「サチーヌ、今年はオリーブも豊作だし荘屋さんへの年貢も払えそうだ」「それはよかっ
たわ、トシロン」「ところで今幾時だろう」「先ほど4時の鐘がなったわ」「そろそろ教
会に行かなくっちゃ」「何かあるの」「オリーブ組合の集会だ、先週のオランジュ領の攻
撃で、村の東門が破壊されたんだ。死者も出たし対策を練る必要がある」窓下には、カツ
カツと大股で歩いて行く足音がする。「それじゃ、出かけるとするか、サチーヌ行ってく
るぞ、又後で・・・」と昔の会話が聞こえそうな年期の入った洗面所の床や壁。電球に映
し出された壁にブルーの人影。髭を剃るため鏡を覗くと、ピンクの窓枠に緑のツタが映る
。窓枠の直線にツタの細かい模様がおもしろい。植木鉢のゼラニウムレーキが輝く。耳を
澄 ますとツタの花に群がる無数のハチ。フォンテーヌの水音がドボォ、ドボォと聞こえる
。 プロヴァンスの時は、百年前と今も、家主を変えて同じように流れている。