(42)自分捜し


「随分ゆっくりですね」「はい、木造の様に一日で棟上げは、無理ですから」「フランス
には、当地の流儀があります」石とセメントで積み上げていく家の造り方は、油彩の描き
方と共通している。「プティ・タ・プティちょっとずつね」画家のルシアンの口癖だ。石
造りの重厚な雰囲気は、フランスの生活の隅々まで見かける。一方木造の建築は、構築が
速い。水墨画の筆の運びと似ている。「やはり私は、日本人なんだ」体格、風貌、多分胃
腸の長さにしても、フランス人と日本人では異なる。過去30年近くフランス人と接して
来ての印象だ。「それでは自分は、何をしなければならないか」「もっと日本人らしく、
もっと自分らしく」と言うことか。そのが方がもっと全機能がスムーズに回り出しそうだ
。 もっとエネルギーを感動を造り出せる。フランスにいて母国を振り返ることは多い。
普段、日本では当たり前で通り過ぎていることにも気付く。自分捜しはまだまだ続く。

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(43) 「さあ、力を抜いて」