地中海に浮かぶマジョルカ島、波間に幾様にも輝く光の破片。チャリンカンカン、ロープ
奏でるヨットハーバーの音楽。キヤンパステラも3日目になると馴染んで来る。パルマの
赤い教会、ヤシの木の濃い緑に赤い風車が映える。眼下には、白いヤギが崖を渡って遊ぶ
。「おみやげものを見てみない」掌にのるサントン人形が目に付く。裸の原始人、新郎新
婦、闘牛士、神父とシスターどれも丸い大きな目、スペイン人の大らかさか。毛皮のファ
ッションショー。買う気もないのに盛んにシャンパンを勧められる。「買いませんよ」「
まあいいから、これを着てみて」場違いな黒いコートから、なぜかマジョルカの匂いを嗅
ぎとる。海辺には、相変わらず光と波の戯れ。砂浜を運動を意識して急ぎ足で歩く人。「
マリーこれあげるよ」娘が仲良くなったスペインの少女に貝殻を渡す。岩や波の三角、延
々と形を変えながら沖を漂う。ここにはプロヴァンスと又違った時間が流れている。