(94)個人主義者


             

「あのフランケンシュタイン、全く失礼するわ」幸子が血相を変える。「そのフランケン
  シュタイン の呼び名も失礼じゃないの」「まあ、そうだけど。おまえじゃ、フランス語が
わからない。トシオはいないのか、最初からこうなのよ」「幸子のフランス語を信用して
ないんだ」ルイ・ゴルフ、現在借りている家のオーナーだ。資産家で、家や田畑を人に貸
している。ピジョットのクラシックカーを2台持ち、結婚式で花嫁・花婿を乗せてパレー
ドの先頭を切る。それ以外の仕事はしてない。村人との付き合いも余りなく、個人主義者
と言われている。私も親密な付き合いはない。いろんな人間がいるんだろ、特にフランス
人ともなれば位の感じだ。昔ルイの父でムッシュ・ゴルフもいたが養子の辛さか、いつの
間にか家を出た。母のマドレーヌは、ルイよりは社交的だ。いつもこ綺麗にして愛想もい
い。先祖代々の人が住むこの村も、ヨーロッパで金持ちのスイス人達が別荘として住み始
め、雰囲気が変わりつつある。

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