「暖炉なんて、ロマンチックね」「僕も初めてでよくわからないな」「とにかく燃やして
みましょうよ」「簡単に言うけどこの太い薪だけでは無理、小枝が必要さ」「ああ、それ
でマリーおばさんは、毎日裏山に小枝を取りに行ってたのね」フィリップが、ムッシュ・
ゴ メスから譲り受けた家を一年間借りることにした。築後100年で、部屋は細かく区切
ら れている。地下、1、2階、屋根裏部屋があり、調度品も昔のがそのまま。プロヴァン
ス を肌で体験出来ると胸膨らませる。日本では、縁のなかった暖炉に目が止まり、早速試
運 転。ちょろちょろと燃える映画のシーンだけを想像していたが、実際は非常に手間がか
か った。煙の逆流でむせ返り、火のこが飛び散った床は灰だらけ。火の後始末も毎日大変
で、水をかけて一晩放置すると翌朝、水浸しの火事現場よろしく、部屋中に匂いが残る。
バ ケツに燃えかすを移し、ほうきできちんと掃くのがベスト。燃え盛る炎を見つめる一時
だけはロマンチックな雰囲気にひたれるが・・。