(1)はじめてのフランス


  「エー、宗像はイロの道に進むのでありまして・・」送別会で部長の挨拶。皆苦笑しなが
ら聞いていた。その面々が向こうにいる。1974年、夏羽田空港ロビー。3年間勤めた
会社の上司や同僚、他の部署の面々も見送りに来てくれた。「ガンバレヨ、宗像」「ハイ、
ガンバリます」何に対してがんばったらいいのかよくわからないが決意表明。3年間勤め
た会社を辞職し、これからフランスに旅立つ。出国の手続きをした後も皆は帰らずに、ガ
ラスの向こうで見守っている。これまでの人生で味わった事のない一瞬だ。自分で決めた
事を実行しようとしている。「行ってきます」小さく握り拳を作って握り締める。皆に手
を振る。足取りは軽い。道のない雲間をリズミカルに進んでいる感じだ。「楽しみだな」
内心希望の火が見えてきた。ソ連のアイロフロート航空で、途中モスクワで給油、パリの
ドゴール空港に夕方近く到着の予定だ。「めざすは、フランス、プロヴァンス」

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(2)3 色のじゅうたん