不動山の朝
Early in the morning of Mt.Fudo

夏の朝の眺望。まだ陽が昇ったばかりで、空気はひんやりとしている。国東の六郷満山は宇佐の比売大神の化身としての仁聞菩薩が開き、仁聞菩薩はこの千燈寺で入滅されたと伝えられている。比売大神は宇佐氏の神であり、八幡菩薩は大神氏の神であるとの仮説がある。つまり、宇佐神宮は古来宇佐氏の影響が強かったが、東大寺造営や道鏡の天皇即位を否定する神託などで大いに大和政権にアピールした渡来系とみられる大神(おおが)氏が宇佐氏を凌ぐようになり、圧迫された宇佐氏は仁聞菩薩として活路を山岳仏教にもとめた、というストーリーだ。いずれにせよ、この国東は宇佐神宮とその神宮寺である弥勒寺支配化の荘園であり、平安初期に宇佐に接近した最澄の天台宗と結びついた。
ちなみに、この石灯篭のかなたの浜に伊美別宮八幡社がある。これは886年(仁和2年)に京都の石清水八幡宮を勧請したもので、石清水八幡が860年(貞観2年)宇佐八幡を勧請したものであることを考えると、面白い。宇佐から直接勧請するよりも、はるかに効果がある。歴史の重要な局面で中央政権との結びつきを意識してきた大神氏の戦略は尋常ではない。これを機に、京都から紀氏がこの地に進出してきた。岐部氏の祖先でもある。  次へ