iMac(TFT)

21世紀最初のMacintosh

実機を見る前だけど、とりあえず

2002/01/11


iMacのフルモデルチェンジ

自動車並みに4年間持続した(とはいっても最後の1年は尻すぼみだった)iMacが、やっとモデルチェンジした。昨年から何度も「液晶iMac」と言われてきたが、やっと無事にデビューを果たした。

1997年に書いた小論では、返り咲いたS. Jobsがどこまでもつか、といった空気を感じていた私だが、その後に彼が引っ張ってきたことで、Appleは無事にMacOS Xをリリースするに至った。その間に、iBookのフルモデルチェンジや、PowerMacの高速化、PowerBookをリッチなノートマシンにするなど、Appleはそれ以上に大きく市場を失うことなくやってくることが出来た。MacOS Xはまだ荒削りだけれど優秀だし、特に画像や音楽分野のプロ向けソフトウェア開発者から支持されている。素直に慶賀すべきだと思っている。(パーソナルコンピュータの拡散を考えていた私が、その後どう考えているかは、また別の機会に。)

で、そのAppleのシンボルとなったiMacがフルモデルチェンジをした。こちらに詳細があるし、MacWireその他でも多くの記事が流れるので、詳細は扱わない。やはりというか、大方の予想通りというか、iMac(TFT)も形で勝負してきた。(Appleは今度のiMacをiMac(TFT)と呼ぶようなので、それに準じている。)

大衆向けのコンピュータだし、妥協しない性能を搭載していても理屈はこねず、わかりやすい形で見せる。逆に言えば、形にメッセージが込められていると見ていい。

 

iMac(TFT)の形

今度のiMacは、電気スタンドのような形だ。そして、取っ手よりも本体のおわんが目立つ。おわんだの、鏡餅だの、カップだの、いろいろ言われているが、何しろどっしりと大地に根を下ろした重量感がある。当たり前で、液晶がふわふわ動くのだから、本体はがっちり重しをつけていないと、本当に倒れてしまう。こういう形の持つ印象って、製品の意義を決めると思う。

今までのディスプレイ一体型iMacは、非常に重いマシンであるにも関わらず、デザインで軽く見せていた。派手な色がトランスルーセントで映えて、全体に浮遊感のあるデザインだ。また、丸っこく、くるくる回るのもきれいだ。それが証拠に、CMでは5色のiMacがくるくる回っていた。

今度のiMacは、グラウンディングしてる、根をおろしてる。しっかと地面に足を据えて、上半身を軽く動くように力を抜いて、という方向性だ。生き物の姿勢にも見える。デザインの段階で意識していたかどうかは別にしても、とにかく「21世紀に生きる姿」を体現しているように見えるのだ。

 

電気スタンド型iMacは、どこで使うのか

では、そういうマシンをどこで使うのだろうか。こういう視点で早速論じられているのが、こばやしゆたか氏の、この記事

私も似た感じを受けている。あれはリビングなどにおいて、みんなで見たり、誰かが占有したり、いろんな使い方を想定している気がする。さらに、MacOS Xになり、本格的なマルチユーザー環境になったので、大人から子供までみんなが使う時に、各人の姿勢に合わせて配置をちょっとずつ変えられる点が重要なのだろう。

逆に、一人一台と考えるとどうか。私はまだ実物を見ていないのだが、LPレコード並みの底面積を考えると、こばやし氏の触れているように、やはり大きいと思う。特に日本は狭い机にびっちりだからなぁ・・・

コンセプトは面白いのだが、日本の住宅事情に合うかどうか。私個人は、実物が美しい形をしていたら、欲しくなるとは思うが。

 

大型iBookと一緒に出た意義

ここで注目すべきは、iMac(TFT)と同時にデビューしたのが、iBook(Dual USB)の大型版である、ということだ。設置面積自体はiMac(TFT)のほうが数字的には小さい。だが、首振りの空間を考えると(液晶を左右上下に振る空間のことです)、据え置き型ノートマシンとして使う大型iBookのほうが小さくならないか。両方の実物をまだ見ていないので、まだ何とも言えない面はあるが、どうも気になる。

各自が占有するならiBookで、据え置いてみんなで使うならiMac(TFT)で、と言っているような気がしてならないのだ。iBookに2つの大きさを用意することで、各自にあったマシンを使ってくれ、ということになる。みんなで使うなら、柔軟性のあるiMac(TFT)がいい、という感じかな。

これまで、液晶デスクトップマシンとしては、IBMのNetVistaなどがあるし、日本の多くのメーカも出している。ただ、爆発的な成功例はない。さらに、G4 Cubeは潔く失敗と認めた(製品コンセプトはよかったと思うが、実際のマシンは不備が目立ちやすく、サポートが後手にまわった)。これが失敗しては「Macintoshがデジタルハブに中心にくる」という背景で製品を作り込むことが出来なくなる。

こういう時に、iMacではダメ、iMacを受け付けない層に、大型iBookを出して、広くいろいろな人に使ってもらい、MacOS X自体のよさを知ってもらいたい、というメッセージに見える。また、皮肉な見方をすれば、iMac(TFT)がコケたとしても、同時に出たiBookは成功しているのだから、と言うことも可能であり、株価対策にもなっているのかもしれない。

 

市場の反応が楽しみ

で、一番楽しみなのは、市場の反応だ。私は21世紀に生きる人間の姿を体現していると感じているのだが、みんながそう感じて受け入れるのか。まぁ、大げさだけど、このiMacをみんながどう感じるか、とても気になる。以前のトランスルーセントのような爆発的ヒットにはならないような印象も受けているが、愛着湧くマシンと受け止められるだろうか。

 


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