「ロレンツォのオイル」を超える?
ALD(AMN)の新薬が報告される


WB00955_.GIF (255 バイト) 発端 WB00955_.GIF (255 バイト)

 このニュースは夏のULFの大会で知り合ったブラジルのルーベンス君からの電子メールで聞きました。彼は米国ののジェフから受け取ったメールで知ったそうです。ジェフはそれをミエリン・プロジェクトからの情報(メーリングリスト)で知ったということです。

 ジェフのメールの内容を要約すると次のようになります。

  • ALD/AMNの患者に対してロレンツォのオイルより効きそうな薬が見つかった
  • その薬の名はLovastatinで彼は既に手に入れている
  • このことについては The New England Journal of Medicene 9/3号に掲載

WB00955_.GIF (255 バイト) 確認 WB00955_.GIF (255 バイト)

 そこでとりあえず、インターネットで探してみたら、問題の記事自体がWeb上にありました。というわけで、興味があるかたはそちらを直接確認していただきたいのですが、ざっと読んだ感じを私なりにまとめると次のようなことです。ただし、私はALDの病理や治療法についてはよく知らないので勘違いしているところがあるかもしれません。

The New England Journal of Medicine
September 3, 1998
Volume 339, Number 10

Lovastatin for X-Linked Adrenoleukodystrophy

  • 動物実験によればlobastatinがALDの症状の原因となる物質を抑制する
  • 7人の患者に2〜6ヶ月lobastatinを投与したところ効果があった
  • 血漿中の長鎖脂肪酸は明確に低下した
  • lobastatinを使う療法は、長鎖脂肪酸の蓄積を抑制するシンプルで安全で効果的だろう

WB00955_.GIF (255 バイト) 補足 WB00955_.GIF (255 バイト)

 別に調べたところ、lobastatinはそもそも血液中のコレステロールの濃度を下げるために開発された薬であることがわかりました。「治療薬マニュアル」にも「医学大辞典」にも載っていないが、「リーダース英和辞典」に載っているところをみると、米国だけで使われているのかもしれない。薬としての商品名は別のようで、どこかに書いてあったけど、失念しました。インターネットの検索結果では、副作用としての発ガン性が最近問題になったみたいです。

 The New England Journal of Mediceneの記事に添付された患者の記録を見ると、3人がAMN、1人が発症前のAMN、1人がadolescent cerebral ALD、2人がヘテロタイプの女性患者となっています。

1998/10/3


WB00955_.GIF (255 バイト) ロバスタチンの評価 WB00955_.GIF (255 バイト)

 岐阜大学の鈴木先生のグループがロバスタチンの臨床試験を計画しているようです。ロバスタチンに関する現時点での評価はULFとNIHなどの講演によって開催された「X染色体性副腎白質ジストロフィーの治療法に関する国際会議報告(international meeting on Therapy of X-linked Adrenoleukodystrophy)」にまとめられています。ロレンツォ・オイルと同様の効果が期待でき、状況によってはロレンツォ・オイルより使いやすそうです。ただ、これらVLCFAのレベルを下げることを目的とした療法が、結果的に患者の症状を改善できるかどうかについては、否定的な研究結果も出ています。

1999/04/26


 ULF Neowsに掲載された、ロバスタチン4フェニルブチレイトといった新薬の情報を翻訳・掲載しました。 

→X染色体性副腎白質ジストロフィーの治療法に関する国際会議報告

 鈴木先生のグループではロバスタチンともう一種類の薬の国内臨床治験の準備をされているようです。日本小児神経学会でお会いしてお話したのですが、このあたりは具体的にはうかがう時間がありませんでした。

1999/05/16


WB00955_.GIF (255 バイト) 日本でのロバスタチン、4PBの治験 WB00955_.GIF (255 バイト)  

 ALD連絡網の笹岡さんから、岐阜大学、新潟大学神経内科が協力して進めているロバスタチン、4PBの臨床試験についての情報について確認がとれ、事実関係がわかったので報告します。

 まず、99年1月の段階で岐阜大の鈴木康之先生から、ALD連絡網にロバスタチンの臨床試験についての打診がありました。この段階ではロバスタチンだけが候補にあがっていて、また、ロバスタチンは日本では認可されていないので、同じように血液中のコレステロールを低下させるシンバスタチン(商品名リポバス=萬有?)という薬を使うことも検討されています。

 その後4月に、あらためロバスタチンと4フェニルブチレイト(4PB)を使った臨床試験が準備中であるという連絡がありました。4PBは医薬品ではなく、本来実験用試薬として販売されているもののようです。鈴木先生によれば、4PBは米国で高アンモニア血症、嚢胞性線維症などの一部の代謝異常症の患者に使われているということです。

 これらの薬の国内での臨床試験については、あくまで交渉中ということで、実施開始の時期や内容についてはまだかたまっていません。鈴木先生、新潟大学神経内科の辻先生が相談しながら実施に向けて交渉するのと平行して、ALD連絡網の方で患者側の参加の意志を確認しているという段階です。


 4PBによるALD治療について既にとりあげているページがありました。埼玉県立コロニー嵐山郷の池田正行先生の神経変性疾患トピックスというページです。内容的にはステファン・ケンプの論文の骨子紹介なので、ULF Newsの内容にとくに付け加えることはありません。

1999/05/23


19up.gif (301 バイト) MOSA(大澤雅彦)さんが、新潟大学の方に日本におけるロバスタチンの臨床試験について問い合わせてくれました。以下に「先天性代謝異常症BBS」に掲載された新潟大の小野寺さんからの情報を転載します。

今年の1月にアメリカでこの件に関する国際会議がモーザー博士の呼びかけで行われました。私どもはこちらの会に参加する機会を与えられ、その概要を伺い日本でもこの 治験に参加する方向で当科の辻を班長とする班会議が始まっています。アメリカを中心 とする国際治験の申し込みは今年の10月には行われ、早ければ来年度にはヨーロッパ、南米、北米、アジアをいれて国際2重盲検試験が始まることとなっております。 詳細はまだ未決定ですが二重盲検になることは確実かと思われます(二重盲検という のは患者さんも医者も偽薬か真薬かはわからないということです)。 今回の主旨は、確実に有効無効の有無を科学的に批判に耐えうる形で出そうというも のです。大澤さんのご質問に十分にお答えしていることにはならないかもしれませんが もう少し詳細がはっきりした時点で必ず主治医の先生方を通じてご連絡差し上げる予定です。

1999/12/06


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