広島での「少子化を考える市民会議」参加レポート

このイベントは、全国八個所でおこなわれた「少子化を考える県民会 議」シリーズのラストです。11/4に東京で、県民会議の結果をま とめる全国会議がおこなわれます。

一般参加者の内訳は、
福祉関係の学生 1/4
年配の男性 数名
40〜60代女性 半分強

という感じで、託児付きイベントなのに、子育て真っ最中の母親の姿 が少ないのが印象的でした。PRが足りないということもあるかもしれ ません。わたしは厚生省のページで知りましたが、子供の通う保育園 からは通知があったわけではありません。

開会挨拶

広島県知事 藤田雄山

基調講演「少子社会の見通しと課題」

厚生省人口問題審議会専門委員 岡崎陽一
二人の息子のうち、片方の妻は専業主婦、片方の妻はフルタイム。 どちらの息子も娘一人づつ。フルタイム勤務の妻を持つ方の息子と 同居中。孫は公立保育園に通っているが、午後四時半までしか保育 時間がないため、七時半までベビーシッターを雇い、母親が帰る九 時までは、じじばばで子守りをしている。72歳。
  • 少子化の原因は、晩婚および高学歴化。これ自体は嫌うべき現象で はない。独身者が結婚する気がないわけではない。ほとんどの独身者 は結婚するつもりでいる。一組の夫婦が産む子供の数も、二人強で横 ばいである。
  • 育児の心身への負担、経済的負担、育児と就労の両立の困難さは、 独身者の晩婚化にも影響している。育児の条件整備が必要。
  • 中位推計(これを贔屓目に見ても、と言っていた)でも、生涯未婚率 は14%、一組の夫婦が産む子供の数も1.96人に落ちる。合成特殊出生率 は1.61(高位推計でも2を切った)。現在65歳以上の人口比は15.6%だが、 2050年には32.3%になる。現在の日本の人口は1.27億だが、2050年に は1億、2100年には6700万に減る。
  • フランスは、普仏戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦と、連続 してドイツにボロ負けした。低出生率のせいと言われている。日本の 経済力にも不安。競争がなくなって活力もなくなる。
    わたしは「クルーグマンの良い経済学悪い経済学」を斜め読みした だけだが、このあたりは「比較優位」を誤解した発言に聞こえる。
  • 少子化は、住宅問題、環境問題など、プラスに働く側面もあるとは いえ、途中でストップする必要がある。不安定な人口構成は問題。
  • 生む生まないは、個人の自由。強制はできない。
  • 35歳未満の独身女性に結婚についてアンケートをとったら、
    33% 専業主婦志望
    30% 出産退職後、再就職
    19% 育児と仕事の両立
    4% 共働き子供なし
    3% 一生独身子供なし
    11% 無回答
    となった。再就職・両立組のバックアップが必要。 女性の生き方を、画一化する必要はない。世間でも、そのことを 認めるべきである。
  • 男性の働き方にも問題。欧米では、一部のエリート以外は、さっさ と家に帰る。日本男性の家事・育児時間は他国と比較して異常に短い。
  • 人生の最初と最後には、地域社会の十分なサポートが必要。

