+ わたしとプロヴァンス


(7)フィリップの家


  「フィリップは、運がよかった」フィリップの母親クリスチアーヌは、表情を変えず言っ
た。三男フィリップ・フロニエがタダ同然で家を手に入れた。当地らしい制度で、オーナ
ーが死ぬまで、年金に相当する家賃を払い続ける。ある人は20年払い続け、まだ続行中。
フィリップは、たった3ケ月で終わった。契約後3ケ月でオーナーが死んだ。フィリップ
は、徴兵制で軍隊に行った直後。クリスチアーヌは、三男の仕事を心配していた。「今の
店は借り物だし、場所が悪くては店は、やっていけないし」長男・次男は、家を買ったが
三男だけが持っていない。「親の考えることはどこでも同じだな」フランス人に対する垣
根が又一つ取れた。三男も父親アンドレの後を継いで、サントン人形の店を村中に開く予
定だった。「家がほしいが資金もない」と思っていた時オーナーで老齢のムッシュ・ゴメ
スからこの話があった。半年後、自分の手で改装、見違えるような持ち家に生まれ変わっ
た。

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(8)絵の話し 1

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