(44) ポールとの出合い 1


たち葵の咲く通路にイーゼルを据えていた。「赤い空の家」制作中。頭のはげた男が、は
や口でまくしたてながらカメラを持って近づいて来る。「写真を撮るから、そのまま、そ
のまま」「もう一枚、もう一枚」じろっと睨むと。「ショント、ショント歌っている、歌
っている」「うるさいナー」構わずシャッターを切る。「又、冷やかしか 」ポール・フラ
ッシェとの最初の出会いだった。「出来上がった作品を見たいから、家に寄れよ」「写真
を送るから住所も知りたいし 」「ほら、あそこの鉄格子のある家」とにかくエネルギーの
塊だ。家を訪れるとコレクションの多さにびっくり。アンティック、陶器、絵画、部屋中
溢れてる。質もいい。「ボンジュー・マダム」婦人が椅子に座っている。又違う人種の感
じがした。「ほら、ジョゼット本当だろう」「いいわね」「プロヴァンスを歌ってるよ」
サルトルとボーボアールの関係を思わせる知的な雰囲気が漂っている。これから新しいセ
グレが始まる。

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(45)ポールとの出合い 2 ルシオンの空