(87) 生活の源


             

「ホーの顔に行こう」次男が頬を膨らませてやって来た。犬の顔をした発水口からホーと
  言って水を吐き出すフォンテーヌで遊ぼうと思っている。どこの街に行っても中央に位置
  するフォンテーヌは、生活の源。ここセグレでも時計台とペアーで村の中央にあり皆の憩
  の場になっている。日本の井戸と言った所で、水道が完備してない時代は、皆ここに水汲
  みや洗濯にやって来た。山からホースで水を引き、フォンテーから出た水は、洗濯、すす
  ぎの浴槽を経て生活排水として川に流れる。洗濯場の浴槽は、石が傾斜していてゴシゴシ
  手もみしたり、石に衣類を打ち付けて洗う。1637年の銘があるフォンテーヌは、数々
  の時代の変遷を見て来たことだろう。現在は村のシンボルとして観光で訪れた人々のくつ
  ろぎの場になっている。場所によって形も様々でいろいろ工夫が凝らされておもしろい。
  このフォンテーヌを訪ねて街を渡り歩くのが、プロヴァンスにヴァカンスでやって来る人
  々の楽しみになっている。
 

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(88)一日の終わり