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月夜のキャンプ 満月の月光に青白く浮かびあがる乾燥した大地はしんと静まり返り、風の音さえ聴こえない。間隔をあけて点々と生える草や背の低いサボテンも化石のようにじっと立ち尽くしたまま生命の気配すら感じさせない。
 それは海底の世界のようでもあり、すべてのものが死に尽くした月の世界のようでもある。まるで時の止まった世界にただひとり迷い込んだような気がしてくる。しかし不思議なくらい気持ちは落ち着き、静かに清んでいる。
 ぼくのほかには動くものがなにもない静寂のなかで上空を仰ぎこうこうと大地を照らす月を見つめていると、この地球も広大な宇宙にぽっかり浮かぶ星のひとつなんだということがすっと胸におさまる。そう、それはあのこうこうと光る月がぽっかり上空に浮かんでいるのと同じように・・・。

 そう想うとぼくたちはこの地球上で動物や植物と会話をするように月や惑星、きらめく星々とも会話できるんじゃないかと思えてくる。月に話しかけたとき、ぼくは心の雑音が消えてゆき、涼しく清んだ水面のようになってゆくのを感じる。
 砂漠の冷たい大地に身体を横たえて月光を浴びていると、ぼくの身体も広大な大地も月の魔力で満ちてくるようだ。その光は太陽のようなエネルギーに満ちた光ではないけれど、静寂のなかで心の底を静かに照らしだしてくれる。それは砂漠に落としたたった1粒の宝石をそっと照らしてくれるような優しさに満ちた光だ。
月とサボテン 月の光を浴びるぼくたちはそこから星の世界に想いを馳せることができる。この広大な宇宙で私たちは決して孤独じゃない、だから満天にきらめく星々はあんなに美しいんだと思う。そうして私たちの太陽もこの星々と同じように美しくきらめき、月や地球を照らしているのだ。太陽の光を浴びてこの地球だって青く輝いている。この星の姿を初めて宇宙から見たときの私たちの驚きといったらなかった。私たちは生まれ故郷であるこの星に誇りと自信を持ち、心の底から沸き上がる深い愛情を感じた。私たちはこんなに美しい星に生まれてきたのだ。ぼくたちが月の光を浴びて癒されるように、きっとこの星の青い光も私たちの星から宇宙への贈り物なのだろう。

 青空を見上げるとき、私たちは外へ出たくてウズウズする。そうして太陽の光を浴びて紺碧に輝く海を見たなら、おもわず歓声をあげてはしゃいでしまうだろう。青空の下や紺碧の海辺で悩んだり落ち込んでいても似合わない。それは青い光は私たちをとても元気にしてくれるからだ。青空の下でとにかく思いきり体を動かして楽しんだら、きっと新しい力が湧いてきてまた前に進んでいくことができるだろう。
 なぜなら青空の下にいるとき、ぼくたちはこの星と一緒になって自分の肌で太陽の光を反射させてこの星の光を宇宙に向かって送っているのだから。

ガルドネス 人工衛星ではるか上空から地球を見たとき、いつもそこだけ澄み渡った美しい姿を見せてくれる場所がある。バハカリフォルニアだ。その大きさはちょうど日本の本州と同じくらいの世界最大の半島だ。内海のカリフォルニア湾にはコロラド川から豊富なミネラル分が流れてくるため、その栄養分に支えられて大量のプランクトンが発生し、それを食料とする魚 類やクジラまでじつに豊かな海洋生物の生態系が形成されている。しかし半島は乾燥地帯であり、陸地には不毛ともいえるサボテンの半砂漠が広がる。それでも半島を縦断する道路をゆくと海岸から山間部、さらに内陸のサボテン地帯や農業地帯などこの地のさまざまな表情を見ることができる。

 そしていつも変わらず見ることができるのはまぶしいほどに深く濃い青空だ。
 さあ、太陽の光をいっぱいに浴びて、この星を感じる旅へ旅立とう。

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