(11)招待・夕食


プロヴンスの人は、友人や家族と食事をするのが好きだ。料理を味わい、話し、歌い楽し
む。私も村になじんで来るに連れ、食事にさそわれる機会が増えた。正直なところ一人で
絵のことを考えて食事をしている方がいいと思う時もあったが、そんな優柔不断は通じな
かった。「ウィ、ノン」この選択はこれまで曖昧に使っていたようで、よくどっちなんだ
と聞かれた。「はっきりしている」行ったら行ったで気が紛れて楽しい時が過ぎる。皆気
を使って話しかけて来る「サヴァ、トシオどう元気」外の明るい日差し、空気、景色、そ
して飲む食前酒。最初は雰囲気を楽しむどころではなかった。これには、外国での一人暮
しのさびしさ、絵の不満、言葉の障害、警戒心、いろいろ原因があったと思う。それもプ
ロヴァンスの空気が癒してくれた。「これも文化なんだ。新しさを取り込もう楽しもう」
発想を変えると面白いようにうまく行き始めた。「アグレッシブ、アグレッシブ前向きに」

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(12)ルシアンと幸子