(45)ポールとの出合い 2 ルシオンの空


「どうして絵に詳しいの」「どこかで習ったの」ポールとルシオンの村に来る。赤い壁の
家が並ぶ。2キロ程離れた丘の上。いつもの制作の場所だ。「自然をよく観察してごらん
」ポールは、70才を越える。昔は、教職に携わっていた。博識だ。「この空気、光、香
り、音、風、色」「自然を感じとるんだ」村の中央にまわりの屋根から抜きん出た教会の
塔がある。「天に近づくため造るのさ」ポールは、両手を天に掲げる。得意のポーズだ。
「大空を飛ぶ鳥の様に自由に・・」五輪真弓の歌を思い出す。画面の中で鳥の様に飛んで
いる自分がいる。ちょうど2キロ四方の風船を画面の中で膨らますように、空間を造って
行く。これが自由さに繋がる。初めて掴んだ絵の極意だ。「ショント・ショント・プロヴ
ァンス歌え唄え唄えプロヴァンス」色彩は、歌う。心も歌う。体の機能が全回転を始める
。雲は、踊る。松の木がミストラルにざわめく。ぶどうの拍手喝采。自然の壮快なスペク
タクルがある。

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(46) ポールとの出合い 3 サンヴィクトワール