(41)ミストラルの音楽


石造りの部屋にヴィヴァルディーの四季がこだまする。庭の洗濯物が、ミストラルに上下す
る。松の枝も揺れる。「タンタラ、タンタ、タンター・・」プロヴァンス、片田舎の一室、
自然の織り成す協奏曲がおもしろい。壁には玉葱の小品5点、反対側の壁に数点の水彩も、
黒いサイドボードには、油彩が並ぶ。「今日も苺が置いてあったわ」「またジェガだ、あり
がたいね」ドアの足元、かごに入った果物がメッセージを残す。口数の少ない大家さんのジ
ェガは、黙々と自分一人で家の建造を進めている。黒いポインター種のトッコワーズと灰色
のダックスフント、ジプシーがまとわりつく。今私は、懸命に自然のハーモニーを写し取ろ
うとしている。パレットの色を使って。これが、再構成か。自分のフィルターを通して物を
見ようとしている。個性の表現。「なかなかいい調子だ」少しずつエネルキーが沸いてくる。
「これを進めて行こう」明日からの制作に指針が見えて来た。「どんな感動と出会うか楽し
みだ」

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(42)自分捜し