    感想: あまり詳しい話は出なかったが、少子化については世間でいろいろ 誤解されているので、この程度のレベルでちょうどいいのではない か。さすがに話し慣れていた。

    財団法人ひろしまこども夢財団の紹介

    昨年2月に設立
    電話相談
    一時保育・休日保育への助成
    東広島市の病児保育事業

    パネルディスカッション「少子化と子育て支援」

    コーディネーター
    毎日新聞論説副委員長 宮武剛
    パネラー
    お茶大教授 袖井孝子 子どもなし
    広島県賀茂郡大和町長 岡田孝裕 共働き子ども3人
    エッセイスト・フリーライター 豊原ミツ子 子持ち
    ひろしま女性未来会議メンバー 生村紀子 子持ち
    広島県保育連盟連合会 綿貫博 私立認可保育園の園長
    袖井
    「少子化」は1.57ショック('91年)以来の新しい言葉。日本 の適正人口は不明(7000万くらい?)だが、いびつな人口構成が問題。 若い人に、将来への不安が大きいのではないか。不況と少子化とい う点で、今の日本は'30年代の米国に似ている。 今の日本の社会システムは、ピラミッド型の人口構成が前提。これ を、少子・高齢型に組み替える必要がある。少子化対策も組み替え 作業のどちらも大切。働きながら子どもを産めるような企業システ ムに変える必要がある。
    岡田
    大和町は、広島県のまん中にある、 人口8000人の中山間地域。 高齢者が多く、子どもは少ない。老人人口2200人で、一年に53人の 子どもがうまれる。小学校が5つあるが、ソフトボールのチームが組 めない。少子化に加えて、運動会でかけっこをやめるような教育で は、競争心は育たない。 財政力の弱い地方自治体では、少子化対策の予算が組めない。少子 化対策に税金を使うことに、国民的合意をとりつける必要がある。 年寄りは選挙に行くが、若い者は選挙に行かない。だから高齢者政 策はできても少子化政策ができない。
    豊原
    夫の両親は離婚した。夫の姉二人も離婚。「兄弟いたってロ クなことはない、子どもは一人で十分」という夫の意向で、子ども は娘一人。夫の姉の子供たちは、三人独身二人離婚。自分の娘だけ が子持ち。子どもを持つのは面白いこと。子どもが「大きくなった ら子どもが欲しい」と思えるような子育てが大切。
    生村
    「ひろしま女性未来会議」の説明。 インタビュー、アンケートから見た出生率向上政策の紹介:
    • 保育システムの充実
    • 労働条件の整備
    • 経済的負担の軽減; 医療費が重荷
    • 育児支援; (財)ひろしまこども夢財団との連携
    綿貫
    保育所改革が必要。自分が動かなかった反省も込めて。
    • 措置費の用途制限が煩い。
    • 非課税の見返りとして、減価償却費が認められないので、建て替 えが困難。
    • 1980年くらいに子供が減って、保育園の一部を学童にしようとし たら、目的外で駄目と言われた
    • 休日保育をやろうとしたら、休日分の保母は別のスタッフを確保 しろと言われてぽしゃった。
    今は緩くなったが、規制のお陰で不精になってしまった。 保育所の制度もいろいろ変わる。広域入所(居住自治体以外の入所) もOKになる。田舎の保育所は潰れるかもしれない。しかし、保育に は、単純なコスト論だけでは割り切れない部分もある。 育児不安を抱えた母親が多い。高層マンションの子供で、母親より 窓側には絶対行かない子がいる。(投げ飛ばされそうで恐い) 少子化は、保育レベルを上げるチャンスでもある。保育園・幼稚園 の、保育者と子供の人数比が日本は子供が多め。
    宮武
    「働くなら公、自分の子を預けるなら民、と、保母の間で言わ れているそうだ。」
    宮武
    「今の若い人は苦労が嫌なのでは」
    袖井
    「大学入試に両親が付き添ったり、30過ぎても母親に部屋を掃 除してもらったり、弁当を作ってもらう女の子もいる」
    宮武
    「少子化に即効で効く政策などないのでは」
    岡田
    「農村部では、合計特殊出生率は高い。住居や職住近接環境、 祖父母の支援のせいだろう。保育(零歳児、延長)の充実が重要。」
    豊原
    「横からの育児支援はないのか」
    生村
    「有資格者・経験者のボランティアで育児サポートがあればい い。行政が後押ししてくれないか」
    綿貫
    「育児支援をやる保育園もあり、好評。過疎地では、老人と子 供がいっしょに通う施設もある」
    宮武
    「現在、公立学校には、12000の空き教室がある。地域共通の 資産として使えないか」
    ---- ここから会場参加者の声 ----
    参加者1
    「フレーフレーテレフォンの仕事をしている。広域入所の ニーズは強い。パートの仕事では、子供一人の無認可の保育料を 払うのがやっと。認可でも二人払ったらなくなる。保育ママは福 山にいるが、融通がきく。近所の小学生が遊びに来たりして、い い雰囲気だ。一時保育は認可にもあるが、融通はきかない。保育 のプロでも保育に偏見を持っていて、三歳までは母が…とか言う」
    綿貫
    「一部に偏見は残っています。幼稚園が教育、保育園は子守、 という目もあります」
    参加者2
    「自営だと今の保育園では使いづらい。もっと柔軟に。 つわり休暇ができないか。児童手当は、一人目に多く出して、 もっと多くの人に子供を持ってもらうようにできないか。父親は 育児をしない。若い人が選挙に行かないとだめ」
    袖井
    「そもそも労組に女がいない」
    宮武
    「子供が欲しくてもだめな人はいる。変な制度は作れない」
    岡田
    「共働きなら家事をするのではないか。役所の共働きに聞い たらそう言っていた。自分も共働きだが、言われれば手伝った」
    豊原
    「夫には要求が多いが息子には仕込まない。これはいかん」
    参加者3
    「日本の子育てには金がかかる。経済的支援が必要」
    広島福祉専門学校・保育専攻の男子学生
    岡田
    「社会保障として、経済援助が必要。しかし、現状では、少 子化対策に公金を使う国民的合意がない」
    参加者4
    「女性サイドから考えると、少子化のマイナス点が少子化 を呼ぶ。男性サイドをいじれないか。育休を取った男はいるか」
    袖井
    「おととし育休を取った男は0.02%」
    豊原
    「男性も育休を取ると女性からも変な目で見られる」
    宮武
    「校長が人事異動で変わってやっと育休を取れた男性教諭に 会ったことがある」

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