+ わたしとプロヴァンス


(5)村人との出合い


  セグレは、人口1000人にも満たない小さな村だ。石灰岩の丘の中腹に民家が横一列に並ぶ。
冬場の人口は、半減する。 村に住む外国人が、別荘を離れ母国に戻るからだ。歴史は古い。
10 世紀頃からの資料が教会に残る。時々村のピーアールのため展示される。それは観光客
のためというより、村人の郷土愛のためか、皆懐かしがって見ている。先祖代々住み続けて
いる人間も多い。今は平野に土地を買って住む、ヒヨコのおじちゃんのかみさんマリーゾエ
の家族も昔は村の中心教会の近くに住んでいた。過疎化で村中の家を手放している。「昔は、
大家族で教会の横に住んでいたのよ」彼女の口癖だ。核家族化は、フランスも同じだ。彼女の
遠縁に当たるルイ・ゴンチエもそうだ。今は村の裏手の辺鄙なところにいて、市場がある時
には、大きな布製の袋を肩から背負ってやって来る。靴も昔ながらの木製だ。サントン人形
のモデルになっている。時間はどんどん過ぎている。だがここには、昔もある。これが歴史か。

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(6)ダックおばさん