おれは、今「かおる」に夢中なんだ。心の中で大きく大きく「かおり」の笑顔が浮かんでいる中、孝一は「かおる」のキュートな笑顔でそれをかき消した。
留守電の一本で、「かおり」の存在が心の中に広がるなんて、「かおる」との思い出が足りないからなんだ。今からもっともっと「かおる」との思い出を増やそう。孝一は、苦いビールを何本も空けながら朝まで考えた。
週末の「かおる」とのデートは、やっぱり楽しかった。「家にちょっと寄っていく?」と「かおる」の誘いについフラフラと孝一は、「かおる」の家にお邪魔した。「かおる」の部屋に入って孝一はびっくりした。大きなフレームの中に、孝一と「かおる」が肩を寄せ合って写っている写真が壁にかかっていた。「かおる」のお母さんがケーキを持ってきた。「孝一さん、いらっしゃい。ほんと写真のとおり爽やかな方ね、ふふ」なんて言い残して、一階へ降りていった。どうやら孝一は「かおる」の家庭では既に有名なようだった。
結局、孝一は「かおる」の部屋で甘い世界に溺れて行った。「ずっと一緒にいたいね」なんて言いながら、孝一は、その晩「かおる」の家に泊まり、気が付いたら、お父様のお酌をしていた。