思考実験



もしあなたが理系の人間ならこの言葉を知っている可能性が高いかもしれない。
諸所の理由で現実には実行不可能、または実行が困難な実験を思考の中で展開するのだ。
例えば私が今この場で唐突にチェレンコフ光が見たくなったとしよう。
しかしチェレンコフ光はそうそう容易く発生するものではない。
ならば、頭の中で発生させれば良い。
巨大な水槽をイメージするのだ。
そして光が飛び込んだ途端、美しい光が頭の中を流れていくのだ。
しかし惜しむらくは実物をみたことが無いために水の中で花火があがっているようにしか想像できない点だ。
小さな種火がすうっと上がり、そして一輪の大花を咲かせる。
そして私は叫ぶのだ。
「たまやーっ!!」「かぎやーっ!!」と・・・。
夏の風物詩である。



それはさておき、一昔前、高性能の計測機器やコンピュータが存在しなかった時代があった。
今となっては家にパソコンがあると言われても驚かない。
だが私が初めてパソコンに触った頃は、一般家庭にはちょっとパソコンはまだ見当たらない、そんな時代だった。
しかし私の子供の頃ですら、必要となればちょっとお金を出せば買える物だったようだ。
ましてや研究機関や大学などではあるのが当たり前だったのだろう。
これがほんの十数年前の話である。
少し遡り46億年前。
地球が完成した。



さて、そんな高性能の計測機器やコンピュータが存在しなかった時代では実験はどうやっていたのだろうか?
勿論水銀を人間が飲むとどうなるだろう?などと言う度胸さえあれば可能な実験は即座に飲んでみると結果が得られるのだが。
実際に実験が出来る環境に無い時、それはつまり頭の中での実験、思考実験をする事になる。
そうやって現在の科学が発達してきた。



ところで私も今、思考実験をしている。
膨大な量のデータと計算からなる壮大な実験である。
これをシミュレートするが為に私は仕事場に遅くまで残っている。
仕事場で思考実験をしているのだ。
何の実験かと言うと、どうすれば早く家に帰れるか、という事である。



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