(56)ナイト・ピクニック


           

「トシオ、コリーヌの誕生会をやるけど、来ないか」「今から」夜8時、突然ルシアン来
  訪。コリーヌはパリジェンヌ、プロヴァンスでも一目置かれる。ちょうど車で出発間際。
  「どこに行くの」「ウベェーズの上流さ、いいからついて来いよ」ピジョットの旧年式も
  女性がハンドルを握ると風格がある。「健康のためヨガを始めたの。なかなか調子いいわ
  」「フムー」ルシアンの吸うルタンの煙が車内に漂う。川辺には、既に先客。コリーヌが
  声をかけてたらしい。総勢10人のキャンプファイヤー。7月の夜は、冷える。セーター
  だけでは、足りない。アプリティフ、ワイン、コリーヌ手製の料理が回って来る。どんな
  誕生会?好奇心でついて来た集い。絵の話、パリの劇場、友人の離婚、市場の果物、ワイ
  ン延々と続く会話。真夜中1時、一人川の流れに沿って歩き出す。「ここは、フランスか
」聞き慣れた水音に、ふと日本を思い出す。「オニバー帰ろうか」家に戻ったのは、明け
方の4時、初めてのナイト・ピクニック。

目次に戻る

(57)野外コンサート