(115)キャシー・ウエヤマ


             

「ちょっと、歌ってみていいですか」突然ソプラノでオーソレミヨを歌い出すキャシー・
  ウエヤマ。日系3世、カナダ・トロント在、28才女性。1984年夏、二週間前からわ
  が家に居候している。「いい声ですね」「学生時代トロントで声楽を学びました」石造り
  の部屋に響き渡る肉声は、心に強く伝わってくる。これまでこんなに身近で歌を聞いたこ
  とがない。「人の声もまるで楽器ですね」感心する私。キャシーも長逗留に感謝の意を込め
  て歌う。日本女性にはない積極性だ。「人前で音楽を披露出来る人はすばらしいわ」幸子
も感動する。プロヴァンス旅行中の彼女、偶然セグレの村で知り合った。「大阪のおばち
ゃんの所にも行った事があります。顔が日本人だから、漢字を書けないと子供からバカに
されました」日本人の血を引く人間でも環境でどんなに違うものか興味があった。「日本
に対して郷愁はあります。母がよく日本の事を語ります」身近かに接した日系女性、その
後も文通を続ける。

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(116)あきれ顔