私は窓側から二番目の席、両側に日本人に見える男の人が座っている。
窓側には長髪の若そうな人。通路側の人は斜め向かいの人と話しをしている。日本人だ。何となくほっとする。
離陸した。ほんとうにほっとする。取りあえず大丈夫のようだ。
だけど、これで本当に受験できなくなったんだなぁ....はっっ。
さあ、機内食は何かしら。映画は何かしら。
まもなく飲み物とピーナツが配られた。うれしい。空港に遅刻した私は飲み物を取る暇もなく、喉がからからだったのだ。
しばらくして機内食の時間となる。うれしい。お腹が空いた。
“ビーフかフィッシュか”と聞かれて、(え、英語なの?)と思ったが
“おさかな、お願い(フィッシュ プリーズ)。”と言う。
となりの窓側さんは、私の受け取ったトレーを指して目で話している。
それから飲み物を配ってくれる。“何を召し上がりますか”“炭酸水、お願い。”
窓側の彼は飲み物ワゴンを指差した。大丈夫なのかなぁ。
それから私は寒くなって毛布をくれだの、アレルギーの薬を飲むから水をくれだの言って、その通りにしてもらえたので安心した。
窓側の彼が口を開いた。
「ひとりで旅行ですか」
ぱっと見た感じとはちがって、どこかおどおどしている。
「そうです。あなたもですか。私は初めてなんですよ。
彼は英語は全然話せないという。先輩を頼ってニューヨークに行き、音楽キーボードを学ぶつもりだそうだ。空港には先輩が迎えに来てくれると言うが、それにしても機内で一言も英語を話せず「僕は食べたい方の機内食さえ言えなくて、苦手なものを食べたんですよ」という程で、入国審査など大丈夫なのだろうか。ニューヨークで語学学校に通うつもりで、手続きはしてあるというが。
“お聞きください......飛行機はオハイオに停まります”
えっ?ニューヨークじゃないの? <続く>
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