不思議の町、水上
町中を流していると、いわゆる温泉街にいそうな人たちが、まるでエキストラのように登場する。
ホテルのロゴの入った浴衣にどてらを着、下駄をかたかた鳴らして束になって歩いている。
めいめい、楽しそうに出来上がっていて、ウソみたいに千鳥足だ。
お約束の、裏寂れたスナックだかパブだかに行くのだろうか??
あるよ、あるよ。そういうのいっぱい。「スナック 満行(マンゴーと読みたいところだが、マンギョウなんだな。これが)」だとか「ちょっと井福(いっぷく?)」だとか。…よく思いつくよな、と半ば感心。
閑古鳥が鳴き始めてから、もうだいぶ経ったと思しきおもちゃ屋さん。
ウィンドウには朱色のブラインドが下ろされ、店の中には人気が全く感じられない。地震か何かの折に倒れてしまったのであろう、ブラインドを破壊するような形で倒れかかっているゴジラがもの悲しさを増している。
車がすれ違うのも一苦労な街のメインストリートには、観光バスに混じって一般の乗り合いバスも行き来する。
停留所には何故か「待避所」の文字。…訳が分からない。何から逃げろというのだろう?
空は、今にも泣き出しそうな気配。
せっかくの遠出なのに、天気が悪いのもなんだよなぁ…と、うつむいたら、目に飛び込んできたのはマンホール。
ここ、マンホールの蓋に、ぎっしりと星が描かれている。かわいいね。
ちょっとのことが、この上もなく楽しい。
これだから、旅先のお散歩はやめられない…。