通し番号「3」

「飛行機内」


ユナイテッドエアラインは全席禁煙である。ありがたい。
この飛行機は、日本・成田発 > アメリカ・ニューヨーク行き直行便。
椅子の上にビニール包装された靴下がある。靴下5足も持参したのに靴下サービスを受けるとは。でもうれしい。2、3歳ぐらいの金髪の男の子はさっそくその靴下を履いてとことこ歩いている。何となく羨ましい。

私は窓側から二番目の席、両側に日本人に見える男の人が座っている。
窓側には長髪の若そうな人。通路側の人は斜め向かいの人と話しをしている。日本人だ。何となくほっとする。

離陸した。ほんとうにほっとする。取りあえず大丈夫のようだ。
だけど、これで本当に受験できなくなったんだなぁ....はっっ。
さあ、機内食は何かしら。映画は何かしら。
まもなく飲み物とピーナツが配られた。うれしい。空港に遅刻した私は飲み物を取る暇もなく、喉がからからだったのだ。

しばらくして機内食の時間となる。うれしい。お腹が空いた。
“ビーフかフィッシュか”と聞かれて、(え、英語なの?)と思ったが
“おさかな、お願い(フィッシュ プリーズ)。”と言う。
となりの窓側さんは、私の受け取ったトレーを指して目で話している。
それから飲み物を配ってくれる。“何を召し上がりますか”“炭酸水、お願い。”
窓側の彼は飲み物ワゴンを指差した。大丈夫なのかなぁ。

それから私は寒くなって毛布をくれだの、アレルギーの薬を飲むから水をくれだの言って、その通りにしてもらえたので安心した。

窓側の彼が口を開いた。
「ひとりで旅行ですか」
ぱっと見た感じとはちがって、どこかおどおどしている。
「そうです。あなたもですか。私は初めてなんですよ。

この飛行機、乗った途端に英語の世界でちょっとびっくりだけど、
空港で いきなり よりは良いかもしれないですね。」
「英語通じてるじゃないですか」
「私は少し英会話を習ったので。あなたは話しませんね。だいじょうぶですか。」

彼は英語は全然話せないという。先輩を頼ってニューヨークに行き、音楽キーボードを学ぶつもりだそうだ。空港には先輩が迎えに来てくれると言うが、それにしても機内で一言も英語を話せず「僕は食べたい方の機内食さえ言えなくて、苦手なものを食べたんですよ」という程で、入国審査など大丈夫なのだろうか。ニューヨークで語学学校に通うつもりで、手続きはしてあるというが。

“お聞きください......飛行機はオハイオに停まります”
えっ?ニューヨークじゃないの? <続く>

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