+ わたしとプロヴァンス


(6)ダックおばさん


  ダックおばさん、本当はマダム・ラグマニャーと言うが、一度食事に招待した時「ダ・コ
ー いいわよ」と言う代わりに「ダック!」 と威勢のいい返事をしたのがきっかけでこう呼
び出した。彼女も以前は村の中心にあるフォンテーヌ( 泉 )の前に大きな家を構え、万屋さ
んをしていたと言う。今は、村の外道に新しい家を建てて隠居生活をしている。フォンテー
ヌ前の大きな家 は、アトリエ・ド・セグレが買った。 人の出入り、家の売り買いが激しい。
彼女は、妹のメアリーと、朝夕村中を散歩するのが日課だ。村の生き字引で、村を紹介する
ビデオや教会のお祭りの写真には、必ず登場する。彼女の家の壁に這うツタの葉は、私のお気
に入りのモチーフだ。特に秋がいい。白壁にツタの赤、勢いよく空に向かう流線は、私の絵
の根底にある「流れ」を支える。「色が生きている、トシオ」時々絵を見に来て感想を言う。
「そう」満更でもない。いつもプラタナスの広場で妹とひなたぼっこをしている彼女、のどか
な田舎の情景でいい。

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(7)フィリップの家