(123)犬と飼い主


              

プロヴァンスに来て慣れ親しむのに苦労した事に、人・言葉・気候等がある。それにもう
  一つ犬との関係、要するに相手の心が読めないと言うことだ。当地の犬は殆どが放し飼い
  で、家の庭を走り廻っている。門に近づこうものならその吠え方のけたたましいこと。慣
  れるのに一番苦労した。これも飼い主を知るようになって、人となりがわかるようになる
  と犬との関係も次第に緩和されて行った。敵対心を燃やして吠えてるのではなく、未知の
  人間に対する警戒が最大のポイント。このことは、裏を返せば私自身の心の状態でもあっ
  た。人見知りと言うか、さい疑心、慣れない土地との距離感を感じた。ただ感動的なプロ
  ヴァンスの光だけが私を当地に引き止めた。犬の飼い主に対する忠誠心は強く、友人宅の
  ルンアン・ジュニアは、いたずら好きでつま楊枝を目の中に入れてもシェパードのジョン
は目をつむってじっと我慢している。やっと気付いた親が止めるまで続けていた。今では
、「わかったわかった、君も充分ボンジューを言ったよ」そう語りかけて中に入って行け
るようになった。

目次に戻る

(124)帰国再挑戦