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「とんがり帽子のメモル」を簡単に紹介すると、 宇宙旅行の途中で「リルル星人」達の宇宙船が地球に落下し、 フランスはベルヌ村付近の小島に村を作って暮らしている。 主人公はリルル村の村長の孫メモル。 彼女には三人の男の子の友達がいるが、女の子の友達がいない。 メモル達は地球人の美少女マリエルの命を救い、 それがきっかけで彼女と友達となるところから物語がはじまる。 ・・というわけです。 基本的に一話完結もの。 序盤は子供向けらしく教育的な内容が多い。 終盤ではそれまでの欺瞞的な夢が壊れ、 大人が鑑賞するに値する物語も登場します。 私は夢のある感動ストーリーに拒否感を感じる人間です。 ファンタジーは美しい夢を見せる幻というだけではないはず。 誰もが正義のヒーローやシンデレラになれるわけではないし、 窮地に陥った時に誰かが助けてくれることなんて滅多に無い。 メモルの物語にも、致命的な欠点が存在します。 性別役割分担(注)の問題は非常に大きい。 |
しかし、それでも、「夢のある」物語からの脱却を目指した点は高く評価できると思います。 序盤で言えば、森の嫌われ者の鷹「一本杉の女王」にも護るべき子供がいるというお話。 移動や生活手段に鳥や昆虫の手助けを必要とするリルル星人は動物の卵を食べるべきではないが、 ならどうやって“卵のようなもの”を食べるか、といった工夫等。 終盤では、「愛のキューピッド」「ポピットが家出?!」「グレースの秘密」等の、 (恋愛に限らず)相手への深い愛情を、自分の気持ちの押しつけではなく、 優しい思いやりの行為で表現するキャラクター達の姿。 何かを成就させることで成長するという短絡的な結論ではなく、 逆境を経験することから他者への理解の感情や思いやりも生まれること。 そして、恋愛のみならず、全ての人間関係は一人で築くものではない、 叶わない恋愛もあるし、それは“失敗”や“敗北”ではない、ということ。 また、「グレースの秘密」にあるように、 従来の、主人公が敵をやっつけて魅力的な異性を手に入れるというような物語に対する問題提起。 というわけで、メモルの価値は、リルル星人の理想化によって物語に酔う(感動する)ことではなく、 上に記した様々な現実的で辛い諸事情から育まれるメモル達の友情や成長の物語から、 いろんなことを考えるきっかけを作ることではないかと思うのです。 だから、子供ではなく苦い経験をしたことのある大人にこそメモルを見て欲しいと思います。 そういう人たちこそ、感動に惑わされずメモルから何かを学び取ることができるでしょうから。 |
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