い出されるリスク | リスクの大きさ | 中 | 中 | 小 |
運動系コメント | そのようなことは起きない | そのようなことは起きない | 手のかかる子やアトピーの子や熱心な親の子は追い出される | |
辛口系コメント | 園が利用者に嫌がらせをして追い出す可能性がある | 園が利用者に嫌がらせをして追い出す可能性がある | まともな園を探して転園することが可能。園のモラルが向上するので、このようなことが起きる確率は減る | |
リスク軽減法 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 保護者会活動、オンブスマン制度の利用 | |
5.障碍児等が入園できないリスク | リスクの大きさ | 中 | 中 | 中 |
運動系コメント | 行政の怠慢 | 行政の怠慢 | 障碍児は追い出される | |
辛口系コメント | 園側が嫌がる場合もある | 園側が嫌がる場合もある | 適切な財政補助が必要 | |
リスク軽減法 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 保育運動 | 保護者会活動、オンブスマン制度の利用 | |
6.公立園がモラルハザードを起こすリスク | リスクの大きさ | 大 | 中 | 小 |
運動系コメント | 行政の怠慢および利用者の努力不足。 | 市場化により保護者と保育者の連携が妨げられる | 市場化により保護者と保育者の連携が妨げられる | |
辛口系コメント | 構造的問題。モラルハザードが最も起きやすいのが公立 | 市場化によりやや軽減 | 現場への分権化により、モラルハザードを防ぐ | |
リスク軽減法 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 情報収集、保護者会活動、オンブスマン制度の利用 | |
7.社会福祉法人・財団法人立園がモラルハザードを起こすリスク | リスクの大きさ | 大 | 中 | 小 |
運動系コメント | 行政の怠慢および利用者の努力不足。 | 早期教育などの望ましくない競争が起き、保育の質が悪化する。 | 早期教育などの望ましくない競争が起き、保育の質が悪化する。 | |
辛口系コメント | 待機児の存在、私立優先の入園措置により、市場メカニズムが極めて弱くしか働かない | 待機児が多い地域では、市場メカニズムの力が弱い。 | 競争が「正しく」おこなわれることを保障し、モラルハザードを防ぐ | |
リスク軽減法 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 情報収集、保護者会活動、オンブスマン制度の利用 | |
8.その他の園がモラルハザードを起こすリスク | リスクの大きさ | 大 | 大 | 小 |
運動系コメント | 市場原理によって必然的に起きる | 市場原理によって必然的に起きる | 市場原理によって必然的に起きる | |
辛口系コメント | 市場の失敗 | 市場の失敗 | 競争が「正しく」おこなわれることを保障し、モラルハザードを防ぐ | |
リスク軽減法 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。他に情報収集活動 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。他に情報収集活動 | 情報収集、保護者会活動、オンブスマン制度の利用 | |
9.延長、夜間、休日、年末年始の保育など、利用者のニーズに合った保育サービスが受けられない | リスクの大きさ | 大 | 中 | 小 |
運動系コメント | 行政の怠慢 | 行政の責任放棄 | 保育の質がおざなりにされ、保育者の負担が増える | |
辛口系コメント | 構造的問題。保育園が利用者のニーズに応えるインセンティブがない。 | 待機児が多い現状では、保育園が利用者のニーズに応えるインセンティブが依然弱い | 保育者の負担と利用者のニーズの間のバランスを適切にとることができる | |
リスク軽減法 | 保護者会活動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 情報公開活動および保育運動。ただし、園や行政に妨害される場合有り。 | 情報収集、保護者会活動。 | |
10.低所得者が入園できない | リスクの大きさ | 中 | 中 | 小 |
運動系コメント | 所得による差別を受けない | 所得による差別を受けない | 低所得者は安かろう悪かろうの保育に甘んじるしかない | |
辛口系コメント | 地域によっては、親の労働時間の長い高所得世帯に、優先順位で負けて入れない場合がしばしばある。 | 地域によっては、親の労働時間の長い高所得世帯に、優先順位で負ける入れない場合がしばしばある。 | 低所得者には適切な料金軽減料金制度が必要 | |
リスク軽減法 | 保育運動 | 保育運動 | 保育運動、オンブスマン制度の利用 | |
11.保護者と保育者のトラブル | リスクの大きさ | 大 | 中 | 小 |
運動系コメント | 「お客さん」ではないので、保育者と保護者の人間同士の関係が築けた。 園によっては、保護者会の結成を許さない、保護者会の人事を園が牛耳るなどの現象があったが、 これは行政側の怠慢によるものである。 | 市場化により保育者と保護者の関係が損なわれる。 | オンブスマン制度は保育者と保護者の信頼を損ねる | |
辛口系コメント | 保護者および子どもの位置づけが明確ではない仕組み上、泣き寝入りが多かった。 | 契約上の立場は保育者と保護者は同等になったが、運用上同等であることを保障する仕組みがない | 保護者の立場を保障する仕組みができ、泣き寝入りせずに済む。 「オンブスマンや市場化で云々」が本当なら、保健所があるがゆえに飲食店と客は良い関係が築けないはずだ。 | |
リスク軽減法 | 保護者会活動 | 保護者会活動 | 保護者会活動、オンブスマン制度の利用 |