篠田節子の本
「弥勒」(98/9 講談社) 99/8読了
ディープ・アジアを舞台にして、現代の日本では体験できない閉鎖的状況を題材にしている。西洋医学と呪術、現代のマスコミ・ビジネスと手作業での農業、美人のキャリア女性である妻と一夫多妻の無骨な妻と、その対比が面白い。ストーリー・テラーを自認する作家のものだけあり、骨格が堅固で飽きずに読める。前作のゴサイタンもチベット出身の女性がヒロインだったが、ディープ・アジアは日本の心の故郷なのか?
「ハルモニア」 (98/1 マガジンハウス) 98/8読了
民放でドラマ化されて、かなりヒットしたようだが、残念ながら、小説で見る雰囲気とはかなり違った。知的な面で障害のある女性が天才チェリストになるという題材のせいでもあるが、ドラマでは単調で、ヒステリックな感じだけが残った。
もっとも、篠田節子の作品にしては、かなり単調なことは確かで、ジハードにあるようなウィットは感じられない。それでも、飽きさせず、最後まで読ませてしまうのは、さすが。いずれにしても、こちらはドラマよりはずっと良い。
「女たちのジハード」 (97/1 集英社) 98/5読了
この作品もつい先日NHKのドラマで放映していた。時間が短かったのか、やはり原作にはかなわない。カットしたところが気になって、あまり楽しめなかった。作品は力がこもっていて、一気に読んでしまうという内容。この人の作品は常に面白く、好奇心の旺盛さを感ずる。
「ゴサイタン」 (96/2 双葉社) 98/3読了
チベットから来た、謎の花嫁が幾多の奇跡と、常識はずれをしていく話で、ちょっとこれはドラマにはできないはずだ。(ドラマ化されているかどうかは知らないが) 有り得ない事とは分かっているのだが、なぜか虜にしてしまう筋道運びで、いつも感心してしまう。アジア、宗教、自然環境等、時代のキーワードをうまく消化している。
「アクアリウム」 (93/3 スコラ) 98/1読了
アクアリウムは水族館の意味だが、室内での水槽の魚と、自然界で生き延びた洞窟の主である魚と、象徴的な対照がわかりやすい。自然環境問題とからめて、ストリーは進行する。小じんまりとした内容だが、どんどん読み進める。
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